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ウロボロス

 銀色の蛇が2匹中空に止まって浮いていた。


「ウロボロス?」


「言い伝えの?」


 と、その時ウロボロスと思われる蛇がうねり始めた。

 そして砂を吐いたと思ったら廻り出してしまった。


「これじゃサンドワームと同じだよ」


「マルテルもう一度!」


 サンドワームの時と同じようにマルテルの炎眼で焼き尽くす事にした。

 同じように4人が外向きに炎で焼いていくが金属のように見えるウロボロスは一向に焼ける様子はない。




「ダメだわ」


「隙間広くなったから、そっと、(くぐ)り抜けれないかな?」


「マルテルも大丈夫そうですし、わたくしが試してみましょう」


 イドリーが降りしきる砂の中を(かが)んでウロボロスの下へ近づく。

 注意しつつ、そっと潜り抜ける。


「いける?」


「あらあら、気を付けて」


「い、いけた!」


 イドリーは何事もなくウロボロスを潜り抜けた。

 その後、カシュー、メルカ、ラッカと順番に潜り抜けていく。

 マルテルが潜り抜けようとした、その時……


「あぁあぁぁぁ」


「今かよ!」


 マルテルが魔眼暴走した。

 ウロボロスの真下で正気を失ったマルテルは暴れて炎まで撒き散らし始めてしまった。

 外へ向かって炎を撒き散らしたのでイドリー達は距離をとらざるを得ない。

 マルテルの後ろ側にいた俺が何とかするしかない。


「こらっ大人しくしろぉ」


 暴れるマルテルに俺の魔眼帯を着けてやる。


 つぅ!


 手を火傷したが何とか魔眼帯は着けてやれた。

 が、あまりの熱さで反射的に手を離した時、ウロボロスの腹に当たってしまった。


 一瞬ウロボロスが止まる。


「今だ!」


 マルテルを外へ蹴り出した。

 俺が出れば後は出口目指して一直線。

 が、再びウロボロスが動き出した。


「アーモン!」


 ラッカが心配そうに叫ぶ中ウロボロスの、うねりは大きくなる。

 さらに回転も周回も速度を上げて行く。


「だ、ダメだ、これじゃ出られない」


 閉じ込められてしまった。

 その間も砂は、どんどん撒き散らされる。

 しかもサンドワームの時と同じく円が狭まって来た。


「このままじゃ、アーモンが絞め殺されます何とかしなければ」


「でも、どうやって……」


 短剣で攻撃してみるも跳ね返されるだけ。

 種族スキルで速度を上げて走るも併走出来るだけで抜け出せはしない。

 もう、ダメかも……そう思った時に




「栄華を誇れど祈り忘れるば地のウロボロスは尾を離し天の尾を噛むべく砂降らさん。求めず捧げる祈りこそ地の尾を灯し環に戻さん祈れよ祈れ」


 ラッカが言い伝えを唱え始めた。


「アーモン! 尾を噛ませて、祈りを込めて」


「そうですね、祈りましょう」


 メルカがシスターであった事を思い出したかのように(ひざまず)く祈りのポーズを捧げるとラッカもカシューも、それに続いて跪いた。


「栄華を誇れど祈り忘れるば地のウロボロスは尾を離し天の尾を噛むべく砂降らさん。求めず捧げる祈りこそ……」


 イドリーに押さえられていたマルテルも正気を取り戻して虚ろながら後ろに跪く。

 もちろんイドリーも同じく跪いた。


「地の尾を灯し環に戻さん祈れよ祈れ」


(尾を噛ませて環に戻すんだな)




 ヒューマンの種族スキルクイックを発動

 獣人の種族スキルレイジを発動




 ウロボロスの頭に併走し頭を掴む。


 バシュン!


 手が弾かれた。

 猛烈な痛みに滴る血。


「抱き癒やしたまえヒーリング」


 メルカの治癒魔法で血は止まったがウロボロスの回転が速すぎてこのままじゃ掴もうにも手の肉が削れてしまう。


(ポイティンガーが言ってたみたいに魔力を流すんだ)




 ドワーフの種族スキル、ガードを発動




(ガードを手のひらだけに集中させて魔力を注ぐイメージ)


 上手くいかない腕全体に発動した。


「ええぃもう、どうにでもなれ!」


 もう一度ウロボロスの頭を掴んだ。

 手のひらの中で頭は回転を続けるが肉は削られずに持ちこたえている。

 替わりに魔力がガンガン削られていく。


「栄華を誇れど祈り忘れるば地のウロボロスは尾を離し天の尾を食むべく砂降らさん。求めず捧げる祈りこそ地の尾を灯し環に戻さん祈れよ祈れ」


 ラッカ達は祈り続ける。


(頼む収まってくれ、もっと力がいる、もっと強くならなきゃ、もっと、もっと)


 何時しか俺は祈るように心の中で繰り返し唱えていた。


(もっと、もっと、強く強く)


 砂の向こう側に、ほんのり光が見えた。


「尾が見えた!」


 とっくにガードが発動している左手にも魔力を注ぐ。

 クイックで移動しつつレイジで力を増幅させガードで手のひらを守る。

 魔力を吸い取るのはガードだけだが意識が飛びそうだ。


「尾を……つ、掴んだぁ!」


()ませるのよアーモン」


 ラッカの声で何とか意識を保ててる。


「栄華を誇れど祈り忘れるば地のウロボロスは尾を離し天の尾を食むべく砂降らさん。求めず捧げる祈りこそ……」


「うるぁあ!」


「地の尾を灯し環に戻さん祈れよ祈れ」


 最後の力を振り絞るあまり無意識にレイジにも魔力を注いでいた。

 そして……




 尾を噛ませたウロボロスは()に戻った。




 舞い上がった砂がパラパラと落ちてゆく。

 次第に晴れた皆の視界の先に意識を失って俺は倒れていた。











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