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初動は相手領地に入り込め!

 ブザーが鳴ると同時に、陸上部かつ身体強化が使える菊地、そして風魔法で高速移動する事が出来る矢野が中央に向かって走り始めた。


「やっぱ速いわね。流石陸上部」


 矢野が自身の隣を猛スピードで駆けている菊地に声をかける。


「それについてこられるお前の方が凄いぞ。風魔法をそんな風に器用に操れる奴は他にいないだろう?」


 菊地はジト目で矢野を見やる。彼女はまるで透明なホバークラフトに乗っているかのように、スイーと空中を移動していた。


「その代わり、私は攻撃魔法が使えないからね……」


 普通の風魔法使いは、小規模な竜巻を起こしたり、暴風を起こして敵の突進を食い止めたりといった戦い方をする。しかし、矢野はそう言った魔法を一切使えないのだ。


「確か、そういう応用法を教えたのも、赤木だったよな?」


「ええ、魔法の威力が上がらないって相談したら、何度かバフをかけてもらった後で、『普通の風魔法は諦めた方が良い』って言われたんだっけ」


 風兎が魔力感知&アナライズで見た物は、無数の小さな「魔力の流れ」だった。「魔力の流れ」は魔法の本体のようなもの。つまり、彼女は無数の魔法を同時に操作していたのだ。

 しかし、一つ一つの魔法の威力は非常に弱い。ちなみに風兎はこれを「まるでGPUみたいだな」と表現した。一つ一つの性能は弱いけど、多くを並列的に操る事には長けているのだ。

 それを看破した風兎は「威力が必要な魔法は無理そうだな」とアドバイスしたのだった。


「っと。もう見えてきたぞ。これは……」


「2組と4組が、『中央防壁法』みたいね」


「じゃあ」


「おけ」


 中央の状態を把握した二人は、その様子を伝えるため他のメンバーがいるところに向かった。菊地は西南西に、矢野は南南西へ向かった。




◆ 風兎視点 ◆


 俺達対4組メンバーは東に移動していた。そこに矢野さんが合流し、4組が中央防壁法を使うという旨を教えてくれた。


「なら、走る必要はないか。鈴原さん、インビジブルを頼む」


「『インビジブル』」


 鈴原さんに頼んで、敵の視界をゆがめる魔法を使ってもらった。鈴原さんのインビジブルは、歩きながらでも発動できるのだが走っている時は使用不可(使おうとしたら、ブレブレになって逆に目立つ)そうで。だから走っている時は使用してなかったのだ。


「よし、上手く背後を取れそうだな」


 4組は中央に設置した沼を前に戦う準備を進めている。しかし、それは悪手だったな。俺達はこそこそと移動し、4組の背後を取った。

 さあ、攻撃開始だ。


【A地点:3組15人・4組30人】



(一発でドカンと大きな攻撃を打ち込みたい。総員準備!)


(アイスアロー)

(ファイヤボール)

(針山)


 各々が魔法の溜め(・・)を行う。魔力を込めて、込めて、込めて、それを一気に噴出する技術だ。


 これは魔力の扱いに慣れていないとできない芸当で、たとえ二三年生であろうと使える人は少ない。ちなみに、能力研究部の先輩方はほぼ完璧に扱っているから、やはりあの部はレベルが高いのだろう。

 そんな技を皆が操れるのは、俺がバフ(と言う名の支配)をかけているからである。宮杜さんにバフを駆ける中で、俺のバフはかなり精密な事も出来るようになっており、その成果がこれだ。

 今の俺は、他の人が発動している魔術を無理やり一時停止させている。ここで俺が支配を解くと、一気に魔法が発動するという訳だ。こうやって「溜め」を再現している。


(そろそろだな、行くぞ!)



 ……ドーン!!


「ぎゃああー!」

「敵襲、どこ?」

「後ろだ! 後ろにいる!」

「……あそこね! いつの間に!」



 4組は突然の背後からの攻撃に慌てふためく。今ので結構な人数を戦闘不能にしたぞ、やったぜ!

