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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
多民族国家ハリラタ編
73/206

カシューの決意

 丘の民エリアへの出発だ。

 魔法民族、丘の民。

 デスリエ王女の様子だと親切な雰囲気だったので安心して行けそうだ。

 が、問題が起きた。


「んぁ残るなの」


 花の民エリアにカシューが残りたいと言い出したのだ。

 ツノシャチ戦で、みんなの為に船に乗ると言い出したラパの場合とは訳が違う。

 今回は完全にカシューの意思でワガママだと分かりながらの主張だ。


「んぁイドリーごめんなさい。でも勉強したいなの」


 花の民の薬草の専門知識は正直すごい。

 薬草学と言っても過言ではないだろう。

 残りたい気持ちも分からないでもない。


「魔眼を使いたいと?」


 イドリーが真剣な眼差しでカシューに聞く。


「んぁ薬草の為なら使うなの」


「承知いたしました」


 久々に見る家臣としてのイドリーの言葉使いと佇まいであった。

 それだけカシューの魔眼が利用されてきた証拠なのだろう。

 そのカシューが自分から魔眼……過去視を使うと言い出したのはイドリーとしては嬉しい気持ちがあるのだろう。





「ではカシューちゃんと、メルカさんが残るので良いんですね?」


「はい、お世話になってばかりで申し訳ないです」


「いえいえ、こちらから、お願いしたいくらいですので安心して下さい」


 イドリーとイノウタの取引は成立した。

 男子禁制の花の民エリアではイドリーが残っても意味のない事だ。

 メルカと担当を入れ替わるのが理にかなっているのは明白。

 ただ、そうそう簡単なものではないがラパから砂漠の旅、ラパでの命がけの色々な出来事を通して互いの信頼は確固たるものへとなっていた。

 そもそもメルカは個人的にカシューを大切に思っている。


「私……行っていいのかな?」


「んぁラッカ、アーモンそばなの」


「あらあら、ここは安全ですよ」


 残るか迷った結果ラッカは背中を押されて行く事にした。

 そもそも丘の民エリアに一番行きたがっていたのはラッカだ。




 丘の民エリアまでは森を抜けるルートで普通なら歩きで1日程度だとの事だ。

 何だ近いじゃないか?

 と思ったが色々と厄介な事があるらしい。


「やーだ、わたすが案内すーる」


「やだー、わたすも案内するー」


 丘の民エリアに夫のいるココンとカイの姉妹が案内役らしい。

 二人とも膨よかなので見てるとホッコリする。


 姉のココンも妹のカイも花の民エリアでは魔法の腕が良い方との事だ。


(腕の良い魔法士が抜けるとなるとカシューとメルカが更に心配になってくるな)


 ココンの魔法属性は……


「わたすの属性は花属性」


「初めて聞きました」


 イドリーが驚いてると。


「風属性にー花びら乗せてるだけだー」


 カイが小声で教えてくれた。

 しょうもない嘘だがココンが言うと何故かホッコリしてしまう。


「それでカイの属性は?」


「わたすの属性は星属性」


「えーっと光属性だよね?」


 同じく、しょうもない嘘だが、やっぱりホッコリするのは何故だろう……


「やーだ、んだは見てるだよ」


 カイの言うところの星魔法を見せてくれるようだ。


「光の母よ瞬けライトニング改」


 ほとんどラッカのライトニングと同じだけど飛び交う光が星型になっている。


「改のところで変換してるのね」


 やばいラッカが食いついてしまった。


「やーだ、違うー星属性って言ってるだー」






「承知しました出発しましょう」


 初めて見る事務的イドリーである。

 ドーベルマン顔が無表情になっている……


 それからの道中ラッカとココンとカイは和やかに女子トークを繰り広げていた。

 ココンの旦那の背が高いだのカイの旦那の足が長いだの……

 きっと妄想だろう話を延々と……


 半日ほど進んだところで川に出た。

 霧が濃くて見えづらいが細く長い一本橋が架かっている。

 霧は、いつもの事で待っても晴れないらしい。


「やーだ、絶対に落ちないでーね」


「やだー、川の民とは仲が悪いだよー」


 ハリラタで唯一デスリエ王女を受け入れなかった民族が川の民だそうな。

 この細い一本橋だけが許されているそうで何度か大きな橋を架けたのだが翌日には落とされているんだとか……


「川の中に住んでるの?」


「やーだ、わたすも見た事ないけど、そうらしーい」


 とても深く川底には街があるのだと。

 デスリエ王女は一度その街に行ったのだが受け入れられず戻って来たと言う事だ。


「母ちゃんが合わせられないって、どんな民族だぜ」


「ピスタなら合わせられるかもな、落ちてみる?」


「アーモンと一緒なら僕、落ちてもいいぜ」


「もう、ピスタ何言ってんのよ」


 膨よかなココンとカイがコロコロと笑い、さて渡ろうとなった。

 霧の中、我々はココンを先頭に細い一本橋を慎重に渡り始めた。

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