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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
多民族国家ハリラタ編
83/206

トライアングル

 残った3人が闘技場の中央に集まる。

 俺、王者アルベルト、クコだ。


「これで決めよう」


「いいだろう」


「……いい」


 無言でエルボーや水平チョップをお互い打ち合う。

 観客も声を上げず見守っている。


 バシッ!


 バシッ!


 俺が王者アルベルトを打つ。

 王者アルベルトはクコを打つ。

 クコは俺を打つトライアングル状態だ。

 繰り返される打撃音だけが響く闘技場は異様な雰囲気に包まれていく。


 シューシュー


 胸からは湯気が上がっているが誰も打撃を止めようとしない。


 バシッ!


 シューシュー


 バシッ!


 シューシュー


 何周しただろうか……

 遂に観客の誰かが声をあげた。


「もう止めて……止めてー」


 その声を、きっかけに金剛の種族スキル風車で溜め込んだエネルギーを3人共に放出した。

 クコは俺に、俺は王者アルベルトに、王者アルベルトはクコに、のはずが俺へと打撃を炸裂させた。


「くはっ!」


 やられたクコを攻撃するはずの王者アルベルトが俺を攻撃した事で俺だけ2倍のダメージだ。





「……卑怯者」


「なんだとクコ、おるぁ」


 2人が揉め始めたところで族長が信じられない事を言い出した。


「クコ、王者と協力して、そいつを倒せ」


 クコとて川の民なのだ、こちらの味方な訳じゃない。

 ありえた展開だが予期してなかった。


「おるぁ、行くぞクコ」


 迷いながらも王者アルベルトと共に攻撃してくるクコ……


「くそっ!」


 ふらふらだが負ける訳にはいかなかった。

 ウロボロスが取られるから?

 いーや、そんな事じゃない。

 俺が不甲斐ないばかりにラッカやココン、カイにまで痛い思いをさせたんだ。

 勝って終わらせる。


 ヒューマンの種族スキルクイックを発動。


「……速い」


 避ける。

 逃げる。


「おるぁ!」


 ドワーフの種族スキルガードを再発動。

 受ける。


「なぜ倒れん?」


 獣人の種族スキルレイジを発動。

 疲弊しながらも攻撃する。


「……強い」


 とにかく避けたり受けたりして合間に王者だけを攻撃した。

 そして王者アルベルトの胸から湯気が上がった。


「バカがぁ、おるぁ」


 王者アルベルトの風車エルボーが放たれた。


「エルフの種族スキル加護を発動」


 王者のエルボーは当たらないのが不思議な流れ方で俺の体を外れてクコへと炸裂した。

 クコは受け身もとれずダメージを食らいグロッキーだ。


「ばかな!」


 驚いているのは王者だけでなく丘の民達のテーブルも騒ついていた。


「回復だ! おるぁ」


 ロープ男に王者アルベルトが呼びかける。

 もはや隠すそぶりもない。

 だが……


(待ってたよ)


 残る力を振り絞ってクイックで王者アルベルトとロープ男の間に入った。

 そして回復を横取りした。


「何っ!」


「お前には王者の資格はない」


 俺は思いっきりアルベルトを殴りつけた。

 闘技場の中央で馬乗りになって気絶するまで殴り続けた。

 種族スキルでもプロレス技でも何でもない。

 ただ殴った。


 いつかの砂漠の修道院で貴族のティムガットを殴った時と似ているが違った。

 今は冷静だ、回復させない為、反則させない為に、ここでグロッキーさせる。

 それだけだ。

 そして……


「掟破りのクコ、王者アルベルト共にグロッキー脱落!」


「終わった……」


 ロープ男で回復したとは言え、それまでのダメージが大き過ぎて回復が足りてない。

 俺は殴る事に力を使い果たして、その場にぶっ倒れた。


 カンカンカン!


 意識が遠のく中で闘技終了のゴングを聞いた。



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