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第20話 テスト終了!

「ん~~~~! 終わったのだ~!」


 五月下旬に行われる中間テストの最終日――最後のテストが終わり、解答用紙を担当教員に提出を終えた真央は、体を思い切り伸ばしていた。


 高二になるとテストのレベルも結構上がるもんだな。部活動の勉強会がなかったら、かなり成績が下がったかもしれない。


 わからない所を教えてくれた九条さんと一ノ瀬先輩には感謝しかない。


「蒼! 今日から部活動が再開できるぞ! 我は早く部室に行きたくてウズウズしておってのう!」


 子供の様に目を輝かせる真央は、小さな手で俺の両腕を掴むと、何故かブンブンと俺の体を揺さぶり始めた。フラフラするからやめてほしい。


「とにかく部室にれっつごーなのだ!」

「わかったからもうブンブンするな。気持ち悪くなってきた」

「情けないのう。それくらい根性で耐えてみせんか」

「根性論とかどこのスポコン漫画だ?」

「スポコン漫画は良いぞ! つい最近も面白いものを見つけてな!」

「お前のおすすめスポコン談義はしてねぇ!」


 せっかくテストから解放されたと思ったらなんで俺は真央と漫才みたいな事をしないといけないんだ……なんかどっと疲れたぞ。


「またあの二人イチャついてるぞ……爆発しろよ……」

「あのオタク野郎め……羨ましい……」

「俺も早乙女君をブンブンしたい……」


 疲れたって言ってるのに、周りの男子の妬みの声と視線を浴びまくってしまった。


 あとブンブンしようとするな最後の奴、そんな事して来たら俺の両腕をブンブン振り回すからな。その覚悟があるなら来やがれ。


 心の中で静かにツッコミを入れていると、見慣れた明るい茶髪をポニーテールにしている少女と、赤い大きなリボンをつけた少女が歩み寄ってきた。


「早乙女くん、真央ちゃん! テストおつかれさま!」

「お疲れ様でした。お二人共、テストの出来はどうでしたか?」

「お疲れさん。まあボチボチってところだ。いつもよりは出来たとは思うけど」

「ふ、ふふ……わ、我は過去は振り返らん! 」


 歩み寄ってきた二人の少女――六道と九条さんにそう答える一方、真央はテスト結果に一切触れずに、明後日の方向を向いていた。


「駄目だったんですね。ご愁傷さまです」

「だ、ダメではないぞ! ちょっと調子が出なかっただけで……ぐすんっ……テストなんて……テストなんて……大っ嫌いだー!」


 元魔王のくせに下っ端のような捨て台詞を吐きながら、真央は教室をダッシュで出ていってしまった。


 その姿を見送った俺達は、何とも言えない表情で顔を見合わせた。


「……あれはきっと駄目でしたね」

「赤点じゃない事を祈るしかないな……」

「き、きっと大丈夫だよ! 真央ちゃんも頑張ってたもんっ!」


 不安しかない真央の態度に三者三様の反応を示した俺達は、部室に向かっていった真央の後を追うように、歩いて教室を後にした。



 ****



「あれ、一ノ瀬先輩は来てないのか?」


 部室に入った俺は、先に教室を出ていった真央に聞いてみるが、真央も知らないのか首を傾げていた。


「ホームルームが長引いているのかもしれませんね。それか生徒会の仕事があるのかも」

「だね~。とりあえずお茶にしよっか! わたし今日お菓子作ってきたんだ!」

「お菓子ー! 食べるのだ!」


 とりあえず俺達は初日に座った席に腰を下ろした。最近はここが定位置になってきている。


 六道はニコニコしながら鞄を開けると、袋に詰められたクッキーを出してくれた。


 手作りクッキーはいいんだが、今日までテストだったんだぞ? 勉強しないで作って大丈夫だったのだろうか。


「えへへ……勉強の休憩がてら作ってみたんだ! あ、紅茶も用意するね〜」


 俺の考えていたことが読まれた? いや、もしかしたら顔に出てしまっていたのかもしれない。そう思うとちょっと恥ずかしい。


「遅れてごめんなさい。あら……おいしそうなクッキーね」

「芽衣ちゃん先輩、お疲れ様です! えっと、わたしが作ってきたんです!」

「え、友莉菜さんの手作り!? お菓子まで作れるなんて凄いわね……さすが元メイドさんね」

「えへへ、ありがとうございます!」


 一ノ瀬先輩が目を丸くして驚くのもわかる。ぶっちゃけ店に並んでいても何の違和感もないくらいの見た目だ。六道の料理スキルの高さがよくわかる。


「一ノ瀬先輩はテストどうでした?」

「うーんいつも通りって感じかしら。みんなは?」

「約一名を除いて大丈夫だったそうですよ」

「ひゅーひゅー♪」


 俺がそう答えると、うちの部長様である真央は、誤魔化すように全く吹けていない口笛を吹いていた。


