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第24話 運動音痴

 みんなで体育祭の本番に向けて練習しよう――


 その真央の提案が無事に通った結果、俺達は一旦解散して体操着に着替えた後、学校の敷地内にある第二運動場へと集まっていた。


 その名の通り、春宮高等学校には運動場が複数ある。


 少し離れたところに、一番大きい第一運動場があり、そこはいつも野球部やサッカー部が利用してる。


 そしてここ、第二運動場は陸上部などが使っている場所なんだが、体育祭前は生徒の自主練習をする場所としても開放されており、バトンなどの貸し出しも行われている。


 周りには陸上部は勿論、体育祭の練習をしている生徒がちらほらといるのに少し驚いた。真面目な連中もいたもんだ。


 余談だが、美少女達の体操着姿に囲まている俺は、少し居心地が悪かった。


 何故なら、真央のあの破壊力抜群の二つの膨らみが、白い体操着を思い切り押し上げていて目のやり場に困るからだ。六道も真央クラスではないが、こちらも主張が強いから困る。


 あと、周りの妬みの言葉や視線がとてもウザい。練習とかダルいから、変わってくれるなら変わって欲しいんだが……。


「体育の時間じゃないのに、なんでわざわざ体育祭の練習なんて……めんどくせえ……」

「決まった事なんですからウダウダ言わないでください。それでも元勇者様ですか」

「だーから勇者言うな!」


 俺が真央と六道の胸元から気を反らすために、地面に目をやりながらぶつぶつ文句を言っていると、隣に立っていた九条さんに怒られてしまった。


 最初は真央が俺の事を勇者だってぽろっと言ってしまうのを警戒していたが、一番言ってしまいそうなのは九条さんではないだろうか?


 まあ俺をからかう目的で使ってるだけだろうから、人の前で言ったりはしないと思うけど。そこが頭の弱い真央と違うところだ。


 あと、当然のように九条さんも体操着なのだが……半袖の白シャツと短パンから覗く白い腕と足はあまりも細く、ちょっと小突いただけで折れてしまうのではないかと思ってしまうくらいだった。


 ちゃんとご飯食べてるのか? 流石に細すぎて見ていて不安になる。


「嫌なら断ればよかったじゃない」

「まあそんなんすけど……」


 運動用なのか、いつもと違いポニーテールにまとめてある綺麗な金髪を揺らしながら、一ノ瀬先輩は俺の顔を覗き込む。


 先輩、制服の時はわからなかったけど……結構着やせするタイプなんすね。こっちも目のやり場に困る。


 え? そんなとこばかり見るんじゃないって? 俺だって健全な男なんだから仕方ないだろ。


 そんな先輩に同意を示しながら、苦い顔をする俺の視線の先には、とてもやる気のある真央と六道が笑顔で立っていた。


「真央ちゃん、何の練習する?」

「うむ、みんなが一緒に出来る練習というわけで、リレーのバトンパスをするのだ!」

「あ、それいいね! じゃあバトン借りてこないと……」

「問題ない! すでに我が借りてきている! うーん我有能か!? さすが魔王は違うのう!」


 自分で自分を褒めるな。あと魔王言うな。


「いつのまに!? 真央ちゃん準備いいね~!」

「当然なのだ! みんなで体育祭の練習……まさに青春! 我も気合が入るというものだ!」


 真央の言う、青春の定義とやらはよくわからんが、あんなに楽しそうにな真央と六道を見て断るのとか無理だろ。あと六道よ、あんまり真央を調子に乗らせないで欲しい。


 そもそもな話、九条さんが勝手に俺を三人四脚の推薦なんてしなければ、多少は俺の運動量が減ったんだよな。


 全く余計な事をしやがって、この元ネコ娘の毒舌ぺったんこお嬢様め……。


「早乙女君、何かとても失礼な事を考えてませんか?」

「な、何のことだ?」


 俺の考えを読んだのか、九条さんにジト目で睨まれてしまった。


 やっぱりこの人怖い。俺の考えている事が絶対わかって言ってるとしか思えない。やはり九条さんだけは敵に回さないようにしよう、うん。


「よし、では本番を想定してトラックを半分走って渡す練習をするのだ!」

「本番を想定しすぎだろ、すぐにバテるわ。少し感覚を開けて、軽く走りながら渡した方が効率良いだろ」

「む〜〜〜〜……蒼、中々良い事を言うではないか! まあ我もわかってはいたがな!」

「嘘くせぇな」

「嘘ではないのだー! とにかく、みんな一列に並ぶのだー!」


 真央の号令と共に、俺達はゾロゾロと歩き始める。


 並び順は真央、俺、六道、九条さん、一ノ瀬先輩の順だ。並び順の理由? 完全に適当だ。


「では行くぞー!」


 真央は大きく俺に手を振ってから、全力で俺に向かって走ってくる。


 そのスピードはかなり速い。真央が見栄を張っていただけかと思っていたけど、確かにこれだけの走力なら選抜リレーに選ばれてもおかしくない。まあ俺の方が速いけどな?


