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第24話

ヤキモチ焼き王様、でした(笑)

「……さっきは、すまん。後先考えずに怒鳴ってしまった」


 ここは人魚の里にある王宮の最上階。展望台でもあるここで、馬鹿ラス、いやヴァイラスと王妃とミルリル、それにオレがお茶してる。メイマーニアはすぐ外で同じく捧げものを口に入れてる。


 どうしてかって? あのな、メイマーニアが入れるような場所、ここに在る訳ないだろ?


 だから、せめて顔の高さが一緒になるように、ってこの展望台が使われるんだって。まあ、そのくらいじゃないと対等に話せないよな。首が痛くなるし。


 お茶の支度をしてもらってから、メイドさんや護衛の騎士さんにも下がってもらった。要するに内緒話モードですな。


 ミルリルはおとなしくお茶菓子を食べている。兄貴が暴走しないうちは黙っているんだろう。

 しばしの沈黙の後。ぽつりとこぼしたヴァイラスの言葉がそれだった。謝罪の言葉が出るだけ落ち着いたって認識で良いのかな。


「ワタクシも、謝罪させていただきますわ。アナタはどうやら他のニンゲンたちとは違うようですし…」


 王妃さんも落ち着いたようだ。けど、聞かなきゃいけないことがある。


「王妃さんは転生者、だよな?」

「っ! は、はい、その通りです。ステータスをご覧になったのですね」


「ああ。勝手に見て悪かった」

「いえ、あの場合は仕方がなかったのだと思っております」

「そう言ってくれると助かる。実際、あのスキルに気が付かなきゃヤバかったからな」

「……申し訳、ありません。ワタクシ、助けていただいたのですね」


「助けて、って。どういうことだ、妃?」

 オレと王妃さんだけで話が進んでいるのが面白くなかったんだろう。ヴァイラスが口をはさんでくる。


「あんたは王妃さんのステータスを見たことないのか?」

「妃のステータス、だと? 当然知ってるぞ! 馬鹿にするな!」

「じゃ、あんたより数字が高いことも知っているよな?」

「む、無論だ……」


「知ってても何の努力もしなかったってことだな?」

「むう……そ、それは今関係ないだろうっ!?」


「まあいいや。で、スキルも知ってるよな?」

「『王妃の覚悟』だろう? もちろんだ!」

「その内容は?」

「『王を守る』だろうが!」


「……それだけしか知らないのか」

 思わずため息が出た。なんちゅうお粗末な王なんだ、こいつは。


「それだけ? まだ何かあるのか?」

『ケイン、お主の『鑑定』は別格なのだ。通常はあそこまで分からないのだぞ?』

「へ? そうなん?」

『ステータスを見たわけではないが、お主のINT(知性)は相当高い。その数値で『鑑定』を解析して使っているのならば、得た情報は神の目線で見たものだ』


 アハハハハ、そうなんだ~。これも上限の恩恵、か。

 笑うしかないってのもどうなんだこれ。


「神の目線……一体、何があったんだ!?」

 ヴァイラスはますます混乱してきたようだ。やっぱ馬鹿ラスか。


「ワタクシのスキル『王妃の覚悟』は、『王を守る』ことに特化しております。……それが、たとえ敵わぬ相手であっても」

 王妃さんが重い口を開く。


「敵わぬ、相手……?」

「その時は……ワタクシ自身を犠牲にしてでも……王を守る方向で働きます……」

「妃を、犠牲に…………っ!?」

 やっと理解が追い付いたのか、再び絶句。声も出せずにアワアワしている。


「それを知ったケインさまが、スキルの発動を抑えてくださったのです」

 そう言うと、顔をあげてオレを見つめる。

「ワタクシを、陛下を助けていただいて……本当に感謝いたします」


「その言葉はメイマーニアに向けてやってくれ。オレはあいつに乗せられてきただけだ。本来、陸の者が海の出来事に絡む方がおかしい」

「でも、」

「まあ、王妃さんが転生者だから、オレが介入する余地もあったんだろうとは思うけど、な」


