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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
砂漠の魔眼修道院編
29/206

考える強さと考えない強さ

(出るしかない)


 分かっているのに足が出ない。


(怖い……魔法だけなら怖くないのに)


 ラッカは迷っていた。

 旧都で接近戦に魔法を交えた短剣の訓練はしたはず。


 目の前で起きている男達の実戦。

 剣と剣、剣と槍の刃が削りあう……


 音に!


 気迫に!


 気圧されていた。


(アーモンは、アーモンは戦ってるのに、私だって)


 宿舎でのラッカの交戦にアーモンが感じた不甲斐なさ。

 同じ感情をラッカは抱いていた。






 ズザァ


 足元の砂で体勢を崩したアーモン。


「つぅ!」


 風魔法の攻撃ウインドアローを、さらに浴びてしまう。


「アーモン!」


 エラトスの心配する声に目で答える。

 大丈夫だと。

 エラトスとイドリーは自分より多くの敵を相手にしている。

 それなのに心配されるのが歯痒かった。


 普段なら回廊の明かり取りとして開いている開口部。

 そこに大砂嵐対策で()められた木戸の隙間から吹き込んだ砂。


 押されていると、そんな砂まで敵に有利に働いてるように感じてしまう。


(いや、敵の足元にだって砂はあるんだ)


 考える、戦う、考える、(しの)ぐ。


(ラッカなら、ここで魔法を織り交ぜて砂を利用出来るのか?)


 足りない、足りない、力も、魔法も、手段も。


(迷ってても始まらない、やるんだ!)


 戦いつつも、魔力の流れを意識する。

 ラッカが旧都で、やってたみたいに攻撃の間に撃つ!


(くそ、上手くいかない、いや、まだだ、もう一回やるんだ)


 剣を短剣で凌いで魔力を意識する。

 突きを避けても意識を切らさない。


(集めろ、集めろ、指に、いや掌でいい、集めて……)


「炎の弾ファイヤボール」


「なにっ!」


 ファイヤボールとウォーターボールが同時に出た。

 敵は驚いたものの当たる事なく切り込んで来る。






 何をやりたいのか?

 どう戦いたいのか?

 ラッカには分かった。

 アーモンの気持ちが考えが……

 それは本当は自分のやるべき事だ。


 一度、大きく息を吸って吐き出す。

 もう考えるのを止めた。




「出ます」




 もう迷いは、なかった。


「ダメです! ラッカ」


 フラマウの声を聞き流しつつ短剣を抜く。


 キンッ!


 当たり前のように押し負ける。


(いいんだ、分かってる)


 素直に押され、下がりつつ敵へ!


「走れ雷ライトニング」


 この距離からなら味方に当てず魔法が放てる。

 その隙にエラトス、イドリー、アーモンが前に斬り込む。


「風の矢ウインドアロー」


 敵の魔法も追撃の手を緩めない。



 


 ラッカが入って戦いやすくなった。

 それでも風魔法は厄介だ。

 敵はラッカの雷撃を受ける度に受け身にはなる

 それでも剣や鎧で、ある程度は防がれている。

 こちらは風魔法で削られてゆく。


(まだだ何か、ないか?)


 考えるんだ、よく見るんだ……


 よく見る?


 そうだ!


「ラッカ魔眼帯を外してくれ」


 そう言うと俺も魔眼帯を外した。


「わかったわ」


 艶のない薄い緑の魔力色。


 薄緑の矢が見える。


 ラッカの山吹色の瞳が輝く。

 俺の瞳も輪の部分が光を帯びているのだろう。

 ラッカの魔力視と俺の金環だ。


「これは、魔力視?」


 金環の効果でエラトスやイドリーにも魔力視が働き2人は驚いていた。


「何をしてる。付けなさい!」


「いやです」


「何の為に、これまで……」


「どの道いつかは、来る事でしょう!」


 アーモン担当のエラトスは焦っていた。

 この場にいる者に金色の輪の瞳を、金環を見られたからだ。


「それに既に知られたから、こうなってるかも知れないんでしょうがぁ」




 アーモンの金環とラッカの魔力視で戦闘は互角になった。

 いや有利に傾いて来た。


「1人残らず始末します」


 エラトスの速度が瞬時に上がる。


 ヒューマンの種族スキルを使ったのだろうが……

 アーモンには不可解な点があった。


 エラトスの纏う魔力が跳ね上がったように見えた。


「1人!」


 格段に上がった速度で敵を無力化し叫ぶエラトス。


「それでは後が続きませんよ」


 イドリーも事態は把握していた。

 随分前にテーベ内部で噂を聞いた事があった。

 死産した子の瞳に金色の輪があったと……

 目の前の男の子が、その子なのか?

 いや、そうなのだろう。


 エラトスは後の事を考えずに魔力を大量消費する様なバカではない。

 この無茶が真実を物語っていた。

 だが……


「それでは倒せても魔力切れを起こします」








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