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絶対勝つぞ! おー!

 第一回、第二回の作戦会議の後も、俺達は議論に議論を重ね、作戦マニュアルを完成させた。実戦練習を通じて、全員が一番しっくりくるロールを割り振ったりもした。


 当日の朝。朝礼にて教卓に立った畑先生(担任)が言う。


「特に連絡事項は無い。いよいよ魔法杯だな。練習風景を見させてもらったけど、能力を初めて使ってから二か月とは思えない逞しさを感じた。本当に、よくここまで成長したなって素直に感心する。全力を出して来い、一番楽しんだ奴が優勝だ。俺からは以上。リーダー、何か言う事はあるか?」


 突然振られてびっくりする俺を見て、先生はにやにやと笑う。俺が席を立つと、「はい、ここ(教壇)に立て! 良い事言えよ!」なんて言われた。無茶振りが過ぎるよ……。


「ええと、突然振られても……。そうですね、では。最初の作戦会議でも少し話したように、僕って魔法杯オタクって訳ではなかったんです。紙の上で作戦を考えるとか、自分の性に合ってない気がして」


 ゲームでもリアルでもそうだった。迷宮に潜ったり、対人戦を通じて能力の応用性について考えたり。そう言った事の方が好きで、頭脳戦はあまり自身が無かった。


「けど、作戦会議や休み時間の議論を通じて、『あれ、魔法杯ってこんなにも楽しいんだ』って思えました。『こんなにも楽しい物が、まだこの世界にあったなんて』と思いました。きっと魔法杯は、僕にとって新しい趣味になると思います」


 前世ではスポーツ全般、やったことが無かったからなあ。勉強を重視するあまり、体育は軽んじていたのだ。けど、今になって、「体を使ったスポーツってこんなにも楽しいんだ」って気付いた。


「そう思えた人が、魔法杯を好きになってくれた人が沢山いたなら、ここ数週間の魔法杯準備が意義ある物だったと言えると思います。そして、そういう人が多くいるクラスが優勝の栄冠に輝けるんだと思います。『全力で楽しみましょう、魔法杯というゲームを』」


「「「おー!」」」

 パチパチパチ……


 なんか小恥ずかしいな。俺は頬を描きながら、誤魔化すように言う。


「……最後に円陣でも組みます? それとも、こういうのは試合直前、拠点内で杯玉を囲んでします? 鈴原さん、どう思う?」


「え? なんで私?!」


「委員長だから」


「えー……。個人的には、杯玉を囲んでの円陣に興味があるかな」


「じゃあそうしよう。それじゃあ、時間も余ってますし……。最後に地形オブジェクトの設置について話そうか?」


 そして時は流れ……。



『まもなく、一年生の第一試合が始まります。参加するクラスは、入場を開始して下さい。繰り返します……』


『地形オブジェクトの制約を発表します。……マグマ地帯×10個、沼×20個の計30個とします。領地内で準備を始めてください』


 ガガガガガ!

 大きな音と共に、領地間を区切る20メートルの隙間部分に高い塀が出来た。相手の作戦を覗き見ないようにする為の仕掛けだな。


「30個か。それじゃあ、事前の会議通り『矢印型の定置網漁』をベースにして……こんな感じの配置が良いかな。どう思う?」


 地形オブジェクト設置用の謎アーティファクトを操作しながら、俺はクラスメイトに配置を見せる。


「拠点ががら空きね。分かってはいたけど、防衛斑はちょっと厳しい戦いを強いられそうね」


「ああ」


「前年度、三年生の試合映像を見る限り、『島中の拠点』や『迷路』がポピュラーみたいだし、他チームはそれで来るかな?」

「あと、『中央防壁法』も」


 中央防壁法とは、試合開始直後の戦闘で有利になるために考案された地形オブジェクトの設置方法だ。ざっくり説明すると、フィールドの中央付近に地形オブジェクトを設置する方法だ。

 正直、俺からするとあまり良くない方法なのだが……。何故かこの世界では人気らしい。不思議。


「試合開始後は、足の速いメンバーが中央まで行って様子を確認、すぐに戻ってきて状況報告な。言うまでもなく、このルートを通って向かうように」


「「了解」」


「帰りはこのルートで帰ってきて、他メンバーと合流&報告。その後の作戦はフローチャート通りで」


 結局、地形オブジェクトの設置方法に関して異論は出なかった。その後は、あーだこーだと話し合って、地形に若干の起伏を加えたりした。



『25分が経ちました。選手を拠点に戻します』


「あと五分で試合開始だな。よし、最後に円陣組むぞ!」


 太陽の光を反射してギラギラと光る杯玉。その周りを囲むように円陣が作られる。

 もう試合開始まで残すところ1分。俺は腹から声を出す。


「俺達の雄姿を見せつける時が来た! 絶対勝つぞ!」


「「「おお!」」」

「「「おお~!」」」



『試合開始まで10、9、8、7、6、5、4、3、2、1』



 隣に立つ宮杜さんや七瀬さんの顔を横目に見る。彼女達は今まで見た事がないくらい真剣な表情をしていた。その向こうにいる伊藤も、柏木も、佐藤も。鈴原さんも岡部さんも。みんな真剣だ。



 ブーーー!


 ブザーが鳴る。今までの成果を発揮する時が来た。




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