「さっきから言っているその、テンセイシャって、何なんだ?」

 再び馬鹿ラスが乱入。よほどオレと王妃さんの会話が気に食わないようだ。


「アタシも知りたいです~。何ですかぁそれって~?」

 ミルリルも参戦してきた。兄貴の様子に不穏なものを感じたのかもしれない。


 それにしても、ミルリルの話し方ってすごく馬鹿っぽく聞こえるんだよな~。ウェブ小説の桃色ヒ〇インみたいだ。本人はしっかりしてるんだけど。


「『転生者』。前の生の記憶を持って生まれてきた者をそう言うんだ。しかも王妃さんはオレと同郷なんじゃないかな?」


 そう、問いかける。しばしの沈黙をはさんで王妃が頷く。


「え、前の生の記憶……それも、同郷?」

 相変わらず、馬鹿ラスの理解は遅れてるな。それに比べて、

「え~っ、王妃様とケインさまは同郷なんですか~? じゃ、じゃあ~、王妃様って、昔はニンゲン、だったんですか~?」

 ミルリルは分かってるみたいだ。でもそれでも半分だな。


「そうです、ね。ワタクシの前の名は『如月美百合【きさらぎみゆり】』……ケインさまはお分かりになりますか?」

「なるほど。オレは真鍋征伸【まなべゆきのぶ】だ。巻き込まれ召喚でこっちに飛ばされたんだよ」

 オレの答えに、うっすらと目を潤ませる王妃さん。


「ああ、本当に同郷なんですね。なんだか、嬉しいですわ」

「オレもだよ。こっちに来た当初は酷い目に遭ったからなぁ」

「うふふ。ネット小説の実体験ですのね」

「あれ、良くお分かりで」


「ワタクシも好きでしたの、ネット小説。よく読んでましたわ」

「それで馴染むのも早かった、と。でも人間を目の敵にするってのはね」

「あら、小説にはよくありましてよ? ニンゲン至上主義が」

「少なくともオレが今まで歩いてきた国にはなかったんですが」

「まあ、そうですの」


 王妃さんと二人で盛り上がっていたら、


「おいっ、何語で話してるんだ、お前たちはっ!」

 と、怒鳴られてしまった。


 ふたりで顔を見合わせ、首をかしげる。と、

『お主と王妃がいま話していた言葉は、ここの言葉ではなかったのだ。我にも分からなかったぞ』

 メイマーニアにまで言われた。


 え、という事は…

「……そっか。【日本語】で話してたんだな、きっと」

「そうなんでしょうか。もうとっくに忘れたと思っていたんですが」

「会うはずのない相手に逢ったから、記憶がよみがえったのかも」

「ああ、そうなんですね」


「その、ニホンゴ? とはなんだ? 妃が知っていて俺様が知らないことって何なんだっ!」

 遂に我慢が切れたのか、馬鹿ラスが怒鳴りだす。ああ、ついでにぴょんぴょん飛んで……地団太のつもりか。本当に、子供かあんたは? ったく。


「陛下はご存じなくとも好い事ですわ。遠い、ホントに遠い国のお話ですの」

 そういう王妃さんの顔は吹っ切れたようで。だが、馬鹿ラスは納得していない。

「だ、だがっ、そいつとは話が通じるんだろっ!? ど、どうして俺様の知らないことで通じるんだ!」


 おやおや、やきもちが暴走を始めたか。半分涙目なのが笑えるな。

 オレが口出しするとマズそうだ。黙って茶でも飲んでいよう。


 横目で見ていると、王妃さんがうまく宥めて静めている。どう見ても精神年齢が上だな、ありゃ。


 ミルリルがこそっと耳打ちした。

(兄さまはね~、王妃様にベタ惚れしてるのよ~。それこそ他のダンナサマを締め出したいくらいにね~。でもぅ、ここの掟で一妻多夫を決められてるものだから~、イライラしてても我慢してたのよね。これで解消できると良いな~)


 この様子を見ると、ミルリルの言うことも納得できる。ハーレム、逆ハーレムってのは条件がそろわないと長続きしないからな。

 あ、そうだ。この掟も廃止するように言っとくべきかな?





人魚の里はあと1話で終わります。

読んでいただき感謝です。

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