炎上
近々、もう一度だけ作品タイトルを変更する予定です。
さすがに今回で最期にしたいと思っています。
また、混血の表現ミックスに差別的意味が含まれるとの指摘を頂いたので今後シャッフルに変更予定です。
しかしながら相当数含まれる事から完結後に取り掛かる事、時間を要す事をご了承下さい。
「マテオ!」
「あ、ラッカさん」
「……ペカン」
「クコ、今の内に逃げるよー、です」
塔の入口で追手を迎え撃っていたマテオ達だがラッカ達が駆け付けた時には……
「どうなってんの? これ」
「最初に何人か修道士が来たぁね」
「揉みくちゃよー、です」
ポイテインガーにより石化を解かれた修道士が修道院長室のある塔へ急いで向かう途中で交戦状態となった様である。
「もっと呼んで来るんだ」
「くそ、これじゃ商隊の様子が見に行けぬ」
交戦状態となっているのは修道士だけでなく仲間の様子を見に移動し始めた商人もいるようだ。
「と、とにかく行きましょう」
「そうね、この隙に大聖堂へ向かいましょ」
混乱を利用してマテオ達とラッカ達は合流しアーモン達の元へと向かう。
「そこ左に曲がって」
「こんな回廊だらけの建物よう分からぁね」
「……何か……人多い」
「あ、広そうよー、です」
皇帝が寝ている内に制圧するべき、そう考えたラッカがマテオ達を連れて大聖堂に辿り着いたのだが……
「ヘーゼル!」
大聖堂の入口付近……目の前にヘーゼルが落ちて来たのだ。
「しつこい魔族だ」
「おいおいおい大丈夫かヘーゼルたん! 小僧お前ぇ許さねぇかんな」
大聖堂の天井に現れた皇帝シュメー、真っ先に向かったのがヘーゼルだった。
蝙蝠状の翼を広げ一気にシュメーへ闇の爪ダークネスネイルで攻撃したが逆に返り討ちに合ってしまっていた。
「ふふ、リフレクトアイか……便利なモノだな」
魔眼『朝日』で浮上し『夕日』で下降補正し上空で静止。
『リフレクトアイ』でヘーゼルの魔力攻撃ダークネスネイルを反射。
減少した魔力を舌に出現した元々はヘーゼルの魔眼『吸眼』で補充。
自らの魔眼『奪眼』で奪ったばかりだというのにシュメーは数々の魔眼を、いとも容易く使いこなしてみせた。
「アーモン! 良かったカシュー会いたかった」
「んぁ、ラッカなの」
「ラッカ……カシューを頼む」
こんなに怒ったアーモンを見るのは初めてだ。
アーモンはラッカですら気圧される様な怒気を纏っていた。
それでも、ただ単に怒っているだけじゃない。
『魔環』を失い魔力が見えなくてもラッカには分かった。
(アーモン悲しそう)
「うん、任せて」
何時でもアーモンを助けて来た。
どんな時も見逃さず助けたい。
それが出来るのは自分だけだと信じて、その都度、最適な選択と判断をして来たラッカだったが今は……
(送り出すしか出来ない)
いつの間にか大きくなった背中を黙って見送るしかなかった。
「シュメー!」
「友よ、よくも余を辱めたな……ふむ、お仕置きせねばなるまいな」
そう言うとシュメーは大聖堂を見回した。
「ふふ、良い事を思い付いた! お前の1番嫌がる事をしてやろう」
「もう止めろ、こんな事して何になる!」
アーモンの言葉が聞こえているのか? 聞く耳を持たないのか反応を返さぬままシュメーは動いた。
「炎眼」
「うがぁ」
イドリーが一瞬で炎に包まれたのだ。
「イドリー! シュメー貴様ぁ」
ホースステップで駆け上がるアーモンだが……
「炎眼」
「うがぁ」
今度はマテオが炎上した。
「ヒールよー、です」
仲間の負傷に心が乱れる。
それでもペカンのヒール、イドリーへはメルカがヒールしている。
その光景を横目にホースステップで皇帝シュメーへ、とにかく辿り着く為に空中の歩みを止めないアーモンであった。
ヴゥヴゥゥゥン
目の前に無数の蜂が邪魔をする。
白眼の老人ティワナクがイドリーの負傷によって自由になったのだが……
「ふふ、良い良いティワナクよ、いや皆の者も動くでない炎眼の狙いが狂う、そうだ動いた者から焼いてやろう」
そう言ってニヤリと笑う皇帝の顔には狂喜の色が浮かんでいた。




