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魔眼の子 〜金環のアーモン〜  作者: きょうけんたま
砂漠の魔眼修道院編
18/206

ツイストサンドワーム

 進める道の横には大抵水路があった。

 この水路のお陰で砂に埋もれず空洞になっているのだと旧都の事が分かり始めていた。

 水路から離れた部屋というか建物は砂が詰まって入れなかった。

 


 そこそこの時間を掛けて目的の場所まで辿(たど)り着いた。

 これでも今日まで時間を掛けて魔物を狩ったり、砂を移動させたり準備をしたから、その程度で済んでいる。


「よし、この先だ」


「はい」


「んぁ」


 巨大なダブルスコーピオが大量にいたせいで進めなかった大きな空洞の前まで来ていた。

 三つ子のマミーで経験を積んだ後、そのダブルスコーピオを倒しまくった。


 ダブルスコーピオは毒針の尾を警戒しすぎるよりも前のハサミの手に気をつけろと教えられていた。

 二本の毒針で威嚇(いかく)するものの本当に刺すのはハサミで獲物を捕まえた時だけだからだ。

 それが分かれば怖がって離れていた距離も詰める事が出来た。

 最初は連携していたが最後には一人でも倒す事が出来る様になっていた。

 ま、ボス格はポイティンガーが倒したんだけど……


「鍛えられたから何が来ても大丈夫よ」


「だな何でも来やがれだ」


 そんな日々を過ごした俺とラッカは相当、経験値を積んでいた。

 ラッカは魔眼訓練の度に魔眼暴走を起こす様になり、シスターメルカの診察を何度も受けさせられていた。

 ま、天然のシスターメルカなので余裕でごまかせていたが……




「こいつはスゲーな、王宮か何かだろうな」


「修道院の第一聖堂に似てますね」


 砂に埋もれかけた今までで一番広い空洞。

 とても高い天井がドーム状になっている事が魔眼帯を着けていても把握出来た。

 きっと天井絵か何か描かれているのだろう。

 魔眼帯を外そうか迷っていると……


「何かいるな……」


 中央近くまで進んで来た所で、こんもりと盛り上がった砂の山を見てポイティンガーは呟いた。

 いつも大声で話すポイティンガーが小声で呟いたので驚いた。


「眠ってるか死んでるか分からんが、今、動かねえって事は手出ししなけりゃ問題なさそうだ。今日のところは素通りして奥の状態を確認する」


(何か急に軍隊ぽくなったな)


「そーっと行けば良いんですね」


 音を立てないように、なるべく中央から離れて慎重に進んだ。


「思った通りだな」


「何ですか、この奥の道?」


「砂漠の外れに枯れ井戸があってな、そこにも横穴があるんだ、きっとそこに繋がってるはずだ」


 ポイティンガーは随分前に逆から入った事があるらしく、同じ様に巨大なダブルスコーピオが大量にいて戻ったそうだ。


「今日のところは、これで充分な成果だ、戻るぞ」


「はい」


 少し拍子抜けしたが中央の砂の山の大きさを見れば動き出せばヤバそうな事は誰が見ても明らかだった。

 素直に帰る事にして元来た道を進んでいた。

 その時!


「んぁ」




 カシューが転けた……




 ザッザザァ 


 ズッズズゥ


 大きな山が動き出し砂が崩れ始めた……


「走れ」


 ポイティンガーは一瞬でカシューを抱えて俺とラッカを引っ張った。

 中央の山から崩れる砂で足がとられる。

 それでも構わず走った。


 ポイティンガーの様子が、まともじゃない事を告げていた。

 ふざけた態度しか知らないポイティンガーが真剣な様子だったので俺もラッカも魔眼帯を外して走った。


「やだ、気持ち悪い! 何あれ」


 ラッカが悲鳴にも似た声をあげた。


「サンドワームだ、でか過ぎる」


 さすがのポイティンガーも唸る。

 姿を現した巨大な物体はサンドワームだった。

 蛇が鎌首を持ち上げる様に上体を起こしたサンドワーム……

 とても大きいと思ったが大きいはずだ二匹のサンドワームが絡まる様に(ねじ)れてお互いの尾に噛みついていた。


 ドーン!


 持ち上げていた上体を床に打ち付けたかと思えば砂を巻き上げグルグルと回転し始めた。

 二匹がお互いに怒りあっているかの様な雰囲気だった。


「危ない!」




 ヒューマンの種族スキルクイックを発動




 ラッカを抱えて走った。

 直接攻撃を受けた訳ではないが、これだけの大きさで暴れられると洒落にならない。

 何とか元いた空洞の入り口まで戻った俺達は暴れる二匹の捻れたサンドワーム、ツイストサンドワームを眺めていた。


「大丈夫なのか? 魔眼暴走」


「つい最近、起きたばかりだから」


 ラッカの瞳を初めて見た。

 淡い山吹色の瞳だった。

 藍色の髪に山吹色の瞳が、まるで砂漠の月の様でキレイだと思った。


「ちょっと、ジロジロ見ないでよ」


「み、見てねぇし」


「ガハハこの状況で、いちゃつくたぁおめぇら大物だな」


 ツイストサンドワームが攻撃してこない事で安心したのかポイティンガーは、いつもの調子に戻っていた。

 見透かされて急に恥ずかしくなった俺は


「カ、カシューも見ときな」


 なんて場を、ごまかそうとカシューの魔眼帯も外してしまった……










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― 新着の感想 ―
[一言] ん?これもしかして、ウロボロス?
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