砂漠の修道院
黒の僧服にフードの付いた黒いマント。
揃いの修道服を纏った人々が行き交うのは、広大な砂漠の真ん中にある巨大な修道院。
通称、魔眼修道院。
幼い頃に魔眼が発動してしまい家族や村の手に負えず預けられた子供達が暮らす為その名で呼ばれる様になったが正式にはラマーニ修道院と言う。
周囲を石造りの高い外壁で囲まれた巨大な修道院。
その巨大さは、もはや一つの街であり、多くの修道士が暮らしている。
大半は魔眼持ちではない敬虔な一般修道士である。
人数は多くないが、その修道士の中で一際、存在感を放つのは魔眼帯と呼ばれる黒い布製の魔道具で目を覆った一団。
魔眼修道士達だ。
「アーモン知らない?」
「また、いないの?」
「もー、きっとどこかの塔のてっぺんだわ。まったく」
魔眼修道士の少女ヒューマンベースのシャッフルであるラッカ。
日課をサボって居なくなったアーモンを、いつもの様に探して怒っていた。
「やっぱりー見つけた!」
頬を膨らませつつも、どこか嬉しそうなラッカ。
「サボってるとこ下級生に見られたら示しがつかないよ」
魔眼修道院では9歳までを下級生、成人となる15歳の手前、14歳までを上級生としている。
現在アーモンとラッカは12歳。上級生である。
「また魔眼帯を勝手に外してるんでしょ、シスターに怒られるよ」
塔のてっぺんで心地よい風に藍色の髪を揺らしながら言うラッカ。
寝転がったままのアーモンは面倒そうに金環の片目を開けてラッカをチラッと見て思う。
(俺は魔眼でもねーのに、こんなの一日中着けてられっかよ)
瞳を囲む金色の輪、金環を隠す為に魔眼修道院へ幼くして入ったアーモン。
だが実際は魔眼を発現した訳ではない。
「て言うか、何で外せるのよ?」
魔眼帯を着けているので見えないのだが、ラッカはアーモンを覗き込む様に首を傾げた。
その可愛らしい仕草に頬を染めつつアーモンは言う。
「コツがあんだよ、こーやって……」
その時、塔の出口付近に一つの人影があった……