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再びの喪失

「小娘がぁ」


「なによ!」


 アーモンとヘーゼルがシュメーを殴った事が口火を切ったかのように戦いが始まった。

 ヘーゼルは魅了のマヤと……




「あなたの相手は、わたくしです」


 イドリーは白眼の老人ティワナクと……




「お前らぁ、絶対に後悔するからなぁ」


「おいおいおいソイビー、ヘーゼルたんオイラの事を忘れてね? なあなあ」


「はあ、今は忙しいのじゃ、少し黙っとれ」


 イーズとべハイムはウルゲと……




「ボクお前の事、覚えてるぜ」


「否、否、否あっしの事など誰も覚えてはござらん」


 ピスタは幻眼のサガラッソスと……




「少し多ござるが、空中は某が受け持ち申す」


 片翼の獣人が空中から仕掛ける攻撃は戦闘将ヘレフォーが……




「ふむ、しでかした事の大きさが分かる様に躾をしてやろう」


「こっちのセリフだ」


 アーモンはテーベの鎖代表、片眼鏡のカルタゴと対峙していた。



 殴り飛ばした皇帝シュメーは気を失っていた。

 奪眼で多くの魔眼を奪い大きなチカラを得たとは言え元々は戦士でもなければ魔力量も普通の男だ。

 ここまで数々の修羅場を潜りヒューマンの種族スキルであるクイックも高めて来たアーモンの攻撃と魔族のヘーゼルから怒りを込めた一撃を不意に喰らえば、そうなっても不思議ではないだろう。


「スカラ、カラル」


 片眼鏡のカルタゴが目線すら逸らさずに呟くと片翼の女獣人スカラとカラルが皇帝シュメーを一瞬で救出した。


「ちっ、この数じゃ仕方ないか!」


「ふむ、では躾を始めよう」


 全身を白色の上質な服で固めたカルタゴは、そう言うと胸に付いていた、これまた白色の光沢ある勲章の様なモノを外した。

 すると、その勲章の様なモノは見る間に大きな杖へと姿を変えカルタゴの目の前に浮いていた。


 無骨。


 それが、その杖の印象だ。

 老木の根を、そのまま杖にしたかの様な姿は上質の身なりのカルタゴと対照的な無骨さでありながらも老獪さを感じさせる点では一致しているだろう。


「ウロボロス剣モード」


 対するアーモンはウロボロスに祈りと魔力を込める。

 砂を撒き散らしながら絡まり合う2匹のウロボロスは荘厳な剣となってアーモンの目の前に浮遊する。

 そのウロボロスを掴んだと同時に!


「クイック!」


 先手必勝。

 一瞬でカルタゴの目の前に詰めたアーモン。


「レイジ!」


 迷いなく振り抜いたウロボロスの剣。

 確かな手応えは……


「なっ!」


「地の精霊よ感謝を与えん」


 カルタゴの前には地面からカルタゴと全く同じ姿形の土人形が創り出されていた。

 不思議なのは詠唱よりも前に現象が起きていた事。

 無詠唱? 声消し? いや後詠唱とでも呼ぶべきだろうか?

 カルタゴは起きた事象に対して精霊へと感謝を述べるだけだ。

 斬り伏せたつもりの手応えは土人形を斬ったモノだった。


「ふむ、思ったより斬れるか」


「まだだ、うらぁ」


 土人形を斬った勢いそのままに回転しながら再度カルタゴへ斬りかかるアーモン。

 今度も確かな手応えだが!


「火の精霊に感謝を与えん」


「くそっ!」


 先程とは違い土人形にウロボロスの剣が食い込んだまま抜けなくなっていた。


「ふむ、その土人形は、もはや土ではない。鉄人形となっておる」


「土属性だけじゃないって事か!」


 仕方なくウロボロスから手を離しカルタゴから距離をとったアーモンにイドリーが遠くから叫ぶ。


「アーモン、カルタゴは大魔導士だ! 多属性魔法を組み合わせるぞ」


「なんて厄介な!」


 カルタゴは浮いたままの無骨な杖を操るように手をかざすと……


「水の精霊に感謝を与えん」


 見る間に鉄人形は氷結。


「風の精霊に感謝を与えん」


 そして風で切られるように氷結人形は砕け散った。




 ウロボロスごと砕け散ったのだ。




「そんな……くそっ」


 シュメーに魔眼『金環』を奪われ唯一の武器ウロボロスをも失った。

 それはカルタゴと始まったばかりの戦い序盤で、まさかの出来事だった。


 これまで磨いて来た戦闘の手段。

 その大きな柱を失った。

 その事実を受け入れる事すら出来ぬままに……


「土の精霊に感謝を与えん」


「うがぁ」


 次々と地面から突き出て来る石柱に体を打たれ、遂には……


「アーモン!」


「ダーリン!」


「おいおいおい」


 磔にされてしまっていた。

 大聖堂の中央に高く高く磔にされたアーモン。

 その目の前にカルタゴの無骨な杖が音もなく、ゆっくりと迫りピタリと静止した。


「ふむ、あっけない事だ」


「くそっ!」


「光の精霊に感謝を与えん」


「うがぁあぁぁ!」


 磔にされたまま四方八方からの雷撃。

 それは躾と呼ぶには酷過ぎる……もはや蹂躪であった。


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