ハニービーとタイガービー
「定期的に起こる騒動だと?」
「はい、ですが今回のような規模の大きな襲撃は初めてでしたので助かりました」
(良かった~怒られなかった)
「ただ……見ちゃいましたよね?」
「え~っと」
「見てません」
イドリー即答である。
こんなに簡単に嘘がつけるなんて大人は凄い……
「ありがとうございます」
(えっ、いいの?)
「では午後に島まで、お送りします」
助かったって言うからにはイノウタも金環の効果を把握していた。
じゃ何でイドリーの嘘に、あっさり納得するのか? 俺には意味不明だった。
「面子ですよアーモン」
「はあ」
嘘でも何でも良いのだと、見るなと言っていたものを見られたとなれば国として何かしら措置をしなければいけなくなるのだと……
「そう言うものですか?」
「そう言うものです」
勉強になった。
そもそも俺は転生しているのだから中身は実年齢より上のはずなんだが……
この手の大人の事情的な事が苦手だったので素直に、これから勉強していくとしよう。
この世界では身に付けていなければ命に関わる場合がありそうだから。
洞窟の船着場まで目隠しをしたまま連れて行かれ、そこで目隠しを外されると……
「僕も島にいて良いって言われたぜ」
ピスタが待っていた。
ピスタは花の民エリアが退屈で我慢ならないらしい。
分かる気がする。
「カシューとメルカは楽しそうだぜ、ラッカは、きっと義務感だぜ」
ラッカらしい。
カシューを守らなければと言う気持ちから花の民ノリに合わせているのだろう。
その夜にピスタから聞いた話では、やはりベジタブルラムを栽培している。
ハニービーという蜂の巣からホッピングハニーという蜂蜜も採れる。
正確には魔蜜というそうだ。
「昔は男も住んでたんだけど採り尽くしそうになったから追い出したんだぜ」
どちらも紡ぐような繊細な世話が必要で収穫量を間違えると翌年に大打撃となるそうだ。
それと、男はベジタブルラムを見ると本能的に、もぎ取らずには居られなくなる衝動に駆られるのだと。
これはベジタブルラムの形が男性の本能の何かしらに働きかけているのだろうとの事だった。
「それで男子禁制のエリアなんですね」
これでイドリーと俺の疑問は、すっきり晴れた。
「今朝の襲撃は大丈夫なの?」
「タイガービーだぜ、一度巣を落として全滅寸前まで追い込んだらしいんだけど魔蜜の質が落ちたんだぜ」
適度に襲わせる方が蜜の質がよくなるなんて……
(少ない水で育てたトマトのほうが甘い的なやつかな?)
「でもピスタさ、そんなに話して大丈夫なの?」
「だって金環で、どうせ見てたぜ?」
「見てません」
これで俺も大人の仲間入りである。




