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その道をともに
ある日、道に迷った。迷った経緯は思い出せないでいた。少し歩き出すと目に涙を溜めて歩く少年とすれ違う。だがどこか嬉しそうだった。どうせ知らない道だと思い、そっと後を着けてみた。自宅に着いた彼はなぜか玄関口ではなく裏庭に行き、蛇口をひねった。よく見れば衣服は泥だらけだ。手足の汚れを落としてから家に入るなんて感心な子だ。「おや? 学芸会の帰りか……」そう思ったのは、彼が身に付けていた衣服が鎧だと気づいたからなのだ。な、なぜ子供が鎧なんかを装備している? 次の瞬間だった。彼が鎧を身体から脱ぎ捨てたその時、凄まじい爆音と閃光が街を包み込んだのだ……。
──ああ、そうだった。
私たちの街だ。
そして……そこは、私たちの家だったな。
彼に惹かれた理由が、いま分かった。
「おかえり……ニルス。勇者候補の試験はどうだったかな」
◇140字にこだわらず、書いてみました。