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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
多民族国家ハリラタ編
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新たな闘い

(どうしてこうなった?)


「では川の民の王座は返上でよろしいんですね?」


「ええ、でも約束は守って下さいね」


「もちろんですウロボロス王者ラッカ様」


 そうだ闘技場で最後まで意識を保っていたのはラッカだった。

 あの時、休んでろと言った事を忘れていた……

 つまり勝ったのは俺ではなくラッカだ。


「すまなかった。この義は絶対に忘れぬ」


 族長と元王者アルベルト、そしてクコが平謝りしているのには理由がある。





 元々の族長死後、絶対的な力の象徴を失った川の民は不安定になっていた。

 代々族長の子供が継いできた族長職……

 しかし次の子供は純血の金剛種族では、なかったからだ。


「ではクコが元族長の子供だと?」


「はい、丘の民つまりエルフと金剛のハーフです」


「……です」


 川の民の元族長は女性……クコの母だった。


(なるほどデスリエ王女が子供を作れないはずだ)


 クコの母は丘の民の男性と恋に落ち純血の金剛種族を産まなかった。

 種族的に絶滅寸前まで殺戮の対象になったからなのか? 川の民は純血にこだわった。

 そして迫害以降、民を先導した族長の血筋にも同様にこだわった。

 しかしクコの母は死の間際、現族長に継ぐように言葉を残したのだと……


「元族長の血族にこだわる民に納得させる為、闘技で王者を決めて?」


「はい、政治と力の象徴を分ける事にしました」


 その闘技で当時、最強と思われていたアルベルトをクコが倒してしまった……

 それではクコが族長で良いではないか?

 いや純血でなければダメだと一族が2つに割れはじめ一触即発のムードが漂ったためクコが魔法で反則をした事にして無理矢理アルベルトを王者にしたと言う話だった。


「しかし、どうしても力の象徴として説得力が足りないからウロボロスを闘技で奪う事で説得力を付けようとしたと?」


「はい、まずクコがアーモン殿に、わざと負けてアルベルトが仇をとれば民もアルベルトを力の象徴として見直すだろうと言うシナリオでした」


「なるほど」


「しかし予定が狂い6人マッチになりました。ですがシナリオ通りであれ結果は同じだったでしょう。浅はかでした。全ては族長である私の責任です。アルベルトとクコは許してやって下さい」


「いや俺も悪いのだ、クコが俺より強かった。あの時に認めるべきだった」


「……ごめんなさい」





 事情はね、分かりましたよ。

 でもね、そんなのは、どうでも良いんだよ。


「わかったわ、許すわ」


「ありがとうございます」


「何でだよ、何でラッカが許すんだよ、俺だろ」


「やーだ、ラッカが王者ーだ」


 納得いかねー。

 イドリーとピスタはケラケラ笑うばかりだ。

 俺は、ちっとも面白くないのに……


「いいじゃない? ウロボロスは返してあげるんだから。前に貰った杖のお礼よ」


「いや、そうじゃなくてさ……」


 むしろ逆に壮絶に負けた感を味わう。





「では明日の朝に丘の街へ参るのだな」


「やだー、わたす嬉しいだよ」


 やっと丘の民のエリアへと行ける事になった。

 お詫びと新王者誕生の祝いを兼ねて今夜は宴会が開かれるとの事でご馳走が前に並んでいる。


「おめでとの、ラッカちゃん」


「ありがとうございます。師匠達の指導のお陰です」


「ラッカ姉ちゃん、おめでと」


 次々と来るラッカを祝福する人々。

 ムキムキ爺さん達に子供達、女達、若い男達も何だか赤い顔で並んでいる。


「お前さんの、あの技は何だ?」


「教えてくれんか?」


 俺のところに来るのは新し目のプロレス技に興味を抱いた筋肉オヤジばかりだ。

 いや正確には最初、美男美女に囲まれた。


「なぜ加護が使えるのだ?」


「えーっと……」


 ただ魔吸具を脱いで素顔でいる俺の顔……瞳を見たエルフ達は勝手に納得して帰って行った。


「あの様子だと金眼を知っていますね」


「はぁ、まずいですかね?」


「誇り高いエルフが打算的な事をするとは思えませんが一応警戒しておきましょう」


 イドリーが少し緊張した雰囲気になった。

 メルカの代わりに俺を守る約束をしている真面目な獣人は金環……瞳の金色の輪の事になると敏感だ。





 川の民の宴会となれば当然のごとく始まるのは闘技。

 毎日やってんだから、まあ、やるよね。


「おるぁ技の雨が降るぞ!」


「イヤォオ!」


「あれ? ハハハ」


 今までの闘技では見られなかった技のオンパレードだった。

 砂漠の修道院ではオマモリ。

 湾岸都市ラパではオミクジ。

 多民族国家ハリラタではプロレス技を日本から持ち込んだ事になるのか……


「何か今回だけ異色だな」


 いや待て奉納プロレスってもあるからな。

 何てバカな事を思っていると1人の美少女が近づいて来た。

 ピンク色のショートヘアに翡翠色の髪が少し尖り気味な耳のそばへ入っている。

 流行りのインナーカラー的な?

 瞳は茶色、まるで原宿にでもいるかのような雰囲気だ。


「……お願い……ある」


「ん? クコなのか?」


「……そう」


 美少女は魔吸具を外したクコだった。

 さすがエルフとのハーフ……美しい顔立ちだ。

 エルフは美人過ぎて別物感ありありだがハーフのクコは丁度良いくらいの美少女だった。


「……連れて行って……欲しい」


 自分がいれば、またアルベルトより相応しいとなり民が割れる恐れが残る。

 かと言って簡単に一族を離れる事が許されるとも思えない。

 しかし新王者のラッカが許可したとなれば文句も出ない。

 だから連れて行って欲しい。


「いいよな? ラッカ」


「アーモンがいいなら、いいわよ」


「なっ、アーモン! どうして簡単に決めるんだ」


「居場所のない辛さを知ってます。故郷を離れる辛さも知ってます」


「はぁ、そう言われると返す言葉もありませんが……」


 イドリーは自分達も狙われ追われている身だとクコへ説明してくれた。

 それでも良いし少しは体術と魔法で役に立てるとクコは言った。

 話を聞いていたピスタも賛同してくれた。

 ただ……


「こりゃ、強敵だぜ」


「そっちでも負けないわ」


 何か別の闘いが始まったらしくイドリーは苦笑していた。





ここで第三章の多民族国家ハリラタ編が終了です。

異色プロレスネタにも関わらず読み続けて下さった方々ありがとうごさいます。

大変励みになっております。

第四章はダンジョン中心の内容になる予定です、よろしくお願いします。

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