赤き熱風
上から降りて来たパーティーによると地上部分の蜂の巣ダンジョンは低級の魔物しかいないらしい。
しかも復活が遅いので数が少ないとの事だった。
「低級で良いけど数が少ないのは効率が悪いよね」
「となると地下へ少し降りるしかないですね。ペカン、魔物の格が上がって来たら教えて下さい」
「了解よー、です」
地下3階層まで降りて来たところで、とある初心者っぽい冒険者パーティに出会った。
「おや、これは射れずのペカンじゃないか」
「……」
「ペカン知り合い?」
「ふっ、あんたらも運が悪いな。そいつはヒーラーとしては役に立たないぞ」
ペカンが攻撃に拘るあまり回復せずに迷惑をかけたパーティだろうか?
だとしたら悪く言われても仕方ないのだろうが彼らは、それ以前のレベルに見える。
「あなた方は?」
「俺達か? あんたらは初心者だろうから知らないだろうな、ふっ」
「おう、言ってやれ」
「いま最深部を攻めている冒険者パーティである『翡翠の爪』に認められた将来有望な『赤き熱風』だ、覚えておいて損はないぞ」
相当な上目線。
「そうでしたか、これは失礼いたしました」
「いや、分かればいいんだ。まだ印も取れずにいる君達だからな言い過ぎたよ。もし次に会った時、君達がピンチだったら俺達『赤き熱風』が助けてやるからな」
何でイドリーは、こんな奴らにまで下手に出るのか?
それは……
ぷっ、ぷはっ、ぷぷぷはー!
「わ、悪いわよアーモン笑い過ぎよ、ぷぷ」
「クーククッ仕方ないぜ」
「た、確かに……クハハ」
最初は腹が立ったがイドリーが下手に出てる頃には俺達は笑いを堪えるのに必死だった。
「私のせいよー、です」
「いや、ペカンのせいじゃないよ、話を聞かなかった彼らが悪いわ」
彼ら『赤き熱風』はペカンが前回に組んだパーティには違いなかった。
が、ペカンは攻撃参加するどころか、その前に彼らはタイガービーにコテンパンにやられたのだ。
それは彼らがペカンのする魔物やダンジョンの説明を聞かずに突っ走った結果らしい。
それなのに過去のペカンの噂を聞いてペカンをパーティから追い出してタイガービー戦の失態もペカンのせいだとギルドに報告したのである。
ペカンの、その話が本当かどうかは普通なら分からない、しかし俺達は見たのだ! 確固たる証拠を……
「見た? ぷぷっ」
「……鼠の……髭生えてた」
「印とか言って自慢げにしてたから恥ずかしさに気付いてないぜ」
「きっと最深部に向かったパーティが途中で、からかったのを真に受けたのでしょうね」
そう彼らはイヤリングラットのイヤリングを耳に着けていた。
当然、鼠の髭が生えていた。
ペカンの説明さえ聞いていれば、こんな恥ずかしい事にならずに済んだものを……
「イドリーも悪いわよね、教えてあげずに、失礼しましたとか言っちゃって」
「パーティメンバーを馬鹿にされては黙っていられません」
「ありがとよー、です」
馴染もうと必死になっていたペカンには皆が気付いていた。
俺達も、受け入れようと空回りしてる感じに焦っていたけど彼ら『赤き熱風』のお陰で、こうして自然とペカンは仲間になった。
『赤き熱風』には感謝しなけりゃならんね。
とか思いつつ『赤っ恥鼠』とか呼んでは、いつまでも笑っていたが……




