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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
蜂の巣ダンジョン編
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ハンターズネスト

 まだ薄暗いシャシャシャ集落(受付小屋の婆さんの笑い方から命名)の早朝。

 朝独特の冷えた空気の匂いに……


(こういうのは日本と変わらないな、早朝の神社境内(けいだい)掃除を思い出すなぁ)


 なんて懐かしさを覚えつつ見渡すと、みんな集まっていた。

 ペカン以外が……

 前回は泊まって行くのを嬉しそうにしていたペカンが自宅に帰ると譲らなかったので皆、気がついたのだ。



「ふはぁ、眠い」


欠伸(あくび)してないで行くわよアーモン」


 まだ人のまばらなハルティスの街。

 妙に自分達の歩く音が響くように感じながらペカンの自宅前へと、たどり着いた。


「やっぱり(あかり)が点いてるわ」


「……出て……来る」


「隠れろ」


 やっぱりペカンが早朝から武装して出て来た。

 向かう先はシャシャシャ集落……俺達の泊まってるボロ宿ではなさそうだ。


「どうする? 今、止める?」


「少し着いて行ってみましょうか」


 当然の如く蜂の巣ダンジョンへとたどり着いたペカンだが……


「何か考えてるのかな?」


「弓を仕舞って短剣を腰に装備したぜ」


 あんな嫌味な『赤き熱風』の為に、どうして行くのか?

 ヒーラーなのに攻撃参加したがるペカンの胸の内が、もしかしたら分かるかも知れなかった。


「イドリー隠れて着いて行こう」


「ダメです。やはり今すぐ止めます」


 イドリーがペカンの方へ歩き出そうとした、その時だった。


「よう、早いじゃねぇか?」


「プトレマさんにミュラーさん」


 今日は休息日だと言っていた『灰色の天秤』のリーダーと剣士が揃ってお出ましだ。


「うちの問題に手間をかける訳には……」


「やだね、イドリー偶然さ、宿場に忘れ物を取りに行くだけさ」


 バレバレだ。

 彼らもペカンの様子に気付いていたのだ。


「何なら社会見学に宿場まで着いて来るかい?」


「お心遣い本当に申し訳ないです。ダメそうなら、その場で、すぐに引き返します」


 こうして俺達はペカンと適度な距離を保ちつつ宿場を目指す事になった。

 もし宿場より下層へとペカンが降りそうになれば、そこで声を掛けようとなった。





()れず? 全然倒せてるわね」


「だね、弓だと上手くいかないなかな?」


「と言うより敵の位置を大まかに把握してる様に見えるぜ」


 射れずのペカンと揶揄(やゆ)されるほど、お粗末な攻撃のはずのペカンは短剣では難なく低級から中級手前の魔物を倒している。

 確かに上級剣士とは言えないが、ある程度訓練を受けたレベルであろう。

 そして俺達の事も……


「初心者? 全然倒せてるじゃねえか」


「あたいらなんて必要ないじゃないのさ」


 ペカンが俺達に何か隠してるように俺達もプトレマ達には追われてる立場上、何でもは話してないから……そうなるよね。


「いえ、この辺りの魔物に(うと)いので、居てくれればこそ安心して動けてる結果ですよ」


 さすがイドリー、ナイスフォローである。

 マフラーウルフやイヤリングラットの上位種も彼らのアドバイス通り似たような習性と分かれば難なく倒せた。

 そうして中層に出来たと言う宿場『ハンターズネスト』へとペカン、そして俺達はたどり着いた。




 そこは相当広い空洞を利用した宿場であった。白く丸い(まゆ)のような物が天井から何個も、ぶら下がっている。


「あの繭が寝床さ」


「……寝て……みたい」


 迷宮(かいこ)の繭。

 2、3匹連れて来れば何個も繭で寝床を作れるから重宝される(かいこ)でダンジョンでは定番だと教えてもらった。


「ハンモックみたいで寝心地も中々ですよ私も寝た事あります」


 さすが元冒険者、イドリーも経験済みだったようだ。

 中央に残された通路スペースを挟んで寝床と飯場(はんば)に別れている様だ。

 飯場の奥には食事や酒を出すダイニングバーのようなスペースも見える。


「ペカンの嬢ちゃんは慣れてるな」


 ダイニングバーのようなスペースのカウンターの奥にいる男……

 マスター的な男のあの雰囲気は谷の民だろう。

 その男にペカンは何か聞いていた。


「いや注文しただけ?」


「まあ見てなって」


 そっけなかったマスター的な男が和かに話し始めていた。


「なるほど何か知りたきゃ金落とせですか?」


「ま、そう言うことさね」




 話し終わるとペカンは短剣をしまい弓を準備し始めた。


「こりゃ下層へ降りてしまいそうだぞ」


 その時、徹夜組のパーティが下層から戻って来た。

 4~5組はいるだろうか大勢いる……


「まったく素人のせいで(ひど)い目に()ったな」


「確かにな」


「ありゃもう、ダメだろな」


 嫌な予感がした。

 奴らの事じゃない。

 ペカンだ。

 やっぱり走り出してしまった。

 下層へ……



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