完全武装
作品タイトルをシンプルな「金環」だけから「なろう」らしい雰囲気に変更しました。よろしくお願いします。
剣、槍、盾、兜、鎧、修道院内にあるはずのない装備で完全武装した集団に囲まれた。
油断も、あったのは確かだ……
「んぐ……」
もう一刻もすれば交代となる早朝、夜番の衛僧が少しホッとしてしまう時間である。
突然完全武装の集団に捕らわれ声すらあげれず為すすべがなく衛僧は拘束された。
「な、何者っ、んぐ……」
朝交代の衛僧ですら寝起きを襲われ、どこから持ってきたのか鎖で簡単に拘束されて猿ぐつわで口を塞がれてしまった。
「……」
声を発さず身振り手振りで指示を出すリーダー格。
「……」
同じく声を発さず動きで答える兵達。
それでなくとも大砂嵐の風と打ちつける砂の音が雑音となり僅かな足音や動作音すら消してしまう。
シスターや神父の魔法レベルが高くとも音もなく近づく完全武装の兵に近距離で襲われては、どうしようもない。
次々に拘束されてゆくシスターや神父達。
ほとんどの修道士達は寝ており気付いてすらいない……
それでも即座に魔眼を発動し対応する衛僧もいた。
賊の1人の腕が氷漬けになった。
「……」
普通であれば痛みと冷たさで声をあげるはず。
それを一言も発さずに即座に人数でかかって魔眼持ちの衛僧を拘束した。
あきらかに訓練された兵である。
それ以降も魔眼での抵抗を試みる衛僧が何人かは、いたが盾や兜、鎧に阻まれる事が大半であった。
何より寝起きや油断した状態の1人に対して武装集団で当たられては魔眼持ちといえど、どうする事も出来は、しなかった。
魔眼修道士男子宿舎
「起きるんだアーモン」
呼ばれて目を覚ますとエラトスさんの声だった。
いつもと違う緊張した雰囲気で……魔眼帯の下からでも薄い光の線で見えたのは、その手に剣を持っていた事だ。
ヒューマンのスキルクイックを発動
一瞬で距離を取れたのは旧都での実戦経験のお陰か!?
「離れなさい!」
シスターフラマウの火魔法がエラトスを襲う。
魔眼修道士女子宿舎
「起きてくださいカシュー様」
「んぁ」
商隊の隊長イドリーだった。その手には短槍が握られていた。
「離れて下さい」
シスターメルカは杖を構えて言った……その時
「走れ雷ライトニング!」
ラッカの雷魔法がイドリーを襲う。
そろそろ動き始める汲み上げ井戸から現れたのはケペシュと呼ばれる鎌形の剣を携えたポイティンガーである。
「定時連絡が来ねぇ日がくるたぁな」
普段、旧都に入る時でさえ適当な短剣を持つ程度で、ほぼ素手で魔物を相手にしているポイティンガーの腰にケペシュが提げられている。
砂漠の民に古くから伝わるその鎌形の剣はラマーニ修道院の衛僧長に代々伝わる物で、いわゆる魔剣の一種だ。
(おっと……)
完全武装の集団を発見したポイティンガーは一旦姿を隠す。




