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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
蜂の巣ダンジョン編
94/206

スモーク・ブリッジ・スパイダー

「これ普通に倒して大丈夫かな?」


「ああ大丈夫だ!」


「魔法も使って大丈夫ですか?」


「ああ大丈夫さね!」


「壁に穴開いても大丈夫だぜ?」


「ああ、えっ?」


 俺はウロボロスの剣を実戦初投入だ。

 模擬戦の成果を見せてやるぜ!


「こるぁ!」


(おっと、川の民の時の雄叫びが癖になってるわ)


 ラッカも鍛錬してきた雷撃魔法を思う存分発揮している。

 ピスタは……


 ヴァスッ! ヴァスッ! ヴァスッ!


 慟哭銃(どうこくじゅう)の威力は、この世界の常識を少し壊してる。

 そして……


「からの~、いくぜ! スカルホーンハンマー!」


 ヴゥヴァァァー!


 黒色魔力の慟哭が大槌から存分に放たれた。

 多分、本気で攻撃のために使ったのは初めてだったはず……


「おいおい……こりゃ何だ?」


「ちょっとイドリーの旦那、この子らの心配って必要?」


 プトレマとミュラーは呆れ顔だ。

 素手での闘技しか見ていないヴァルトゼとファンデラも驚いていた。

 なぜなら頭を上下させ迫っていた大量の植物系魔物ヘドバンツリーの姿どころか壁まで吹き飛んでいたからだ……


「す、すみません」


 責任感から心配し過ぎなイドリーだが、さすがに立場がないようだった。





 先程から女剣士のミュラーがウロボロスに興味津々だ。

 カイは同じ光属性のラッカと魔法談義に花が咲いている。

 残りの皆はピスタの慟哭銃とスカルホーンハンマーが気になった様だが必要な魔力量を聞いてガッカリしていた。



「でも慟哭銃の方なら改良すれば半分くらいにはなりそうだぜ」



 魔力そのものを慟哭として放つスカルホーンハンマーと違いタイガービーの針を打ち出す火薬代わりに魔力と言うか慟哭を使う慟哭銃。

 たしかに可能性があるなら、こっちだろう。



「半分なら、いざって時の必殺技にゃ有りかもなぁ」


「いや半分に出来るのなら連射の出来るマシンガンタイプを目指そうピスタ!」


「分からないけどアーモンが言うなら僕やるぜ」


「ちょっとピスタずるいわよ」


 この階層に初めて来てイチャイチャ出来るなんて大物だよ。

 なんてミュラーに言われてる頃に、どうやらボス部屋へと、たどり着いた。


「さて金環の少年……いやアーモン、お前さんらは予想より強い。それは確かだがボス部屋は経験がモノを言う」


「そうだな、最初は離れて見てた方が良いだろう」


 ファンデラとプトレマの言葉は重い。

 ちと調子に乗りそうだったが気を引き締めていく事にした。




 見上げる程の扉。

 いかにもボス部屋の威厳が漂う。

 ペカンは既に魔眼、千里眼を発動していた。


「天井にボスよー、下にも3つ何かいるです……赤き熱風は奥に見えるです」


「俺が右をやろう」


 ヴァルトゼが宣言した。


「じゃ、俺とミュラーが左だな」


「真ん中は私がやるよー」


「待て!」


 ペカンが、どうしても戦うと言って聞かない。

 仕方なくファンデラが加勢。

 クコが防御魔法を準備する事にした。

 回復はカイが備えるが全員は無理だと呟く、当たり前だ。

 イドリーは意地でも俺から離れないらしい……



 さあ開戦だ!



 ギィーーー。



 ヴァルトゼとファンデラが扉を開けていく。

 翡翠色の長髪に鍛えられた肩筋……古代の壁画でも見ているかの様に美しい光景だ。

 開く扉の隙間から、ゆっくりと煙が漏れてくる。

 そこに居たのは大きな蜘蛛だった。

 ただ、おかしいのは首が逆、いや体も逆だった。

 ブリッジ状態の蜘蛛が煙の糸の蜘蛛の巣に乗っていた。



「まじかよ、スモーク・ブリッジ・スパイダーだ」



 プトレマすら脂汗を流している。



「中ボスだと? 最奥クラスだぞ」


「出直して人数集めるのが得策さね」


 その時、入口の扉が閉まり何をしても開かなくなってしまった!


