第11話
遅くなりました^^;
1キロ離れてたから大丈夫だと思っていたが、この世界の住民の視力、嘗めてたわ。国境の警備隊の皆さん、しっかり認識していたよ。
おかげでかなりしつこく追及されたけど。いや、『ドラゴンと戦ったのか?』とか『敵対してるのか?』とかね。どうやらドラゴンは敵に回しちゃいけない相手のようだ。
「ドラゴン殿(殿だよ、殿!)はこの世界の頂点にある存在だ。敵対などすれば、我らは一瞬で滅ぼされてしまうだろう」
畏怖の気持ちを込めてそう言った警備隊長の顔がすごかった。
オレはと言うと。
「え、ドラゴン、ですか? はあ、そう言えば何かが上を飛んでるとは思いましたが、気にしてなかったので……同じ方向? 確かにそうでしょうけど、大ざっぱ過ぎません? その括り」
ひたすらとぼけ倒した。乗っていたところを見られたわけじゃないしな。
そんなこんなで少々ごたついたが、無事に国境を越えられた。すぐそばに小さな宿場町もあるから、大抵はそこで泊まっていくらしいけど、まだ陽は高いしもう少し先にちゃんとした街があると聞いた上は、そこまで足を延ばしたい。
まあ、国境を越えてくる商人たちと顔を合わせたくない、と言うのが本音だがな!
だって、ウラヴィスに乗せてもらったからすっごく速かったんだよ。見つかったら不思議がられること請け合いだ。騒動の芽は出させないに限る。
因みに、今のオレのステータスはこんな具合。
名前 ケイン (本名:真鍋征伸)…隠ぺい中
職業 冒険者 (異世界被召喚者・巻き込まれしもの・覚醒)…隠ぺい中
POW 138 (999・上限)…隠ぺい中
STR 178 (999・上限)…隠ぺい中
VIT 291 (999・上限)…隠ぺい中
DEF 143 (999・上限)…隠ぺい中
MGP 182 (999・上限)…隠ぺい中
MGR 163 (999・上限)…隠ぺい中
INT 92 (999・上限)…隠ぺい中
LUK 147 (999・上限)…隠ぺい中
EPX 62 (999・上限)…隠ぺい中
スキル 無し (一点物【レア】レベル2)…隠ぺい中
(ストレージ 発展形)…隠ぺい中
(特殊スキル 創世神の加護と祝福)…隠ぺい中
やたらと低くするのも考えものなんだよね。ピートたちみたいなのに絡まれる可能性大だからさ。
だから平均より少し高め……冒険者で独り旅ができるくらいの強さを持ってないと、これまた疑われる。攻撃より防御を重視する、少々頭の弱いお気楽冒険者、の線を狙ってみたんだが……。
「おう兄ちゃん、結構強そうだな! どうだ、護衛を頼めないか?」
さっきからめんどいのに付き纏われている。
国境の所で警備隊に詰め寄られたとき、横で偶然話を聞いていた商人さんだ。しかも、オレの偽装したステータスを見たらしい。
確かに一般平均よりは強く、と思って作ったよ? でもさ、その情報を横流しするって何だよ? 弱みでも握られてるのかい、警備隊?
「オレは一人旅がしたくて出てきたんです。仕事をする気にもなりませんから」
「愛想無しだなぁ。でもよ、金がないとどうしようもないだろ? 割増しで払うから、さ?」
「結構です」
こういう輩はまともに相手をしても仕方がない。では行くか。
オレは早駆けモードに切り替えた。足元から砂煙が巻き起こり、スピードがぐんと上がる。
「あ、お、おい、兄ちゃ……っ!」
何か言いかけた相手をぶっちぎり、オレは走る。風景がオレの周りで流れ、色を失う。このモード、マイルズと動いてからどんどん性能が良くなってくる。遠距離の行動もこれなら楽に行けそうだ。
目指していた街の外郭が遠くに見える。けど、あの商人にまた捕まるかもしれないから避けた方がいいだろう。オレは街道を外れ、大きく町を迂回しながら通り過ぎた。
腹の虫が盛大に鳴り出した。アクシデントで街に入り損ねたために昼を食べる時間が遅れたからだ。
「仕方ない。この辺で食うか」
街道の脇にある簡易の宿泊所の隅を借りて弁当を広げる。今朝作っておいたサンドイッチをかじりながら、コーヒーでのどを潤す。ストレージの中は時間経過がないから、作りたての淹れたてだ。それでも、街の名物を食べ損ねた感がある。
「あの商人、覚えてろよ。食い物の恨みは怖いんだからな」
ブチブチ言いながら食事を済ませ、宿泊所を出る。太陽は中天を過ぎ、気の早い人間はそろそろ泊まる準備を始めそうな時間だ。
「この次の町まで約25キロね。よぉし、馬力かけて行くか」
『え、あいつ、ここからさらに行くってか?』
『馬鹿だな、途中で日が暮れるぞ』
『魔獣に襲われても構わないんかな』
『よっぽど自信があるんだろ、あいつ』
オレの独り言を耳に挟んだ冒険者が、後ろでこそこそ話している。言いたいことがあるなら真っ正面から伝えろよ。陰口なんてもうたくさんだ。
そう考えて。
(あれ? オレってこんなに好戦的だったっけ?)
内心、首をかしげる。どうやら首都ヴェルドで受け続けた扱いにアレルギー反応を起こしてしまったみたいだ。もう過去の事と割り切ったつもりでいたけど、心では納得していなかったんだな。
うん、気を付けよう。喧嘩を売って歩きたくないしな。そんな荒んだ旅なんて御免だ。
オレは早駆けモードを起動、その場から離脱した。すぐにトップスピードへ移行して街道を進んでいく。この調子だと、あと2~3時間でつけそうだ。
この後、宿泊所ではこんな会話がされていた。
「な、なんだ、あれ?」
「すげぇ、もう見えなくなっちまった」
「あんな速足があるならあの独り言もうなずけるな」
「「「「……あれ、人間か?……」」」」
因みに、次の街には2時間と15分で着き、宿を確保した後で無事に名物を堪能できた。これこそ旅の醍醐味だ!
読んでくださり、感謝です。




