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どうするつもり!?

 その後も、PCでの作業は美玖と美瑠がメインで進めていき、俺は時々、グラフィックの方向性について指示を出す程度にとどめた。


 というのも、絵に関しては正直、「おまかせ」にした方がずっといいものができあがっているからだ。


 今回、美玖に依頼しているのは、「修行中の五天女」のスピンオフ作品で、天女の一人が主人公と共に、妖魔達が巣くう「死の森」に赴くというもの。


 バトル要素をふんだんに取り込む予定で、「天女が薄い羽衣のみを纏って呪術で戦う」というのが新しいコンセプトだ――と、それだけしか指定していないのに、そのイラストの下書きの躍動感、かわいらしさは、すでに俺の想像を超えていた。


 まだこの日はヒロインの一人について、フリーハンドの下書きから線画として抽出するのみだったが、それでも完成が楽しみな出来映えだ。


 夕方5時になり、美玖が帰る時間になったので、その日の報酬1万円を渡そうとしたのだが、


「まだ作品は完成していないので、受け取れません」


 と断られた。変なところで律儀だ。

 そのあたり、「1日8時間で1万円」と曖昧にしていた部分ではあったが(食事時間も含む)、美瑠の提案で、月給制とすることになった。


 これで美玖の今日の仕事は終わり。

 ほっとしたような、思ったより進まなかったので悔しそうな、微妙な表情だった。


「じゃあ、美玖、お疲れさま。私はツッチーとちょっと話があるから、先に帰ってて」


 美瑠のその台詞に、美玖はちょっと意外そうな顔をしていたが、それ以上気にすることもなく、


「うん、いろいろ教えてくれてありがとう……土屋さん、また来週、お願いしますね!」


 と頭を下げて帰って行った。

 そして美瑠と二人きりになった俺だったが……。


「それでツッチー、美玖をどうするつもり!?」


 案の定、追求の質問が来た。


「どうするって……どういうことだ?」


「決まってるでしょう? 美玖と付き合うつもりなの?」


「……いや、幸か不幸か、それはない」


「本当に、そう思ってる? 誓える?」


 なんか、凄く真剣に聞いてくる……実の妹のこと、しかもまだ十六歳の高校生だから当然か。


「ああ……少なくとも、今は」


「……今は、ね……まあ、それなら納得できるかな……」


 美瑠は、ようやく厳しい視線を解いた。


「……でも、本当にびっくりしたよ。まさか美玖が、ツッチーのアパートに押しかけるなんて」


「俺の方が驚いたよ。まさか、それがみるるの妹だったなんて」


「そう、自慢の妹。だから……美玖のこと、泣かせたら怒るからね」


 母親と同じようなことを言う美瑠。やっぱり親子だな、と思った。


「あと、みるる……別れたって、本当なのか?」


 美玖が居るときにも会話の中で出たことだったし、軽い気持ちでそう聞いたのだが、切ない表情で


「うん……」


 とつぶやかれたとき、余計なことを聞いてしまったかな、と少し後悔した。


 そしてアパートの一室で二人きりのこの状況……鼓動が高鳴るのを感じていた――。

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