大砂嵐の中へ
フラマウの目の前で剣が振り下ろされる。
もうダメだ……
そう思った、その時!
真っ二つにされたのは……剣
そう、折られたのは……砂の剣
振り下ろされた鎌型の剣ケペシュに、よって敵兵の剣は砕かれた。
「投降しろ」
「あ、あぁ、分かった。殺さないでくれ」
そう言って砂の鎧サンドアーマーの敵兵は跪いて手を挙げた。
「衛僧長?」
「そうだ。大丈夫か? 血が出過ぎてんじゃねぇか」
「んぁ、フラマウ」
ポイティンガーの、その肩にはカシューが担がれていた。
「カシューナ……カシュー大丈夫ですか?」
「んぁ、大丈夫それよりフラマウ血……」
「敵は? 敵はどうしたのですか?」
「あぁ今のと同じだ、投降したんでな、衛僧らが拘束してらぁ」
そう話している間に衛僧が2人駆けつけて拘束が済んだ事を報告した。
「こいつも拘束しとけ、それと回復魔法使えねぇか?」
衛僧へポイティンガーが聞くが……
「すいません……」
「しゃぁねえな、あんま得意じゃねぇんだが」
そう言うとポイティンガーは慣れない回復魔法でフラマウの背中の傷を癒やしにかかった。
「あ、ありがとうございます」
回復までは出来ず血が止まる程度の効果であった。
それでも少しずつ意識がしっかりし始めると……
「メルカが! この先でメルカが戦っています。お願い! 助けに行って下さい」
自分が回復されるより先にメルカの救出を要請すべきだった。
朦朧としてたとは言え、何をしてるんだとフラマウは自分を責めた。
「あぁ、それなら、もう心配ねぇみてぇだな」
「この地に宿りし神々よ弱りし子は汝の子なり抱き癒やしたまえヒーリング」
「メルカ……」
修道院内で、ここまでの丁寧な詠唱をするメルカの治癒魔法を見る事は中々ない。
それだけフラマウの傷が酷かった事が伺える。
「カシューちゃん大丈夫?」
「ポイティンガー?」
「はぁはぁ、どうなってんの?」
ラッカ、アーモン、マルテルそれぞれが駆けつけるが全体の状況が掴めている者は誰もいない。
「状況の確認をしつつ移動していただきたい、用意してる事があります」
イドリーの言葉に
(また移動しながらかよ)
そう思いつつも移動を開始する面々であった。
そこにエラトスの姿はない……
カシューを、さらって逃げていた敵兵2人はポイティンガーが無力化し拘束した。
メルカと戦っていた敵兵は駆け付けたイドリー達が倒した。
ちなみにメルカは兎型獣人の特性を活かして飛び跳ね逃げ回って時間を稼いでいたらしい。
イドリー達が向き合っていた敵兵、エラトスが全滅させんとしていた敵兵との攻防は……
修道院長ベアトゥスの登場により収束した。
その際にベアトゥスと揉めたエラトスは先に進めなくなってしまった。
そこまで話したところで逆の回廊から廻って来たウルゲと数人の敵に見つかってしまった。
「くそがぁ、取り戻されてるじゃねぇかぁ」
そう叫ぶと先程の弱い風魔法ではない強力な風魔法を放って来た。
「外へ出ます! 向かいの建屋へ行きます皆さん離れず掴まって! アーモン、ラッカさっき、お願いした手はずで頼みます」
そう言うとイドリーは真横の壁を魔法でぶち抜いた。
一気に吹き込む砂の風
猛烈な風の音と打ち付ける砂に一瞬引き返したくなるが進むしかない。
すでに魔眼帯を着け直していたアーモンが先導する形で皆、掴まりながら移動する。
「忌々しいぃ! 風の膜ウインドベール」
ウルゲは用意なく突然の砂嵐に吹かれ手間取ったものの風魔法で周りに障壁を展開する。
「走れ雷ライトニング」
後方から遅れて追ってくるウルゲ達をラッカが魔法で迎撃する。
飛ばされそうになるカシューをポイティンガーが、しっかり掴んでいる。
イドリー、メルカの範囲防御魔法の効果も相まって何とか隣の建屋へたどり着く事が出来た。
「準備は出来ていますか?」
「はい出来ております」
そこには2名の小人族コロポックと1名の獣人2名のヒューマンが居た。
「行って下さい」
入れ替わるように彼らは砂嵐の中へ出て行ってしまった。




