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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
砂漠の魔眼修道院編
22/206

大砂嵐

 強風に砂が舞い上げられ一晩で木戸すら開けられなくなる程、修道院内にも砂が積もる嵐それが大砂嵐である。

 一年に一度訪れ、ウロボロスの()み直しとも呼ばれるその嵐は昔から砂漠の民の悩みの種だった。

 それでも巨大になった修道院では準備をしっかり行い毎日協力して出来る範囲の外部作業を行う事で砂に埋もれず嵐をやり過ごす(すべ)を確立していた。

 大砂嵐といえど一日中強風が吹き荒れる訳ではなく時折、風が弱まる時間があり、その時間を逃さずに外部作業を行っている。




 大砂嵐のせいで太陽の光が届かない。

 いや、届いたところで明かり取りの窓は木戸で塞いでいる。

 修道院の中は暗闇に覆われていた。

 魔眼修道士にとっては普段と変わりないが一般修道士にとっては歩くのも大変だ。


「満月の抱擁ムーンライト」


「太陽の喝采サンライト」


 あちらこちらで灯り魔法が唱えられる。

 杖や掌の中に大切に灯りを携え歩く様は幻想的で何やら宗教儀式のようにも見えるが変な者を召喚したりする訳ではない。


 魔法の苦手な修道士が灯り魔法に失敗してネオンのようにピカピカと明滅してしまう事がある。

 その場合は泣き顔でシスターに解除をお願いしに走るのだが大砂嵐の流れ星と呼ばれ風物詩の一つになっている。







 各出入り口に衛僧が立つのは今までの大砂嵐には、なかった措置だ。


「何かピリピリしてんな」


「気のせいかも知れないけど、いつも誰かに見られてる様な気がするのよね」


 本来の大砂嵐は日課や週課が(ゆる)くなり読書の時間など自由時間が増えるので若い修道士達の緊張感が緩む期間だが……


「パンは、いつも通り美味しいよ」


「んぁ」


 いつもの大砂嵐との雰囲気の違いに戸惑いを隠せないアーモン、ラッカ、カシュー……と、いつも通りのマルテルであった。







 希少金属で作られた二匹の絡み合ったウロボロスの装飾が普段の色に戻り始めた天気計を見つめるのは修道院長室に集まる面々だ。



「昨日も外部作業を買って出てくれるなど献身的な姿勢は変わりません」


 各商隊を監視していた衛僧達は既に疑いの目を緩めつつある様だ。

 それだけ大砂嵐中の外部作業はキツく厄介な作業なのだ。



「大砂嵐も3日目、何か起こるなら既に起きておるかのぉ。ただの取り越し苦労じゃったか?」


 少しホッとしつつ修道院長のベアトゥスは鼻眼鏡を押し上げる。



「入壁の際、武器を持っていない事も確認しておりますし魔法であれば衛僧やシスターも腕利きが揃っております」


「衛僧には魔眼を使える者もおりますし、いざとなれば修道院長一人でも押さえられるかと……」


「確かにのぉ」


 神父長も元々修道院の魔法レベルの高さは誇れる程であり魔眼持ちも多く武器さえ内部へ持ち込まれなければ何か起きても対処可能と考えていた。


 そもそも、だからこそ魔眼の子らを預かる程の修道院となったのだ。

 高い壁に囲まれ入壁に厳しい検閲もある。

 一部では下手な国よりも攻めづらいと噂される施設。

 それがラマーニ修道院なのである。



 もう一度ウロボロスを見つめベアトゥスは呟く。


「もう2日ほどかのぉ……」


 ベアトゥス達の心配が的中し安心が裏切られたのは翌朝の早朝の事だった。




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