第23話
人魚の里に激震発生!
主人公のプチ無双アリです。
時間を間違えて遅くなってしまいました(謝)
「どうして人魚があんたたちだけって言えるんだ?」
オレの問いかけにその場にいた全員、いや全魚が固まった。いや~、面白い。
普通なら休みなくひらひら動いている尾ひれが下を向いてさ、尾ひれに合わせて微動していた下半身がガチッと固まって。
そのまま地面(?)にくっついてさ、後ろか前へ倒れこんでいくんだよ。
人間だったら棒立ちする場面なんだけど、人魚の尾ひれだけだと上半身を支えきれないのかね。
とにかく、ドミノ倒しで辺りには死屍累々の人魚たち。いや、死んでないんだけどさ。
「な、何? 俺様たち以外に、人魚が、居る、だと?」
初めから寝てた馬鹿ラス、一番衝撃を受けはしたけど戻るのも早かったな。呆然としながらも疑問を口にする。
「逆に聞くけど、どうしていないと思うんだ?」
「い、いや、この近辺では見なかった、から……」
「近辺、て。大体あんたはどこまでいけるんだ、そのステータスで?」
「! お、俺様のステータスを見たのかっ!?」
「ああ。へなちょこの数字だなと思ってな」
「バ、馬鹿にするのかぁっ!」
「そうさ、してるよ。弱っちいじゃんか」
「くっ! な、なら! キサマのステータスをみせてみろっ!」
ほ~お、そう来たか。
「やだね。弱い相手に見せる必要ないだろ」
「か、勝てたらいいんだな!? おい、ゲラート! こいつを叩き潰せっ!」
「はっ!」
即座に返事を返して飛び出してきた人魚がひとり。忠誠心だけは高そうだ。
「陛下に無礼を働いた罪、命を持って償えぇぇっ!」
怒号と共に大剣で斬りかかってきた、が。
「よ、っと。ほいっ」
こてんと首を傾ける動作だけで一撃を回避、お返しにと突き出した指で再度デコピン。
「ぐわああぁぁっっ~~~!!」
それだけで盛大に喚いて吹っ飛ばされる。おいおい、これが近衛って嘘だろ?
「ゲ、ゲラート!?」
「あれが一番強い奴なんだろ? それがあんなんじゃ、あとは推して知るべしだな。はははっ、弱っちい」
馬鹿ラスの愕然とした表情に笑いが止まらない。こいつら、本格的な馬鹿だ。
いくら平和だからって戦うすべを持たないと、ただ蹂躙されるだけだよ、この世界。あ、元の世界でも状況はおんなじか。
「やっぱりな。オレ、弱い者苛めしたくないんだよ。気の毒でさ」
「き、気の毒とはなんだぁ~~っ!」
言葉と目線で相手の心をえぐっていく。こういう奴らは徹底的に心を折ってやらないと聞く耳持たないからな。
「身体がでかい子供を大人が叩いてるのと変わらないだろ」
「くうぅ~~っ」
やっと黙ったな。やれやれ手間のかかる。
さて、ここでとどめの一撃を出すか。
「メイマーニア。この近辺に人魚って居るか?」
『居るぞ』
何とシンプルで簡潔な答え。立ち直った人魚どもがざわめいちゃってるな。
「どのあたりだ?」
『そうだな…ここから南西に50キロか、そこにひとつ。西に60キロくらいにひとつ。あとは、そう、南に130キロの所に大きな集落があるな』
「そ、そんなにあるのか!?」
馬鹿ラスが叫ぶ。
『まだまだあるぞ。我が知る限り、20近く散らばっておるな』
「に、にじゅう……!」
遂に絶句した。どうだ、井の中の蛙、いや、人魚。
「そこってここみたいに一夫多妻や一妻多夫なのか?」
『いいや? 普通に一夫一婦だったはずだ』
そうだよな。そうでなくっちゃな。
『それと、今言った3つの集落は行き来しているぞ。つがいになる者も居るな』
「そ、そんな、…………」
メイマーニアさん、更にダメ押しとは。馬鹿ラス、哀れだな~(笑)
馬鹿ラスの身体から完全に力が抜けたのを足の裏で感じ、ひょいと退ける。それでも身動き一つしない。
その馬鹿ラスに駆け寄る王妃。おや、これはこれは。
「陛下っ、お怪我は、お怪我はございませんかっ!?」
「妃……俺は、お、俺様は……」
「いいえいいえ、ご無事でようございました! ワタクシはそれだけで!」
縋り付かんばかりに泣き崩れる、かと思いきや、オレをキッと睨みつけて。
「この、悪の塊のニンゲンがっ! 陛下を足蹴にするなど言語道断っ! ワタクシが命に代えても成敗してくれるっ!」
うわお。王妃の方がバイオレンスだった!
確かに纏っている覇気はこの中の誰よりも高いよな。ではと。
「『鑑定』(ぼそっ)」
名前 シェリカーラ・エランディール
職業 「人魚の里」の王妃 転生者
POW 183
STR 149
VIT 275
DEF 193
MGP 307
MGR 140
INT 254
LUK 115
EXP 45
スキル 王妃の覚悟 (宝玉を持つことで発現…王を守ることに特化)
※ 力が及ばぬ時は自爆してでも王を守る方向に動く
ぎゃ~~っ! すンげぇ危ない方向のスキルじゃないかぁ!
ホントに命懸けてるよ、この人魚。
ステータスだって馬鹿ラスよりずっと上じゃんか。これはぐずぐずしちゃいられない!
王妃が宝玉を手にしたと同時にオレの魔法が発動!
「『アポート』! で、『ストレージ』!」
「ああっ! 何をするのですかっ!?」
王妃の手元から宝玉が消える。スキルの発動寸前だった、よかったぁ~~。
『ケイン、何をしたのだ、お主?』
「王妃を止めろよメイマーニア。あの人魚、馬鹿ラスを守るために死ぬ気だぞ?」
『なに?』
「なんだとっ!」
おお、馬鹿ラスの方が大きく反応したぞ。これはいよいよもっておやおやだな。
一方、王妃は。
「ワ、ワタクシの宝玉を返しなさい、この泥棒っ!」
短剣を手にオレに向かってきた。まあ、このくらいなら大丈夫だな。
半身で躱して短剣を持つ手を抑え、軽くひねって離させる。
「つぅっ!」
「おっと、強すぎたか。ごめんよ王妃さん」
顔をしかめたので、放す前に『ヒール』を掛けておく。
「き、妃を放せっ!」
飛び起きた馬鹿ラスへ向かって王妃を突き放すと、狙いたがわず馬鹿ラスの腕の中へすっぽりと納まる王妃。
「へ、陛下!」
「妃、無事かっ!? どこも痛くないかっ!?」
「あ、は、はい、大丈夫です……」
さっきの剣幕はどこに行ったのやら、王妃は全身真っ赤で震えてまでいる。お~お、可愛い王妃じゃんか、馬鹿ラス(羨ましい……)。
そこへまたひとり、乱入者が。
「兄さまっ、王妃様っ!」
「お、ミルリルじゃないか、久しぶり」
そう言って手を振って見せる。
「あ、ケインさま~! お久しぶり~! って、どどどうやって生きてるんですか~っ!? ここ、海の中ですよぉ~~!?」
「え、そう言えばそうだった。お前、ニンゲンか!?」
「あ、本当に!」
あららら、一番まともに反応してくれたのがミルリルだったとは。この里、大丈夫か?
読んでいただき ありがとうございます。




