第17話 青春応援部、始動!!
青春応援部がすべての条件をクリアした日からしばらく経ち――ゴールデンウィークが終わり、面倒な学校生活が再度始まった。
俺は今日も寝ぼけ眼を擦りながら、自分の席に座る。
いつもなら俺よりも早く来ている真央と六道はまだ来ていない。九条さんはもう来ているみたいで、こっちを見ながら軽く会釈をしてくれた。
「早乙女殿! おはよう!」
「二階堂か。うっす」
珍しく朝一から来ていた二階堂が、爽やかに挨拶をしてきた。
なんとなく思ったんだが、こいつが普段から言っているルシファーとかなんとかってやつ、もしかして本当の事だったりしないよな?
何の因果かは知らないが、俺の周りには転生者ばかりが集まってきているから、無意識に疑ってしまう。
「早乙女殿は知っているでござるか?」
「何をだ」
「前にラインで拙者に聞いていたでござろう? 来栖天馬の事を」
ああ……確かに聞いたな。今思い出しても腹立たしいぜ。そういえばあのインキュバス、あの後どうなったんだろうな?
「あの男、優等生のレッテルが崩れたらしいですぞ!」
「は? なんでだ?」
どういう事だ? 俺は何もしていないのに何故バレるんだ?
「デュフフ……教えてしんぜよう! 我が二階堂ネットワークによると、奴が他の女の子に告白され、オーケーしている所を、彼女の一人が見ていたらしいですぞ? しかも、告白した女子を助けに来た男子生徒をボコボコにしていたとか。その情報が拡散されて、ゲス野郎というのがバレてしまったという事ですな!」
何かメモをしているのか、二階堂は眼鏡をクイっとあげながらスマホの画面を見ていた。
あのタイミングで彼女さんの一人が見ていたとか不運すぎるな。来栖にバチを与えたのかもしれない。
けど……当然と言えば当然だ。同情の余地は無い。
ん? ちょっと待て、奴は簡易的な魅了を使っていた。なら、彼女達は全員かかっていたとしてもおかしくはない。来栖を評価していた連中も同じだろう。
それなのに……もしかして、俺が奴の目に攻撃した影響で魅了が解けた、もしくは能力自体を無くしたって事か?
どちらにせよ、ざまあみろとしか言いようがないな。
「さらにその一件で七股してたのがバレて、学校に居場所がなくなったそうですぞ! デュフフ……リア充がざまぁするのは気分が良いでありますな……我がルシファーの血も喜んでいる!」
二階堂、お前ずいぶん捻くれてるな。俺も人のことは言えないが。
「ところで早乙女殿。貴殿はこの件に関わっているでござるか?」
急に真面目なトーンで核心をつかれた俺は、思わずドキッとしてしまった。
「なぜそう思う?」
「拙者に突然、来栖天馬の事でラインしてきたではありませぬか。そのタイミングと今回の件の時期がほぼ同じという事と、助けに来た男子生徒と早乙女殿の特徴が似ているのでありますよ」
言われてみれば確かにその通りだ。けど、二階堂にわざわざ話す内容じゃない……適当に濁しておくとしよう。
「……さあな」
「まあどっちでもいいでありますが……あまり無茶はいけませんぞ。早乙女殿は時々無茶な事をしでかしますからなぁ」
「……おう」
なんだかんだで二階堂との付き合いは小学校の頃からだからか、俺の事をよく理解してる。
だからなのか、その言葉が俺の胸に刺さっていた。なんだかんだでこいつも心配してくれているんだな。
「いや待ってくだされ。最近早乙女殿は美少女とよく行動を共にしている……しかも、謎の部活動を作ったとも聞いていますぞ!? つまりリア充! リア充は盛大に爆ぜろ!!」
しんみりした顔から一転、二階堂は血の涙を流す勢いで俺の事を睨みつけてきた。
俺の感動を返しやがれ。
****
「蒼ー! 部室に行くぞー!」
同日の放課後――真央が後ろの席に座っている俺の方を向きながら声をかけてきた。
今日は青春応援部が活動を始める日だ。部室を用意したり、他にも諸々の準備があったため、活動開始日が今日まで伸びてしまったんだ。
「へいへい。六道も一緒に行くか」
「うんっ! 美月ちゃんもいこー!」
「ええ」
俺が六道を、六道が九条さんを呼ぶと、揃って教室を後にする。
その際に周りの男子の視線を浴びた気がするけど、気にした所で改善するわけでもないし、放っておこう。
「そういえば場所はどこなのだろうな?」
「部室棟に部屋を用意したと一ノ瀬先輩が言ってましたよ。確か三階の部屋だとか」
「部室棟? 校舎から少し離れた所にある建物だよね。どんな感じの部屋なのかな~?」
「楽しみだのう! ところで、蒼は部室棟に行った事はあるのか?」
俺は楽しそうに話しながら歩いている美少女三人の少し後ろを、ボーっと歩いていると、真央がくるっと俺の方を向きながら、一つの疑問を投げかけてきた。
「部活に縁が無かった俺には無縁の場所だ」
「黒野さん、根暗な早乙女君は部室棟に行くような人じゃないですよ。あまり本当の事を突きつけると、早乙女君がかわいそうですよ」
その真顔で真央に変な事を吹き込むのやめてくれ。後で真央が俺を馬鹿にするネタに使ってくる可能性があるだろ。間違っていないのがなおさらタチが悪い。
「も~美月ちゃん、早乙女くんがかわいそうだよ~! これからは縁があるんだから……一緒にがんばろっ!」
