それぞれの魔眼
突然、魔眼帯を外されて驚いたのか、いつもは魔眼帯の下でも目を瞑っているカシューだが目を見開いていた。
「んぁ」
金色の輝く様な瞳だった。
と、その時、ツイストサンドワームの周りの砂が、みるみるうちに減って行き豪華で煌びやかな宮殿が現れた。
と同時に何人もの人々が、どこからともなく現れた。
男性も女性も金の装飾で彩られた上質な布で作られた衣服を纏っていた。
人々は宮殿の外へ張り出したバルコニーの様な場所から優雅に何かを眺めていた。
下を見下ろすと闘技場の様な場所で奴隷のような人と2匹のサンドワームが闘わされていた。
「……」
音は聞こえず無音映画の様な光景
重そうな足枷を着けられ明らかに分が悪い闘いでドンドン弱っていく奴隷のような戦士のような人。
持っている武器も粗末なものだ。
見ているだけで気分が悪くなって来るが傷つけば傷つくほどに人々は喜び歓声をあげていた。
(狂気だ、反吐が出そうだ)
そこで全てが暗転していった……
目を覚ますとポイティンガーの僧窟だった。
「おぅ、起きたか?」
「えぇ、どうなったんですか?」
あのまま、あの場所で眠っていたらしい。
ポイティンガーは数秒で目が覚めて一人ずつ運んでいる途中でラッカが目を覚まして自分で歩いて戻ったそうだ。
「アーモン寝過ぎ」
ラッカに言われ見回すと既にカシューも目を覚ましていた。
とすると、あの光景は俺のせいなのか?
「んぁ、ごめんなさい」
消え入りそうな小さな声で謝るカシューを遮ってポイティンガーとラッカが説明してくれた。
「過去視らしいのよカシューちゃんの魔眼」
「おめぇが外しちまうから発動しちまったんだな」
「じゃ、あ、逆にゴメン! カシュー勝手に外して」
「いーの、いつもは一人……初めて、みんなで……嬉しかった」
過去視はカシューの魔眼だとして、どうしてみんなに同じ過去の光景が見えたのか?
ラッカの魔眼か? と思ったが
「姉ちゃんのは魔力視だとよ。おめぇの魔眼は、どうなんだ?」
「お、俺は……」
言えない。
言えば魔眼でない俺が魔眼修道院にいる事の矛盾を説明しなければ、ならなくなる。
「おめぇのは共有する様な魔眼だろぉな間違いねぇ」
答えれずにいると……
「試してみりゃあ速え」
ポイティンガーに言われてラッカと俺が魔眼帯を再び外す。
カシューの周りには柔らかなピンクの光が、ラッカの周りにはビリビリとした黄色い光が、ポイティンガーは土色の光で覆われていた。
「オーラ?」
「何よそれ? 魔力が見えてるのよ」
「あぁ間違いねぇ俺にも見える。それが、おめぇの魔眼の力だ」
「はぁ」
(俺、魔眼だったんだな……でもこれ自分一人じゃ役に立たなくない?)
自分の魔眼の能力を俺が知らなかった事に呆れたラッカに色々言われながらの帰り道はフワフワして夢でも見てるようだった。
(それより何か重要な事を忘れてる様な……)