 もう既にそれが答え合わせになってるのにいい加減気づくべきだと思うんだが。


「なんか私の魔王像って、もっと狡猾こうかつで皆を困らせるものだと思ってたんだけど……」

「一ノ瀬先輩、奇遇ですね。私も少し疑問に思ってたんですよ」

「うーん、私も魔王ってもっと怖いものだと思ってたけど……かわいくて親しみやすいから、今の真央ちゃんでいいんじゃないかなぁ?」


 三人の言いたい事はわかる。俺も正直今だに真央が何かを企んで部活を作ったって思ってるし。けど、ガキの頃に過ごしたのも含めて考えた結果、やっぱり何も考えていないおバカなんじゃないかと思ってしまう。


 ダメだ、いつ真央が行動に出るかはわからない。ちゃんと警戒はしておかないと。


「実際は見ての通りだけどな」

「む? なんでみんなして我を見ておる? そうか、ようやく我の偉大さがわかったという事だな! よいよい、いくらでも見るがいい! むふー!」

「真央ちゃんかわいくてカッコイイ~!」

「うむうむっ! 友莉菜は見所があるのう!」


 何故か楽しそうに拍手をしている六道と、気分良くなっている真央。この光景だと微笑ましいが、一人は元魔王だから何とも言えない。


 最近聞き慣れた控えめなノック音が部屋に響き渡った――きっと彼女が来たのだろう。


「私が出るわね。あら……七海さん」

「あ、一ノ瀬先輩! おつかれさまです!」


 一ノ瀬先輩が出迎えた先には、少し息を切らせてはいたものの、満面の笑顔の七海が立っていた。


「はあ……はあ……あ、あの……」

「ほら、落ち着いて。今からお茶にするんだけど、七海さんも一緒にどう?」

「え……いいんですか……?」

「もちろん良いぞ! みんなで飲むお茶は美味だからな!」


 偉そうに言う真央に少し呆れ顔の一ノ瀬先輩は、七海を中に招いて椅子に座らせる。


 呆れる気持ちはわかるけど、一々呆れてたらこれから先持たない。相手は真央だからな……いつ変な行動をするかわからないし、その度に呆れていたら身が持たない


「ふぅ……美味しい。お茶ありがとうございます。少し落ち着きました……あ、このクッキーもいただいていいんですか?」

「もちろん! 食べて食べて!」

「ではいただきます……もぐもぐ……これも美味しい。紅茶に合いますね!」

「えへへ~よかった! それわたしの手作りなんだ~!」


 六道から受け取った紅茶とクッキーに舌鼓を打っていた七海は、六道の言葉に目を大きく広げて驚いていた。


「ところで七海、テストどうだった?」

「あ、はい! おかげさまで生まれて初めてテストに空欄が無かったです! 手応えもバッチリです!」


 ふんすっと控えめな胸の前で、可愛らしく握り拳を二つ作りながら力説する七海の表情は自信に満ち溢れていた。よっぽど出来が良かったのだろな。


「ご、ごめんなさい……その報告がしたくて……えへへ」

「それは何よりだ! 我らも協力したかいがあったというものだ!」

「お前教わる側だったろうが……七海に何してやったか言ってみろよ」

「あー……えーっと……そのー……ふはははは!」

「雑に笑って誤魔化そうとするな」

「く、黒野先輩にはたくさん励ましてもらいましたよ!」


 俺がジト目で真央を問い詰めると、七海が汗を飛ばしながら必死に真央のフォローをしていた。


 なんか俺が悪者みたいに見えるし、七海に免じて今日はこの辺で見逃してやろう。


「さて諸君、我は一つ提案がある!」

「どうせろくな提案じゃないだろ」

「早乙女君と一緒なのは遺憾ですが、私も同意見ですね」

「聞く前から文句を言うなってママから教わらなかったのかー!!」

「いやちょっと待て。遺憾ってどういう事だ」

「意味を知らないなら辞書で調べてみてはどうでしょうか?」

「意味くらい知ってるっての!」


 俺と九条さんの言葉に不服なのか、真央はプリプリ怒っていた。それはいつもの事だからいいんだけど、俺と同じで遺憾とはどういう事だ。ちゃっかり毒を吐かないで欲しい。


 前世の頃からもそうだったが、俺は九条さんに何か嫌われる事でもしたのだろうか? いつも毒を吐かれている気がする。


「まあとりあえず聞きましょ。で、提案って何なの黒野さん?」

「よくぞ聞いたのだ芽衣センパイ! テストも終わり、もこの依頼も無事に達成できたという事で……打ち上げとしてこれからカラオケに行くのはどうだろうか!」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


次回は明日のお昼に投稿予定です。


少しでも面白い!と思っていただけましたら、評価、ブクマ、感想お待ちしてます。


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