 真央が近くにまで来たタイミングで、背中を向けながら走り出しだしつつ、右手を後ろにやった。


「よし、ナイスパスなのだ!」


 スムーズにバトンを渡せた真央の嬉しそうな声を背中に浴びながら、俺は六道の元へと走っていくと、六道の差し出す右手にバトンを乗せた。


「あっ!? あわわ……」


 ちゃんと渡したはずだったのだが、六道はバトンを落としてしまい、あわあわと汗を飛ばしながら転がるバトンを拾いに行った。


 俺の渡し方が悪かったか? ちゃんと渡したはずなんだが、もしかしたら少しバトンを離すのが早かったかもしれない。


「六道、もう一回やってみよう。バトンを貸してくれ」

「う、うん……ごめんね」


 上手くいかなかったのがそんなに悲しかったのか、六道はしょんぼりしながら俺にバトンを手渡す。一回くらいのミスでそんなに気にする事はないと思うんだけどな。


「いくぞー」

「う、うん!」


 六道から少し離れた俺は、もう一度走ってバトンを手渡す……が、六道はまたしてもバトンを上手く受け取れずに地面に落としてしまった。


 六道が言っていた通り、本当に運動が苦手なんだろう。


「あうう……」

「六道、焦る必要はない。手にバトンが乗ったら離さないように掴むんだ」


 ついに涙目になってしまった六道に、俺は優しく諭すように言う。すると、大きな目をパチクリとしながら俺の事を数秒程見つめてから、嬉しそうに微笑んだ。


「……えへへ、やっぱり早乙女くんって真面目だし優しいね」

「俺が? 何のことだ?」

「だって、体育祭も練習もイヤって言ってたのに、真央ちゃんの練習のやり方を良くしようと意見をしたり、へたっぴなわたしにしっかり教えようとしてくれてるもん! やっぱり早乙女くんは優しい勇者様だね!」


 六道のド直球な感謝に恥ずかしくなった俺は、無意識にそっぽを向いた。


 なんだこの素直な元イヌっ娘……やっぱり悪い奴らにダマされたりしないか心配になる。


 その後、三十分ほど練習を続けた後、少し休憩ということで運動場の隅っこに集まると、唐突に一ノ瀬先輩が申し訳なさそうに眉尻を下げながら口を開いた。


「ごめんなさい、そろそろ生徒会の方に行かないといけないの。体育祭前は結構仕事があって」

「それは仕方ないのう。また部活の日に会おうではないか!」

「お疲れ様っす」

「芽衣ちゃん先輩、おつかれさまでした!」

「お疲れ様でした」


 それぞれが一ノ瀬先輩に別れの挨拶をすると、時間が不味いのか、先輩は足早にその場から去っていった。生徒会と兼任で部活に来てくれる先輩には本当に頭が上がらない。


「さて、そろそろ再開しようではないか!」

「あ、真央ちゃん。バトンの練習も良いけど、わたし三人四脚の練習もしたいな~なんて……」


 おずおずと手を上げながら言う六道に、真央は少し考える素振りを見せてから、大きく頷いた。


「よし、それなら我が近くで見てアドバイスをしようではないか! 光栄に思うが良い!」

「なら私が三人四脚のヒモを借りてきますね」

「じゃあその間にジャージを持ってる奴はそれを取りに行くか。二人は持ってきてるか?」


 俺は六道と九条さんに聞くと、二人共持ってきているのかすぐに頷いていた。


 何でジャージの有無を確認したかって? 転んだ時に怪我をしにくくするためだ。素肌よりも、ジャージがあった方が怪我しにくいだろう?


「じゃあわたしが美月ちゃんの分も取ってくるね~! 更衣室にあるよね?」

「ええ。お願いしますね」

「じゃあ一旦解散な」


 その場に置いてそれぞれの目的の場所を目指して歩き出す。


 正直さっさと帰ってゲームやりてえけど、今ここで帰ったら、絶対に後で文句言われるよな……主に真央とか真央とか九条さんとか真央とか。


 仕方ない、さっさとジャージを回収して戻るとするか。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


次の更新は明日のお昼の予定です。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、評価、ブクマ、感想をいただけると励みになります。


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