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もう一人の天女

タイトルを「十六歳の花嫁 ~ 俺のことを神だと思い込んでいる、ちょっと間の抜けたJK天女 ~」に変更しています。

 その後、家電量販店で無事にインクカートリッジを買った俺たちは、昼が近かったので近所のファミレスに行った。

 そこでの食事代も俺が出すといったのだが、美瑠が


「さすがにそれは申し訳ないから」


 ということで、彼女が自分と美玖の分を払った。

 それでようやくアパートへと戻った。

 美瑠もついてきており、


「……へえ、思ったより綺麗にしてるね」


 と褒めて? くれた。


 俺の部屋は1LDKで、寝室にPCのラックがある。

 今、美瑠と美玖の姉妹が、俺のPCを使って作業していた。

 美瑠はPCに詳しく、基本的な使い方を美玖に教えている。

 グラフィックツールに関しても、俺が買っていた入門書を見ながら、勝手にあれこれ試しながら作業を進めているようだ。


 そもそも美瑠はパソコンのインストラクターの資格を持っているので、教えるのは得意なのだろうが、使ったことのないグラフィックツールまで、入門書だけで教えられるというのは凄いな、と思った。


 まあ、俺がそのツールを全く使いこなせていなかったというのもあるが……。

 とくに、頑張って絵の練習をしようとして購入したものの、才能のなさに使うのを諦めたペンタブレットまで使いこなしているのは流石だなと感心した。


 ちなみに、PCのユーザーは切り替えられるようにしているので、メールなどの、俺の個人情報が漏れる心配もない。


 美玖に対して教えることがなくなった俺はというと、リビングでテキストツール「ポミラ」を使ってシナリオを書いている。

 この機械、テキストを入力することに特化していて、逆にそれしかできないので、ついついネットを見てしまう、なんてことがなく、作業がはかどるという利点もある。


 一応、会社員でありながら出版社の公式作家でもあるので(そちらの収入はほとんどないけど)、頑張って新しいシナリオを書いていく。


 ……しかし、隣の部屋から聞こえてくる楽しそうな声は、時折俺の手を止まらせる。

 なんか、仲間はずれになったような寂しさと、ひょっとしたら、美玖を美瑠に取られたことへの嫉妬があるのかもしれない……。


 恨めしげに寝室のドアを見つめていると、突然開いたのでビクッと体を硬直させる。


「ツッチー、一通り使えるようになったよ。なので、ちょっと休憩しない?」


 なぜか、美瑠が仕切っている。

 時計を見るともう午後三時を過ぎていたので、その提案を受け入れた。


 ファミレスからの帰りにコンビニでスイーツと飲み物を買っていたので、それをリビングテーブルの上に出す。

 美女、美少女、そして俺という三人だけで、俺の部屋でお茶会のような雰囲気……まさかこんな日が来るとは。

 ある意味、美玖と二人だけだとここまで気楽に過ごせなかったかもしれないので、美瑠が居てくれて良かったのかな。


 ただ、美玖はスイーツを食べようとしなかった。

 ファイミレスでも小食だったし、ダイエットでもしているのだろうか、と思っていると、美瑠がストレートにそう聞いて、美玖は恥ずかしそうにうなずいた。


 俺から見れば全然太った印象はなくて、むしろやや細身で、それでいてメリハリのある理想的な体型なんだけどな……じろじろ見たわけではないが、しっかり胸の大きさも感じられる。

 ただ、やはり姉の美瑠の方が、胸も大きく、ウエストもくびれているように感じられる。


 フォトTシャツとブルーデニムという、シンプルな薄着のコーディネイトであるところは妹の美玖と同じなのだが、その分、大人な体つきであることがはっきりと分かる。


「ダメよ、ちゃんと食べないと。あと、運動しないと意味ないから」


 美瑠が注意する。


「うん、でも……私、姉さんと違って運動は苦手だから……」


「私だって、社会人になってからは、毎朝ちょっとジョギングしているだけよ。お金もかからないし……」


 そんな会話に、ふと、思い出したことを聞いた。


「そういえばみるる、学生時代、体操やってたって言ってなかったっけ?」


「私? うん、やってたよ。こう見えて、国体の強化選手だったよ」 


「……国体!? 強化選手!?」


 俺は驚きの声を上げた。


「……じゃあ、ひょっとしてバク転とかできるのか?」


「うん、できるよ。バク宙も。平均台の上で。競技中の動画撮ってるから、見てみる?」


 ……俺は、唖然として声をなくした。

 姉の美瑠もまた、美玖とは違った分野での天女だった。

 そしてスマホで見せてもらった、競技用レオタード姿の彼女の動画に、不覚にもドキドキしてしまい、


「……ツッチー、赤くなってるよ……なんか、私の方が恥ずかしいから……」


 と指摘され、ますます顔が熱くなるのを感じたのだった――。

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