二つの副産物
「日常の中の混成……」
「湯気なんかは水と火の混成と言えるのかな?」
「それこそ砂嵐なんて風と砂の混成そのものでは?」
「なるほど」
毎回、魔力切れで倒れる訳には、いかないので通常威力の混成魔法を考えている。
「たとえば私のランドトルネードランスは土属性魔法ですが土なり砂なりを固めた槍をそのまま回転させています」
「はい」
「アーモンは、その回転を風魔法を混成するイメージで撃てるかもしれません」
イドリーが言うのは、出来上がった魔法は同じに見えても作り方が違うと言う事らしい。
「あらあら、固有魔法はイメージが大切ですから詠唱は自分がイメージし易ければ何でも良いんですよ。それと……」
「なるほど」
固有魔法を多く作って来たメルカの助言は理解しやすくありがたかった。
そして、その助言は俺よりも別の人の理解を一層速めた。
「葉に溜まりし水滴よ日の光を浴びて暖まり湯気となり空へと昇れスチーム」
シュー
「おお~さすがデスリエ王女」
丘の民モードのデスリエ王女だ。
「これは面白いですね。次に丘の民に会ったら皆に広めましょう」
簡単な混成魔法。
これは、この世界では今まで必要のないものだったので研究が進んでいない。
魔法に特化した丘の民であれば面白がって研究が一気に進むかも知れない。
その研究を待ってる暇はないので俺は独自で開発するしかない。
「砂よ風に吹かれ巻き上がれサンドストーム」
身近でイメージし易いだろうと砂嵐を魔法化する事にして練習し始めた。
「風よ砂を撒き散らし舞わせたまえサンドスネーク」
色んな詠唱を繰り返し試し辿り着いたのはウロボロスが外れた時に見たイメージ。
二匹の蛇が砂を撒き散らしながら舞うように絡み合った光景だ。
砂嵐には、ならなかったが風に乗った砂が蛇のように、うねり攻撃する混成魔法の出来上がりだ。
「あらあら、やったわねアーモン」
「んぁ、砂漠みたいなの」
まだ威力は弱いが、とりあえず目潰しくらいには使えるだろう。
それよりも、この魔法練習は思わぬ副産物をくれたのだ。
シュルシュルシュ!
「熱っ!」
ウロボロスをイメージすると首のウロボロスが反応して周り始めたのだ。
そして明日で船を降りると言う日、遂に……
シュ、シュルルル
「くはっ!」
外れた。
あのスカルフェイスツノシャチを倒した日と同じく砂を撒き散らしながら二匹の銀色蛇が舞うように目の前で絡み合った。
そして……
木剣と同じ形の銀色の剣になったのだ。
所々、蛇の彫刻でも施されたような荘厳な剣だった。
あの日の銛ではなく剣の形だ。
もしかしてイメージした形になるのか?
「すげぇぜアーモン」
「これが首にあった銀色蛇なのか? どうやったのだ? 触っても良いか?」
ピスタが強い興味を抱くのは分かる。
意外だったのは無口だと思っていた草原の民モードのデスリエ王女は武器となると凄く喋る人だと分かった事だ。
「軽い? いや振ると適度な重みも感じる。なにより音が良い。剣はな振った時の音が大切なんだ。お前の剣は良い音で鳴く」
「はあ」
「これを見ろ! これは私の剣なんだがな……」
長い……武器の話が長い。
しかも自分の武器自慢が始まってしまった。
「じゃ僕は大槌の整備があるから行くぜ」
「あらあら私も用事が……」
「んぁ……」
皆が逃げ始めた。
「あ、じゃあ俺も……」
「まあ待てアーモン、この刃先を見ろ! これはな……」
こうして俺は草原の民モードであるデスリエ王女の気が済むまで武器の話を聞かされた。
混成魔法の練習によってウロボロスを解放するという副産物と草原モード王女の無口を解放するという副産物を得たのだった。
二つ目は得た……のか?
外せるようになるとウロボロスは首でなくても巻く事が出来るようになった。
体の色んな所へ巻いてみた結果、左手にグルグル巻くかベルトのように腹へ巻くのが座りが良かった。
しばらくは腹にベルトとして巻く事にした。




