表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/206

二本の鎖

 リザードキャメルの預かり所。

 閉店ギリギリに滑り込んだ8人ほどの旅人。

 珍しい事ではない……


「売却ではなく預かりですね」


「おう、取りに来るまでに元気にしとけよ」


 潰れるギリギリの使い方。

 水袋が首に巻き付けて管が付けてある。

 休ませず水分補給させた証拠だ。

 長年リザードキャメルを扱っているが滅多にない消耗具合だ。

 預かり所の主人は胸くそが悪くなるのを顔に出さないように接客をする。

 が、一瞬ドキリとした。

 得ていた情報と人相が一致したのだ。


「お前ぇは宿を調べてくれ、俺は城へ走る」


 街と鯨宴の英雄に恩を返せる時が来た。

 預かり所の主人は相棒に泊まる宿を調べさせ自らはアニキと慕う男の所へ急ぐ。

 生真面目そうなドーベルマン顔の男の元へ……






 城は厳重な入城体制を敷いている。

 子供やコロポックを排除している様子から自分のせいだとサガラッソスは悟る。

 とは言え普段は、こんな事をしていないのだろう。

 慣れない様子が見てとれる。


(背の高さなど、どうにでもなるでやんす)


(本当は長時間維持するのは辛いんでやんしょ?)


 サガラッソスは、あっさり城へ潜入していた。

 地元民との繋がりが強い城で入る為の人選に手間取ったが……


(やはり観察は大切でやんす)


(猫は自由に入れると気付く、あっしは天才でやんす)


(否、否、否、積み重ねる凡才こそ最後に笑うでやんす)


 頭の中でも一人二役で会話を続けるのは癖になっていた。

 実は潜入時の事を思い出すとサガラッソスは冷や汗ものである。


「お、見ない猫だな可愛いじゃねぇか」


「にゃんす」


「何か鳴き方おかしくねぇか?」


 走った。

 逃げる猫を門兵が追いかけず笑っていたのが幸運であった。

 猫の観察が足りなかったようである。


(にゃあんす、にゃあやんす)


 サガラッソスは現在、城の中で猫を観察している。

 積み重ねる凡才こそ……である。






「本当にいいんすか? 揉め事んなるっすよ」


「いいんだよぉ、どうせココの持ち場はキモいコロポックの、お一人様だろぉがぁ」


「むしろ、まずいと思うすよ。幻眼のサガラッソスっすよ」


「今回は向いてねぇんだよぉ、単独ってのはなぁ」


 ウルゲは自分の持ち場に対象が居ない事を確認すると即、移動した。

 前回の失敗は傭兵のせいにして乗り切った。

 とは言え、このまま顔に泥を塗られたまま黙ってられはしない。


「旨ぇ、この魚貝も旨いがパンが最高だ」


「おんや、旅の人かい? 旨いだろエブストーんとこのパンは」


「おっと、女将さんよぉパンは、いいからよぉ、聞きてぇ事があんだぁ」


 ウルゲ達は、せっかくの食事も楽しむ事なく情報収集を開始した。

 が、何を聞いてもパンの話に戻す女主人。

 他の客に話を振るも、どうにも皆そろって、よそよそしい。


「何か隠してやがんなぁ、魚貝は旨かったが、誤魔化し方は不味かったぁ」


「いや、全然、上手いこと言えてないすよウルゲの旦那」


「うるせぇ」


 鯨宴のフィナーレでカシューが、さらわれそうになった話は街中で噂になった。

 それ以来、見慣れない人間に彼ら鯨宴の英雄の話はしない。

 それがラパの暗黙の了解になっていた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