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第7話

すいません、嘘つきました・・・

 今、オレは草原に立っている。そして……


「ピュルルッ!」

「ピキキーッ!」

「ピュルピュル!」

「ピルルルッ!」


 ザシュッ  ドスッ  ザンッ  ビシュッ


 ホーンラビットを狩っている。

 うん、わかってる。言いたいことがあるって事は。

 旅に出るって言っただろう、てね。


 警邏隊にも言葉をもらったのに、何やってるんだ!……そう、なんだけどね。


 止めたわけじゃないんだよ。

 確認したかったんだ、自分の今の力をね。


 だってさぁ、オレ、いきなり上限になっちまったろ? 実感できなくてさ。


 ああ、うん。あの4人と対峙してみて強くなったとは思ったよ。でも、魔獣相手だとどのくらい違うのか見当がつかなくて。


 それで、慣れた相手で見てみよう、と。

 ホーンラビット相手の力加減でどれだけ変わったか、俺が一番納得できるやり方だと思うんだ。何せ、1万体狩り続けた奴なんだから。


 それに、オレのスキル。『一点物【レア】レベル1』ってのが微妙だと思わない?

 通常の獲物、つまり食用肉とレアアイテム【ラビット・アイ】の切り替えがうまく出来るのか、どんなふうに意識すればいいのか、その点でも検証しておかないとこれから大いに困るんじゃないかな。


 考えても見てくれ。襲ってきた魔獣を倒してレアアイテムがポン……その時周りに誰も居ない、そんな状況ばかりあるだろうか? 特に街道を移動していたり、定期馬車を利用していたなら、騒ぎになること請け合いだ。わざわざ厄介事を引き寄せたく無いしな。


 それやこれやを考え合わせて、出た結論が『草原でホーンラビットを狩って確認する』の一択になったんだ。理論的だろ?


 ……出てくる前にやっておけ、だと?


 あの状況で出来るかってんだ! 爺さんのあの迫力に負けたんだよ!

 ま、まぁ、世界を見ることにすっごい好奇心を刺激されたのは間違いないけどな。


 てことで。今ココな訳だ。

 スキルの使い方を必死に探っている。相手はもう途切れなく襲ってくるし、気を抜けない状態で集中できる。最高の場所だ。


「ピルルッ」

「ピュルルル!」

「ピキーッ」


「よっ、ほっ、ととっ!……」


 ザンッ  ビュッ  ドン


   ポンッ


「あ、しまった」

 ちょっと気を抜いた隙に振るった刃でスキルが発動したみたいだ。3頭のうち2体は普通だが【ラビット・アイ】が1個出現しちまった。

「う~ん、集中が途切れると怪しいな。もう少し鍛えないと」


 狩り始めた時には3頭で1個だったのが今では10頭で1個にまでなっている。気持ちの上で切り替えるのって、結構難しいんだよな。


「今日一日では無理かな~? 早くいきたいんだけど」

 ため息をつきつつ、倒したラビットを回収する。すると……


「……解体、した? どういうこと?」

 アイテムボックスに入れるつもりがうっかりしてストレージに入ってしまった。そうしたら、そこで解体まで終わってしまったんだ。


「すげー、なんて優秀なスキルなんだ。これなら狩りに専念できる! ようし!」


 テンションが上がってウキウキ状態になったオレは、それから狩りに狩りまくった。


 力加減? もちろん確認したよ。全っ然違う、別物になってた。今までは、振り向く、腕をあげて振り払う、切り裂く、てのがかなりの運動量だったんだけど。


 軽やか、ってもんじゃない。ステップを踏んで踊ってるみたいに足を運べて、腕を伸ばせばそこにラビットが飛び込んでくる、そんな感じに動けてるんだ。ラビットを狩るときの衝撃も空気を裂いているみたいに何も感じない。