「くそっ、中ボスと思って油断した。最奥なら扉の自動閉鎖など当たり前に備えておくものを」


「やーだ、倒すしかなーい」


「集中しろ! まずは下のこいつらだ」


 そこには上の蜘蛛と同じくブリッジ状態で三体並んでいる人型の魔物がいた。

 天井付近の蜘蛛の巣から煙状の糸『スモークシルク』が繋がっている。



「グゴァゴァ」


「この蜘蛛、話すのか!」


 スモークブリッジスパイダーの曇った声を合図に三体の人型魔物の頭の上に炎が灯った。

 と、同時にガチャガチャと動き始めてブリッジから、ひっくり返った。



「キャンドルマリオネットです!」



 ポーターマテオの情報では糸を斬ってはいけないとの事だ。


「き、気持ち悪い」


 ラッカが苦手なホラータイプだな。

 俺は、そっとラッカの前へ出た。


「気持ち悪いぜ」


 ピスタも苦手なのか?

 俺は、そっとピスタの前にも出た。


「……気持ち……悪い」


 クコもか?

 俺は、そっと……


「集中しなさい!」


 イドリーに怒られた。

 なぜ俺が……





 ゆっくりと動くキャンドルマリオネット。

 煙の糸で操られるように動く様は正にマリオネットだ。

 ただし動きが気持ち悪い……

 操作が下手なマリオネット?

 いや違う、わざと気持ち悪く動かせる程に上手い操作のマリオネットだ。


「せい!」


 遅い動きにヴァルトゼが正面から剣で突いていく。


 カチャカチャン!

 急激に速くなる動き……肘に繋がる煙の糸スモークシルクが剣に当たり斬れてしまう。

 すると斬れた部分から燃え上がり、切れた糸らしく垂れかかって行く。

 カチャン!

 その切れた糸を操るように手が払われ燃える糸が、こちら側へと打ち付けられた!


「熱っ!」


「吹け花吹雪ウインドアロー改」


 直接攻撃の不利を見て、ココンが魔法攻撃に切り替える。

 さすがはダンジョン攻略の先導パーティ『翡翠の爪』と言ったところか?


「やーだ、失敗しーた」


 キャンドルマリオネットの右手口、左肘 左肩口、右膝の煙の糸が斬れた。

 いや斬らされた。

 一斉に降り注ぐ燃える糸。


「炎の壁ファイヤーウォール」


 ヴァルトゼの火属性魔法だ。

 ガタイの良さと剣捌きに忘れそうになるが彼は魔法民族、丘の民であり自ら魔法剣士を名乗っている。

 しかも火属性魔法で防御魔法とは並の腕ではない証拠だ。



『灰色の天秤』プトレマとミュラーも同様に苦戦している。

 ミュラーの剣攻撃は、どうしても糸に当たり、プトレマは変則の壁役らしく小盾で防御しつつアイテムを使って攻撃をしている。


「よし! 絡まったぞ」


 狩りに使うような狩猟道具でマリオネットの足を絡め取ると一気に優勢となったかに見えたが……


「おいおい、冗談だろ?」


 足を絡め取れたキャンドルマリオネットは手で歩き始め、頭の上のキャンドルで絡まった狩猟道具を焼き始めたのだ!


「焼き切る前に倒しゃ良いってことさね!」


 連撃! 連撃! 連撃!


 猛烈な勢いで斬りまくるミュラーだが斬れば斬るほどに煙糸が燃えつつ垂れて来る。

 このままでは……


「ちっ! しゃーねーか」


 壁役であるプトレマだが小盾もアイテム類も使わず詠唱を始めた。

 敵のダメージも相当ではあるが、そろそろミュラーのダメージが限界近い……その時!


「闇深き深淵へ飲み込めダークバレー」


 闇属性魔法……

 圧倒的に適性の少ない属性である。

 魔族のイメージが強いため、その適性を隠す者が多いのもレアとされる理由であろう。


「すげーぜ! 燃え糸がドンドン飲み込まれてるぜ」


「さすがは上級者パーティ、闇持ちとは……」




 そして問題のペカンは?

 嘘のように矢を外しまくっていた……




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