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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
蜂の巣ダンジョン編
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射れずのペカン

 街に着いてから数日は必要な物を揃えたり、街を見て回ったりした。

 あちこちで魔法を見れるので楽しいし参考にもなる。

 ただ物価が少し高く予定外の出費で懐具合(ふところぐあい)(かんば)しくない状態になって来た。



「適度な収入源は必要なので正直、丁度良いんですが」


「メルカが居ないからなぁ」


「浅い階層で低級の魔物でも回復と壁役なしは厳しいですよね?」



 中階層あたりで効率良く稼げるらしく低級の魔物が割と残っている蜂の巣ダンジョンの低層は生活費程度を稼ぎたい我々にはぴったりな状態なのだ。



「……防御……出来る」


「えっ? クコはアタッカーじゃないの?」



 体術特化の種族である川の民。

 それならアタッカーと思うのが当然だが……



「……防御魔法……得意」



 クコがエルフである丘の民とのハーフである事を忘れていた。

 魔吸具を被っていたからクコは魔法を使う姿を見せていないのも魔法と結びつかなかった原因だろう。

 それに呼び方が多くて、紛らわしいのが悪い。

 頭の中で整理すると……



(川の民が金剛種族で体術特化)

(丘の民がエルフで魔法民族)

(クコはハーフだから魔法も得意で体術もいける……しかも可愛い……最強かよ)



「となるとヒーラーさえ居ればダンジョンに潜れるのかな?」


「ギルドに登録すればヒーラーを雇えるらしいぜ」


「はぁ、やっぱりそうなりますか……」





 緩やかな丘の中心あたりだろうか? ギルドの建屋は周りよりも少し大きめで割と質素な造りだった。

 扉を開けると絡まれる定番イベントは?

 なかった。

 蜂の巣ダンジョン発見で()いてるハルティスの冒険者ギルドは我先に入窟(にゅうくつ)せんと他のヤツらを(かま)ってるような暇なヤツはいないのだ。



「違う」


「何がよ?」


「どうして受付が男なんだよ」


「何それ、初めてなのに違うってセリフこそ違うでしょ」



 ラッカの言う事はもっともだ。

 だがなギルドの受付だぞ。

 定番の美しいギルド職員を期待するのは当然だろうよ!

 エルフの男性なので美しいギルド職員なのは間違いない。

 だが、そう言う趣味はないのだ。

 せっかく美しいのなら、せめて男の娘だろうよ。

 いや、そう言う趣味もないのだけど……



「では登録は完了です。あとは単独ヒーラーの紹介でしたね」



 そこで少し驚く仕組みを見せて貰った。

 ヒーラーの登録リストなのだけど石で出来た長方形のお盆、その上に水のような何かが張ってあり受付のイケメンエルフが小声で何か唱えると……



「わあ、おもしろい」


「仕組みが知りたいぜ」



 文字の部分が水を弾くようにして書かれていった。

 それくらいで驚くほどウブではないのだよ驚くのは、これからだ。

 何と、スクロールした。



「これは、タブレットだ!」


「タブレって何だぜ?」


「この低層限定の方はどんな感じでしょう」



 もうイドリーとか慣れたもんで俺の日本ワード流しまくり……



「こちらは全員単独で組まれたいそうなので……こちらは、どうでしょう?」



 その娘はエルフでヒーラー。

 書かれている使える回復魔法はメルカに匹敵、もしかすると越えてる程のレベルだった。

 メルカの代わりなのだ、ぴったりじゃないか?

 と俺は思うのだが……イドリーの顔は曇る。



「これほどの治癒魔法士が低層希望しかも初心者でもOKというのは問題があるとしか……」


「で、でも回復魔法は凄いんですよ」



 何か、おかしい。

 イケメンエルフ明らかにキョドってる。



「……知ってる……射れずの……」


「はぁ、知ってる人がいらしたんですね……」



 イケメンエルフギルド職員の妹で名をペカン。

 回復魔法はハルティスギルド内でも随一の腕前だが……

 回復よりも自らが攻撃参加したい娘らしい。



「それならアタッカーで登録すれば良いのでは?」


「ギルド職員として認める訳にはいきません」



 その時、柱の裏から1人の少女が飛び出していった。



「なによー兄じゃのバカー」


「ああ、ペカン違うんだ……違わないけど」



 イケメンエルフギルド職員の妹が、そのハルティス随一の治癒魔法士ながら攻撃に夢中で回復しないせいで今やどこのパーティーにも誘われなくなった困ったヒーラーなのだと……

 そして何より攻撃がお粗末過ぎるのらしいのだ。



「それでアタッカーとして認められない訳ですか……」


「どうか、お願いします。妹にチャンスをやって下さい! 今回こそ回復に徹せよと言ってあるんです」






 押し切られた……


「あ、ありがとよー、頑張るです」


「頑張るのは回復だぞ! ペカン」


「なによー兄じゃは黙ってて」



 ペカンはエルフらしく翡翠色のサラサラ髪を装飾紐で額から後ろへと結んでいる。

 そしてエルフらしく美人だ。

 同い年くらいに見えるが長命のエルフなので実年齢はどれくらいかは分からない。

 青色の瞳のせいもあり、めちゃ可愛いから、まっ、いいか……



「まあ、低層ですので回復は保険ですから……では私から自己紹介を」



 イドリーから順番に自己紹介をしていき明日から蜂の巣ダンジョンへ潜る事になった。


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