技の雨
「さて、俺の出番だな」
そう呟いて王者へ向かって歩き出したところでクコが片手を上げて俺の方へ向いて来た。
ここは譲るとばかりに王者は下がる。
「ふんっ!」
「……」
先ほどの王者とラッカ達と同様に俺とクコも力比べから関節の取り合い抜き合いで互いの力量を図る。
力比べは俺の勝ち。
関節の取り合いはクコが上手だったが合間で取らせてくれてる感じがした。
余裕なのか手を抜かれてるのか?
そんな事を考えつつも打撃に移行しようと体勢を立て直したところで……
「おるぁ!」
突然の王者のドロップキックがクコの背後から炸裂した。
前へ飛ばされたクコもろとも俺も吹き飛ばされ外で陣取るロープ男達に押し戻された。
クコは押し戻される反動を利用して、すぐさま向きを戻すと突進して来る王者を前から組み付いて後方へと反り投げた。
いわゆるフロントスープレックスだ。
「シャッー!」
「やーだ!」
「やだー!」
クコの投げ技を、きっかけのようにラッカ、ココン、カイが、なだれ込み乱戦模様となった。
クコVSココン、カイ。
王者VS俺、ラッカの組み合わせで進む。
ココンを後ろから組み付いて後ろへ反り投げるクコ。
「ジャーマンだな」
そのクコの腹へと背中から体全体を落としていくカイ。
「あの技はセントーンだな」
「ぶつぶつと余裕か、おるぁ」
「そうよ闘ってる最中にバカじゃないのアーモン」
王者アルベルトとラッカ2人が、そう叫びながら俺にドロップキックを放って来た。
そして挟まれる形で炸裂した。
「ツープラトン……サンドイッチ式か! くはっ」
訂正。
俺VS王者アルベルト、ラッカのようです。
そこからもう、しばらく俺、蹂躙ですよ。
王道の技オンパレードで……王者アルベルトからバックドロップ、パイルドライバー、ラッカからサソリ固め……
観衆は大盛り上がりだ。
「やーだ!」
ココンがクコに投げ飛ばされて来たお陰で逃れられた。
「むん!」
「はっ!」
俺の代わりにココンが王者アルベルトとラッカと競り合っている間に体勢を立て直した。
そして両手を広げると日本の某プロレスラーが言う感じの用意していたセリフを炸裂させた。
「技の雨が降るぞ!」
(何の反応もない……当たり前か)
俺は全身を震わせ滾らせると……仰け反った!
「イヤァオ!」
そのまま走り込んでヒザ蹴りを王者アルベルトへ炸裂させた。
「ボマイェだ」
蹴りを見舞って来たココンを逆に蹴り倒し、そのまま肩車の体勢へ担ぎ片足を極めたまま頭から落とす。
「片翼の天使だ」
パンチを見舞って来たラッカの手首を掴むと引き寄せながらラリアットを炸裂させた。
ラッカなので、ちょっと手加減したが……
「レインメーカーだ」
そのままクコと闘っているカイを振り向かせ口から、ある液体を吹き出した。
「毒霧だ」
背後から迫るクコの両腕、両手首を掴むと引き寄せながらヒザ蹴りを見舞った。
「カミゴェだ」
オーソドックスな技ばかりの川の民達が初めて見るだろう技。
日本のプロレスでも新し目だったり癖の強目だったりする技を連発してやった。
まさに技の雨だ。
(観客の反応は?)
静かだ……
やはり俺はヒールか?
と諦めかけた瞬間……
「すげー何だ今の!」
「初めて見たぞ!」
大歓声が響き渡った。
俺はレインメーカーポーズを決めた。
1プロレスファンとして至極の瞬間である。
「おるぁ! 調子に乗るなぁ」
またもや背後から王者アルベルトの攻撃。
本当に卑怯な奴だ。
吹き飛ばされた俺はロープ男のところまで飛んだ。
「痛っ!」
(あれ? 今、押し返す時に肘打ち入れられた?)
反動を利用して王者アルベルトに体当たりで吹き飛ばす。
王者もロープ男の所まで飛んだ。
(あれ? 何の光?)
ロープ男が王者アルベルトを押し返す時に光が見えた。




