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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
砂漠の魔眼修道院編
33/206

蛇眼

 (さかのぼ)ること数十分前


「では、その砂の鎧の者が賊なのだな」


「はっ! そうであります」


「それで、今のところ犠牲者がゼロだと言うのか?」


「はい、殺そうと思えば殺せたはずですが、皆、砂の鎖によって拘束されておりました」


 錬成士によって(ふさ)がれた修道院長室が開放された。

 すでに何かが起きている事を感づいていた修道院長ベアトゥスは即座に行動を開始した。

 人数からして大砂嵐前に滑り込んだ大商隊が賊なのは明白だった。

 こちらに犠牲者が出ないように動いてる点から政治的な何かが香ってくる。


「見つけ次第、拘束する! お前達は絶対に(わし)の前に出るでないぞ」


「はっ!」






「3人!」


 エラトスの殲滅(せんめつ)行動は止まらない。


 エラトスがヒューマンの種族スキルを使う度に起こる魔力の起伏にアーモンは目を奪われていた。

 敵の人数が減った事からラッカはカシューの救出に向かうタイミングを計っていた。

 イドリーもカシューナ皇女の救出に向かうタイミングを計っていた。


 その時!


「双方剣を納めよ!」


 数人の衛僧達と共に駆け付けた修道院長ベアトゥスが声を張り上げた。

 意外にも先に攻撃を止めたのは賊である砂の鎧の兵士達であった。

 その様子を見てイドリー、ラッカ、アーモンも攻撃行動を止めた。

 ただ1人止まらない者……エラトスだった。


「そこの者止まれ! さもなければ容赦せぬぞ」


 ベアトゥスの警告にラッカとイドリーが告げる。


「まずいわアーモン魔眼帯を着けて!」


「こっちへ入って!」


 イドリーに引っ張られる格好で壁の影へ入った、その時……


 ピシ、ピシピシピシッ!


 聞き慣れない音が回廊(かいろう)に響き渡った。

 何が起きたのか見ずとも理解した。

 目の前の砂溜まりが石の(かたまり)へと変貌したのだから……

 今、隣にいる2人を見たらダメだ、金環の効果で2人に影響が出る。

 そう理解しアーモンは目を(つむ)り魔眼帯を着けた。




 修道院長ベアトゥスの魔眼、蛇眼(じゃがん)

 その効果は石化であった。




 賊もエラトスも見事に石化されていた。

 精巧な石像のごとく出来映えであった。


「エラトス……」


 その立場からアーモンの金環を見た者を殲滅せんとしていたエラトス。

 しかし、その表情はどこか悲しげであった。




「失礼いたします。わたくしはテーベのイドリーと申します。」


「こやつもか?」


「はい、その者もテーベでございます。石化が解けましたら、どうか慈悲を願います」


「どれだけテーベに振り回されにゃならんのだ?」


「申し訳ありません。しかし今はカシューナ皇女の救出に向かわせていただきます」


「それなら衛僧長も向かっておるはずじゃ」


 この後に用意されている事についてイドリーから頼み事をされながらアーモンとラッカはカシューの救出に向かうのだった……







「くそっ逃げ回りやがって」


 兎型獣人のメルカにとっては飛び跳ね逃げるだけならお手のものだ。

 いや、お足のものか?


 僧服を両指で摘まみ軽やかに飛び跳ねる(さま)はダンスのようにも見える。

 兎の垂れ耳ロップイヤーがフワリフワリと浮き上がるのも軽やかさに拍車をかけている。


 とはいえ、人数に囲まれれば攻撃手段の少ないメルカには、どうにもならない。

 今回は1対1だ。


「徹底的に逃げます」


 壁、天井、時には敵の背中を利用して飛び跳ねた。

 狭い回廊なのも功を奏したのだろう。


「シスターメルカ!」


「走れ雷ライトニング」


「ふん!」


 アーモンはエラトスのしたようにスキルに魔力を流そうとして出遅れた。

 その間にラッカとイドリーが砂の鎧サンドアーマーの兵を無力化してしまった。


「シスターメルカ! 大丈夫?」


「ラッカ助かりました。それにマルテルあなたのお陰です」


 マルテルも合流していた。

 マルテルが走り出してカシューを追いかけたお陰で逃げられずに済んだ。

 そんな話をしながらもカシューとフラマウを追って皆、走りだしていた。













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