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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
蜂の巣ダンジョン編
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灰色の天秤

「気にする事はねぇよ、その初心者の、あんちゃん達が死んだところで自分の責任だ」


「そうよねぇ、それが冒険者ってものさねぇ」


 お隣の冒険者パーティ『灰色(はいいろ)天秤(てんびん)』は、リーダーのプトレマを中心とした上級者だった。

 結成当時からの腐れ縁だという女性剣士のミュラーも酒を、あおりつつ冒険者自己責任論に熱が入る。



「なによー、死んだらヒール出来ないです……」



 ペカンの小さな呟きはワイワイガヤガヤしてる場の勢いに残念ながら()き消されてしまった。




「灰色をパーティ名にするのは珍しいですね」


「この人のポリシーなのさ」



 上級者パーティ『灰色の天秤』は目立たず出しゃばらずリスクとリターンを天秤で絶え間なく(はか)るのがポリシーなのだそうだ。



 灰色は目立たない色……



 大きな討伐に複数パーティが大編成を組む際などボスにトドメを刺すパーティや仕切りを行うパーティは目立つし名も売れる。

 (あが)められ憧れられたりと羨ましくも見えるが……

 討伐終了時の報酬自体は、たいして変わりなかったりするのだそうだ。



「それにな(ねた)みってのは時にボス級の魔物よりも怖いもんだ」


 なるほど勉強になる。

 討伐直前にフレンドリーファイヤーに見せかけて裏切りなんて充分に有り得る話だろう。





「ミュラーの剣ってドロップアイテムだろ、もし大丈夫なら見せてくれだぜ」


「見る目があるじゃない、昔さ、再奥のボス部屋でボス本体を別パーティに(ゆず)って尻尾を担当してたらドロップしたのさ」


 まさに『灰色の天秤』のポリシーが勝利したようなエピソードである。

 そして久々のピスタの解析眼が発動だ。

 金環で一緒に見てもいいが、どうせ見ても分からないのでスルー。


「すげーぜ、古代鋼(こだいはがね)だぜ」


「なんだ、ピスタの嬢ちゃん魔眼かよ」


 それからピスタの解析眼の話で盛り上がってプトレマが次から次へとドロップアイテムを持ち出して鑑定大会が始まった。

 いつもの事だがピスタは初めての人と、あっと言う間に打ち解ける。




 あ、そうそうクコの手にした包帯みたいなドロップアイテムも、この時に解析眼で見たら特殊な武具である事が判明した。

 方位壺の時、ピスタはベトベト状態だったので見れなかったのだ。


「武器にも防具にも見えるな、それと、この特殊性がトラップなのか性能なのかが分からないぜ」


 すると、すっかり酔っ払ったミュラーが……


「構やしないさ、あたいに任せな」


 と、格好いいセリフと共に装着してしまった。

 ほどいた途端に両腕、両足へ巻き付いた包帯的なそれは……


「バンデージ?」


「なんだ金環の兄ちゃん、そのバンデってのは?」


「いいんですプトレマさん、アーモンは時々変な事を言うんで気にしないで下さい」


(俺の日本ワード発動とラッカの気にするな発動はセットになって来たな)


 それはボクサーの手に巻いてるバンデージにそっくりだった。

 足にも巻き付いてるので総合格闘技的な装いだ。

 ミュラーさんが人柱となってクコのドロップアイテムを鑑定してくれた。

 秘技! 『鑑定返し』なんだと。


「こりゃ攻防一体式じゃねえか! あんな低層で良い拾いもんしたなぁ」


「……秘技……強運」


「なにさ、大人しいだけかと思ったら面白いじゃないさピンク髪のあんた」


 久々に楽しい夜だった。

 だが、この時……ペカンの表情が曇っているのを皆、見逃してはいなかった。



 いや1人それどころでない者がいた。


「バンデージ……バンで死……これだ! クコの新武具の名前はこれだ!」


 そう俺だ。





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