ニッコニコな明るい笑顔を浮かべた六道は、俺を優しくフォローしてくれた。
六道はわがままな真央と毒舌な九条さんとは対照的な、まるで心のオアシスのようだ。おかげで俺のメンタルは回復した。
そんな事を話している間に、俺達は部室棟にたどり着くと、日本人離れした綺麗な金髪の女子に出迎えられた。
「あら、全員揃って来たのね」
「一ノ瀬先輩。先に来てたんすね」
「ええ。鍵をもらって来たから一緒に行きましょ」
「おい真央、お前鍵取って来てなかったのか」
「……忘れてた……す、過ぎた事は気にするな!」
「忘れてたって聞こえてんぞ」
「ら、らふぇるのらー!」
俺は仕事をしない部長様の口をヒヨコ口にしてやった。涙目で反論しているが知った事ではない。
「はいはい、遊んでないで行くわよ」
パンパンと軽く手を叩いて言う一ノ瀬先輩の姿は、いかにも人の扱いに慣れている雰囲気がある。
俺達は一ノ瀬先輩と共に、鉄で出来た少し急な階段を上っていく。三階建ての建物で、部室は三階の隅っこの部屋のようだ。
「さあ、どうぞ」
一ノ瀬先輩がドアを開けると、小さな部屋が出迎えてくれた。長方形の大きめの机や椅子が完備されており、小さなホワイトボードが置いてある。
日当たりも良いおかげで、とても部屋の中は明るかった。
「おお……ここが我らの城となるのか!?」
「城って……ある意味間違ってはいないけどな」
俺は真央に苦笑いをしながらそう言うと、適当に左手の奥の椅子に腰を下ろす。その右隣に一ノ瀬先輩、俺の対面に六道、六道の隣に九条さんが座る。
そして真央だけは机の短辺部分に一つだけ置いてあった椅子に座ってふんぞり返っていた。相変わらずチビのくせに態度だけは無駄にでかい。
「さあ諸君! 今日は我ら青春応援部の記念すべきスタートの日だ! 楽しく青春を送りながら、困っている生徒の依頼を解決しよう! 頑張るぞー! おー!」
「おー!」
「……おー」
「お、おー……」
真央のやや痛い号令に続くように、六道はにこやかに、九条さんはやや呆れたように、一ノ瀬先輩は少し照れながら、各自腕を突き上げて真央に続く。
それぞれの個性が出てて面白い。
「ほれ、蒼も! おー!」
「はいはい」
「む~~~~!」
俺の対応が大変お気に召さなかったのだろう。真央は大きく頬を膨らませていた。
あの頬を思い切り潰してみたらちょっと面白いかもしれない……いや、これ以上やったらすねるかもしれないから止めておくか。
「まあ良い。とりあえず活動初日という事で……記念写真を撮ろうではないか!」
「あ、賛成~! どこで撮る?」
「入口の所で撮りたいのだ!」
何故入口のところ……? 普通に撮るならここで良いと思うのは俺だけだろうか?
「ふふん、蒼の事だから何故入口と思っているであろう?」
「その通りだが……お前なんかに読まれるとか屈辱を感じるな」
「どういう意味だ!? まったく……その理由だが、青春応援部の看板が一緒に撮れるからだ!」
「看板なんてあるのか?」
「……ないのか?」
「申し訳ないけど無いわ。もともと空き部屋だったからね」
ばっさり言う一ノ瀬先輩の言葉に、真央はまるでこの世に絶望したかのように、顔を真っ青にして震えていた。
看板程度でいちいち大げさな奴だ。そんなのが無くても写真は撮れるだろうに。
「な、なら我が作るだけなのだ! 何か書けるものは……お、良いのを見つけたぞ!」
真央は部屋の棚に入っていた謎の画用紙とペンを取り出し、ペンを素早く走らせる。
なんでこんな所に……? 昔この部屋を使っていた部活の置き土産だろうか?
「うむっ、これで良い! って、これだと板じゃないから、看板じゃなくてカンカミ……それともカンシ……? まあそんな細かい事はどうでもよいな! みんな一旦廊下に出るのだ!」
一人でミニコントを終えてから、楽しそうに鼻歌を歌う真央に続いて、俺達は一旦廊下に出る。
すると、真央は鉄の縦開きの扉に紙を張り付けた。いつの間にセロテープも用意しているとは真央のくせに準備がいい。
ちなみに紙には『青春応援部!!』と文字が書かれており、端っこにデフォルメされた猫のイラストが描かれていた。
割とうまいじゃないか……イラストを描ける身として、ちょっと嫉妬してしまう。
「蒼はスマホで撮る係な!」
……俺だけ写れないのかよ。別にどうしても撮ってもらいたい訳じゃないからいいんだけど、少しだけ疎外感を感じてしまう。
「ちょ、黒野さん……私、写真撮られるの恥ずかしいから苦手で……って、引っ張らないで!」
「はいはい、美月ちゃんはこっちね~!」
「ゆ、友莉菜……!」
真央と六道に引っ張られる二人にちょっとおかしくなりつつも、俺は部室の入口の正面に立ってスマホを構える。
スマホの画面には、先程の看板(仮)を張ったドアを中心に、美少女達が好きにポーズを取っている。
「撮るぞー。はい、チーズ」
掛け声と共に、俺はスマホの画面をタッチする。
このシャッター音が、俺達の部活動の始まりを告げる鐘となるのだった――
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次の更新は明日の夜の予定です。
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