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幻眼

 サガラッソスは思案する。

 なぜ自分の幻眼が見破られたのかと……


 小箱と鳥籠の獣人には効果があった。

 あの2人を幻惑させれば残りは子供だ。

 簡単な仕事だと考えていた。

 ウルゲが嵌められたのも奴らの準備が優っただけだろうと報告を聞いていた。


「あっしとした事が迂闊(うかつ)でやんした」


「とはいえ好機と思えたでやんす」


 各所へと散らばった鎖の手の者。

 自分の持ち場で対象を見つけた。

 潜伏もしくは、とっくに居ないかを想定していた。

 しかし対象を含むグループは目立つ行動をして街で有名になっている。

 素人だと思った。

 そこへ鯨宴のフィナーレが起きた。

 つい行動を起こしてしまった。


「なんで、いつもみたいに観察してから詰めなかったんでやんしょ?」


「紺色と赤髪の少女の打ち手を知ってれば詰めれたでやんす」


 サガラッソスは独り言……いや一人二役の会話を繰り返す。

 単独行動の寂しさを紛らわす為についた癖だ。


「仲間がいれば相談出来たでやんすよ」


(いな)! 仲間など幻眼の邪魔でやんす」


 本来コロポックは陽気で群れる種族だが単独行動でのみ真価を発揮する幻眼。

 それゆえサガラッソスは今日もまた(こじ)らせてゆく……


「寂しいのであろう? 素直になるでやんす」


「否、否、否、幻眼のサガラッソスその小さな身体ながら自らを犠牲に大義をなす孤高のコロポックこそ真の(おとこ)でやんす」


 ぶつぶつと話しながら歩く小人(こびと)族。

 すれ違う人は(いぶか)しげに見ては距離をとる。

 孤独の理由は、はたして魔眼のせいだけか?

 真実は魔眼と同じく幻である。






 アーモンは集中している。

 『込め』を見学した時に少し分かった気がしたからだ。

 スカルフェイスツノシャチとの戦闘中も『込め』を何度も試していた。

 魔力をウロボロスへ流すイメージ。

 武器が必要だと言う祈り。


 シュン


「少し回りましたか?」


 珍しくイドリーが訓練に付き合っていた。

 今回の幻惑騒動で役に立たなかった同士。

 何かしなければ落ち着かないのだった。


「はい、もう一度試してみます」


「ふんっ!」


 基本的な型を繰り返すイドリー。

 時折、獣人の種族スキルであるレイジで攻撃力を高めているようだ。


(ラッカの魔力視と金環で見れたら参考になるのにな)


 そう考えた後で頭を振る。


(だめだ、すぐラッカやピスタの魔眼を頼ろうとするのが癖になってる)


 アーモンは集中する。


 シュンシュッ


 少しずつウロボロスの回転は増えている。


「いいですね、その調子です。ふんっ!」


「はい!」


 城の前庭で頑張る2人をバルコニーから眺めているのは女性陣だ。


「あらあら、2人共かっこいい」


「そうね、一生懸命な男子はかっこいいわ」


「んぁ」


 そう言いながら自分達も魔法の練習に一生懸命取り組んでいた。


「んぁヒーリングなの」


「あらあら、詠唱をなめてるわカシュー」


 意外に指導が厳し目なメルカであった。


「さて私も繰り返すしかないな今は……走れ雷ライトニング」


 器用に一般魔法をこなせるラッカが得意属性の魔法を伸ばせずにいる。





「おめぇさん旅かい? コロポックの一人旅なんて珍しいな」


 奇跡的に話しかけられたサガラッソス。

 孤独から解放されるチャンスである。


「ええ、兄弟で鯨宴見物でやんす」


「兄弟?」


「兄者すごかったでやんすな、鯨宴は」


「弟よ同感でやんす」


「あれ、すまねぇな一人に見間違えた」


「いえいえ地元の人との触れ合い感無量でやんした、ではこれにて」


 無駄な接触は任務の(さまた)げ。

 即座に幻眼を発動し旅の兄弟を演じるサガラッソス。

 癖の一人二役も無駄ではない様だ。

 嬉しさと寂しさ両方を合わせた表情。

 演じずとも一人で二つの表情になっている事には気づかぬ小人族。


「地元民に話しかけられて喜び過ぎでやんす」


「否、本来の拙者は人気者ゆえ慣れっこでやんす」


 角を曲がると幻眼を閉じるのであった。






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