「オレは風だ、風になったんだ、あははは!」


 ザシュッ グイッ シュパッ シュパパパッ シャッ シュン シュシュシュッ


   ポン    ポポン      

          ………ポン


 見ている人が居たらドン引きした、かもしれない。自分でも思うよ。それくらい上がったテンションで動き回り……気が付いたら辺り一面ラビットだらけになっていた。【ラビット・アイ】もいくつか転がっている。夕陽も相まって丘の上はスプラッタだ。

「ちょっとやりすぎたかな……うん、必要だったと思おう」


 ストレージに回収してすべて解体が終わったことを確認、休憩用のテントで食事をとる。

「【ラビット・アイ】は全部で15個……かなり出現率が低くなったな。不意打ちでなきゃ大丈夫になったかも」

 タンポポコーヒーを飲みながらひとり呟く。


「今日はここで過ごして、明日の朝街道に行こう」

 そう決めて、目を閉じた。





 あくる日。気持ちよく目覚めて食事をし、テントをたたむ。

 さあ、旅の始まりだ。……前と被るが気にしないっ!

 意気揚々と歩きだし。


「ピルルッ!」

「キュイキュイ!」

「ピキーッ!」

「朝からこれかよっ!」


 シュシュッ スパーン シャッ


「ったくもう、こいつらは……」

 

   チリリ~ン……チリリ~ン……


「え? え? 何このタイミングで、この音?」


   『スキル 一点物【レア】のレベルが上がりました』


   『スキル ストレージの機能が拡張しました』


 またしてもあの無機質な声がそっけなく告げる。その続きがあるかと身を固くして待ち受けたが。


「今回は何もないんだな……」


 前回はあの後酷い目にあったからなぁ。とりあえずラビットを回収して丘を離れることにする。


 ある程度移動してから道端の石に腰を下ろす。朝が早いせいか、道のどちら側にも人影はない。オレはストレージ内のラビットの数を確認した。


「さっきのラビットを含めて86体討伐したんだ。で、【ラビット・アイ】が15個。併せて101体の討伐、て。またこのパターンかよっ!」


 脱力してそのまま地面に突っ伏したくなった。どうもこの創世神、数の区切りに細かいお人、いや神らしい。もう少し別のことにこだわってほしいと思う。やたら召喚するあの国をどうにかする、とか。


「は~、ま、いいや。神様の考えることなんてわかる訳ないし。それよりもスキルのレベルが上がった、って言ってたよな。どれどれ、『鑑定』、と」


 自分に『鑑定』を使って確認する。


「確かにレベル2になってるな。詳しい説明は……『レア物をドロップする条件が瞬時に判定できる。魔法のみ、もしくは物理のみの場合も同じ。あと、普通の戦闘ではスキル発動を抑えられる』

 …………これ、頑張って意識する必要なかったんじゃ、ないかい……?」


 耐えられなくなって地面に転がってしまった。そのままゴロゴロとのたうち回る。


「ちっくしょうぉぉっ! オレの頑張りを返せぇぇっ!!」


 心のままに叫ぶこと数分、オレの嘆きは人知れず消えた。フッ、虚しい……。



 もう一度腰かけて、今度はストレージの説明を見る。

「そう言えば、こっちはレベルじゃなくて【発展形】だったっけ。確か拡張した、って言ってたよな? 一体何が?」


 見てみると、容量がまず違う。今までは、そう、学校にある25メートルのプールくらいだったのが、いきなり体育館クラスの広さになっていたのにはビビった。最初の大きさでさえ、アイテムボックスでは再現できない大きさだってのに、この広さ、どうすりゃいいんだよ。


 ストレージは出し入れ回数で発展するらしい。俺がラビットの回収をひとつずつちまちまとやっていたのが偶然にも合っていたようだ。


 何にしても、創世神のやることは規格外、としか言いようがない。破天荒な神様なんだろうか。

 まあ、俺が世界を歩くのには都合のいい方向で規格外ではあるんだけど。


「それならそれで一言くらい聞いておきたかったな……」

 今さらながらの愚痴、になるけど。





まだ首都から離れられない・・・

遅筆のくせに書き足りないところが気になって気になって。

次回では旅立ちます(多分)


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