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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
多民族国家ハリラタ編
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船上訓練

 花の民の国ハリラタ。

 中心となる街の名前も、またハリラタである。

 今では周辺民族の国も含めて多民族国家ハリラタと呼ばれており少々紛らわしい。

 ……が、それぞれの民族からすれば国の枠組みよりも民族優先で気にも止めていない。

 その中の一つの民族、谷の民の地域に一人の男が滞在していた。


「レイースもう行くのか?」


「ああ、次は山の民だ。世話になった」


「また来いよ」


「賭ける物をたくさん持ってか?」


「ハハハ、そんな事ねーよ」


 谷の民の「そんな事ない」を鵜呑(うの)みにしてはならない。

 滞在中、何度も思い知らされた。

 それでも収穫は、あった。


「さて、いよいよ山の民か」


 谷を抜け見上げた山は雲に(おお)われ全容を見せない。

 前回は母と共に来た道を今は一人で歩いている。

 ピーリーの弟でピスタの兄であるレイースは自ら選んだ道を一歩一歩と踏みしめている。






「でな、僕はレイース兄に会えるのも楽しみにしてんだ」


「あらあら、もう一人お兄さんが、いたんですね」


「レイース兄は母ちゃんに似てんだ、エルフベースだからな」


 朝の魔法訓練の休憩中の雑談……

 なぜレイースだけがハリラタに渡りピーリーやピスタはラパにいたのか?

 聞こうとしたがタイミングを逃した。

 デスリエ王女はハリラタに帰れば忙しくなる為に各種訓練に付き合えなくなる。

 船上での時間を無駄にせず成長しよう。

 それがマルテルと別れたあとに皆で決めた事だった。


「お願いします!」


 午後からは草原の民モードのデスリエ王女による木剣を用いての剣術指南だ。

 草原の民モードだと無口になるらしく。

 指導は、もっぱら指差しと鉄拳制裁だ。


 ドワーフの種族スキル、ガードを発動。

 ヒューマンの種族スキル、クイックを発動。


 前半はデスリエ王女の攻めを受けるか、()ける。

 これは説明が、あった訳ではなく初めての時に、いきなり攻められて以来そうなった。


「はっ!」


「つうっ!」


 速さも力も特段スゴい訳ではないが……受けきれないし避けきれない。

 驚いたのはイドリーすらも同じだった事。


「驚きました。私も組織内では指導的な立場だったのですが……」


 多分コツ的な何かが、あるのだろうが説明してくれないので繰り返して自分で気付くしかない。


 後半は、こちらの攻めだ。


 獣人の種族スキル、レイジを発動。

 二日目からはイドリーも発動していた。


 まず初日だが俺とラッカは同時に来いと指差しで告げられ攻撃開始となった。

 二人同時とか舐めるな! と思ったものの二人の攻撃は全て受けられた。

 いや、正確には最後だけ避けられた。

 振り向きざまに木剣を横一線に振ろうとしたラッカ。

 低く構えて真っ直ぐ踏み込んだ俺。


「うわっ!」


「いったぁ!」


「ん? 痛くない?」


「もうっ! どこ触ってんのよ」


 丁度ラッカの、お尻へ俺の顔が、ぶち当たった格好だった。

 適度なクッションのお陰で痛くなかったのに木剣で叩かれるとか……

 まあ良い、腹が立たないのはナゼだろう。


 そしてイドリーの攻撃は全て避けられていた。


 二日目はメルカと俺が一緒に避けろと指差しで告げられた。

 初日にメルカの回避能力の高さに驚いていたので足を引っ張らないように頑張ったが……


「うわっ!」


「あらあら、アーモンたら」


 ヒューマンの種族スキル、クイックで速度を上げて避けた力を上手くいなされメルカの回避を妨害する(こま)として使われてしまった。

 そして覆い被さってしまった……抱き付いた格好だ。


「もうっ! どこ触ってんのよ」


 なぜかラッカの木剣で叩かれた。

 まあ良い、今日も腹は立たない。







 三日目に我々は気がついた……


「負けず嫌いなだけなんじゃないか?」


 その時、草原の民モードのデスリエ王女はニヤリと笑った。

 そこから俺達は連携(れんけい)でデスリエ王女に一矢(いっし)報いろうとムキになった。


「今日から僕も参戦するぜ、慟哭(どうこく)も何とかなったからな」


 大槌(おおつち)を使うたびに魔力消費の多い慟哭を放出していたピスタたったが早くも放出なしで使いこなせるようになり参戦して来た。


「いきます!」


「いくぜ!」


 ピスタの大槌攻撃すら受けきるデスリエ王女。

 その隙にクイックとレイジで俺は攻撃をするが受けられる。

 なぜかダメージを与えられない……

 ラッカとピスタが同時に連続攻撃を繰り出し集中させる。

 その隙に死角へ入った俺が木剣攻撃と見せかけて蹴りを見舞う。

 が、読まれていたように受けられる。

 またしてもダメージを与えられない……


「うわっ!」


 それどころか、逆に死角へ入られて背中から押されてしまった。


「おっと! だぜ」


 見事ピスタの大槌ばりに豊かな大胸へ突っ込まされた。

 ラッカの、お尻のクッションにも負けず劣らずのクッション性だ。

 あれ? もしかしてデスリエ王女これ毎日ワザとやってます?


「もうっ! どこ触ってんのよ」


 またラッカの木剣が振り下ろされる。

 ドワーフの種族スキル、ガードを発動。

 3日連続で同じ手は喰わんのだよ。

 と、思ったらピスタが俺を守るように抱きしめてしまった。


「叩く必要ないぜ」


「何してんのよピスタ離しなさいよ」


「んん、んー」


(い、息が出来ない……でも腹は立たない)




 こんな試行錯誤を繰り返したが最後の日まで一矢報いる事は出来なかった。

 そして毎日のようにデスリエ王女誘導のラッキースケベで幕を閉じた。


「もしかして種族スキルなのかな?」


 それに気がついたのは最終日だった。

 エルフの種族スキル……加護。

 今まで使い方が分からずに封印していたスキルの一つだ。

 言ってくれれば剣術より、そっちの方が教わりたいくらいだったのに……

 それでも腹は立たないのはナゼだろう。







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― 新着の感想 ―
[一言] 今まで出てきた種族は、ヒューマン、ドワーフ、獣人、エルフ、コロポックル、魔族だけかな?でもこれだけなはずはないよね。これだけだったら、30年くらいで金眼つくれちゃうし、もっと、20種類30種…
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