文学少女だった母の思い出
掲載日:2020/12/16
季節は春、与謝野晶子の歌が思い浮かぶ。
清水へ 祗園をよぎる 桜月夜
こよひ逢ふ人 みなうつくしき
ひらひらと舞い散る桜が、手のひらに乗った。
こんな光景は、以前にもあった。
◆◆◆
入試の時、桜並木を参考書片手に歩く。
どんな桜だったか・・・。
◆◆◆
入学式。桜並木は満開だった。
母と共に歩んでいると、掌に桜の花びらが舞い落ちた。
「綺麗な桜ね。」
母の言葉が懐かしい。
◆◆◆
卒業の日、学長の銅像に黒いリボンがかかっていた。
卒業式直前に亡くなられた学長は、春を思わせる素敵な笑顔が印象的だった。
慣れ親しんだ桜並木も今日で見納め。
桜並木と学び舎に、お辞儀をする。
「今まで、ありがとう。」
手のひらに乗った桜の花びらが、私に別れを告げていた。
◆◆◆
学生時代を過ごした学び舎、学長の思わぬ訃報、そして、母と共に歩んだ道。
それらすべてを、桜は語ってくれた。
3月17日は、母の命日。
思い出は、いつまでも残っている。
◆◆◆
入試のため、子供と共に歩く、懐かしの桜並木。
「綺麗な桜ね。」
私の手のひらに乗った桜を、そっと、子供に手渡してあげる。
そうだ、子供が入学したら、桜の話をしてあげよう。
想いの詰まった、この桜並木の話を。
既に私が昔語りをする年齢になってしまいました。
子供ができなかったので、もう語り継ぐ人もいないのですが。