 その後すぐに4組は俺達の存在に気が付いた。インビジブルって言っても完璧じゃないからな、目を凝らせば違和感に気付かれる。

 自分達を守るためと思って築いた沼地帯が、逆に自分達の邪魔になった4組。なんとか一矢報いようと魔法を放ってくるが、俺がシールドを使って全部防いぐ。


 不利を悟った4組の残党は、念のために空けておいた沼地帯の隙間を使って、逃げ出す事に成功。しかし、それまでに20人が犠牲になったのだった。



【A地点:3組15人・4組10人(逃走)】


3組:20×20=400点

4組:0点





 さて、這う這うの体で脱出した10人の運命はいかに……?!


 という話をする前に対1組部隊についてのお話を。



◆ 菊地視点 ◆


 対1組メンバーは北上するルートを取っていた。そこに菊地が合流する。


こっち(1組)は防壁が無かった。このままダッシュだ」


 さあ、ここからが対人戦だ。対1組メンバーはもちろん、情報部隊の菊地もここでひと暴れする予定だ。彼の身体強化はなにも走る為だけにあるのではない。敵と殴り合ったりするのにも使われる。


 程なくして彼らは1組の領地内に侵入する事が出来た。しかし、まだ1組はこの場にいない。


「どうやら初戦は俺達が有利になりそうだな」


「ああ」


 3組メンバーは作戦会議で、風兎が言った言葉を思い出す。



 普段の練習では、対人戦は対角線上で行われたよな? けど、魔法杯では違う。魔法杯の初動の原則は、敵陣にいち早く突入だ。

 つまり、対角線ではなくまっすぐ上に北上、もしくは真東に移動するのが吉だ。何故なら、敵陣に入り込んで攻撃する方が得点が高いからだ。


・敵陣で敵を倒すと20点

・自分の領地内で敵を倒しても5点


 このルールにより、いち早く敵陣に入り込んだ方が有利なんだ。

 だから、対角線上で戦うなんてナンセンス。初動は「真っ先に敵陣へ入り込む」が重要だ。


 つまりだ。菊地達が1組の領地内に完全に侵入した時点で、圧倒的に菊地達が有利なのだ。授業中の練習に思考が引っ張られているのか、この世界では最初の戦いは中央で起こる事が多いと知った風兎は「はあ?」という顔をしていたそうな。


 ところで1組は『島中の拠点』戦法を取っていた故に初動が遅かったことも、3組が有利になった理由の一つなのだが、それを彼らが知るのはまだ先だ。


「おっと噂をすれば。松田、頼む」


 遠目に1組が見えた。向こうはまだこちらに気が付いていない様子だ。


「ああ。『ダークスフィア』!」


 バッファーのサポートもあって、彼は一気に三つのダークスフィアを発射した。敵に着弾。全体攻撃魔法なだけあって、威力はそれ程高くないが、何人かを転ばせることに成功した。また、当たり所が悪かった人には、視界不良の異常状態もついた。


 こうして、3組 v.s. 1組の試合が始まった。※図中B地点


【B地点:1組16人・3組15人】



 戦闘は3組が有利だった。何せ、チート(風兎)が手取り足取り魔法について教えているからだ。アナライズを使ってその人の長所と短所を見抜き、その結果を基にアドバイスをする風兎は、こう言っては何だが教官よりも遥かに良い指導役なのだ。


 そんな中、戦闘途中に乱入してくる者の姿があった。そう、這う這うの体で戦場から逃げ出した4組の10人だ。こうして1、3、4組三つ巴の戦いが起こる。


 結局、1組は11人が、3組は6人が、4組は7人が犠牲になった。あ、もちろん犠牲と言っても1分経てばリスポーンするのでご安心を。


【B地点:1組5人・3組9人・4組3人】

1組

5×8=40点

3組

20×13=260点

4組

20×3=60点





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