開戦の来光
「二手に分かれるったって移動手段は?」
「そりゃ閃馬かソイビーかしかねぇよなあ、だろ?」
ここで考え込んだのはイーズだった。
そして口を開いたのは馬王の方だ。
「くくく、よもや最後の時を見逃す事になるとはな、これも運命か……」
「駄目なのじゃ馬王抜きでは倒せんのじゃ、ダーリンが心配ではあるが妾が行くしかないのじゃ」
今回の作戦に絶対必要なのが俺の金環と閃馬の分体なのだとイーズは言う。
それは作戦を聞いた俺達も理解していた。
そこで当初作戦に組み込まれていなかったイドリー達がホーリードラゴン形態のイーズへ乗って魔眼修道院へ向かう事になった。
「でもイーズって一人乗りよね? どうするの?」
ラッカの質問にイーズが目を白黒させ始める。
皇都バビロニへ向かう時にラッカは一人乗りだからと乗せてもらえなかったのだ。
「おいおい姉ちゃん、そりゃ勘違いだぜ! なあソイビー、昔さ村人を丸ごと運んだ事だってあったよなぁ。いやぁ、あの時は大変で……」
「だ、黙るのじゃ! べハイム」
「どういう事かしら? イーズ」
「ち、違うのじゃ、あの日は調子が悪くて……たまたま一人乗りで……」
「へえ〜、じゃあ、この纏う魔力の大きな揺らぎは何なのかなぁ?」
魔環へと進化したラッカの魔眼には嘘もお見通しである。
「イドリー! カシューを頼むよ」
「アーモン、何でも背負いこまないで、わたくし達、大人を信じて下さい」
「あらあら、こっちの心配より目の前の敵も強大よ」
「逞しくなって」
「では行って来るのじゃ」
「ふん、ザクセンのチカラで倒さなくても済むようにするわ」
美しい天使の様な翼をキラキラと広げホーリードラゴン形態へと変化したイーズはイドリー達を乗せて一気に上空へと上昇した。
それを追うようにべハイムを携えたヘーゼルも上昇する。
上がるにつれ、この草原の地の効果で小さくなっていた体が大きくなり馬王の間をイーズの影とヘーゼルの影が包んだかと思った瞬間、猛スピードで前進した為、再度、馬王の間は日光に照らされる。
それはあたかも開戦の幕開けを告げる来光を感じさせたのであった。
「それでは皆様、ご準備お願い申し上げる」
「魔環と雷撃を頑張るわ」
「ヒールするよー、です」
「慟哭銃ばっちりだぜ」
「……防御魔法……得意」
「さっさと片付けてカシューの元へ行く」
「くくく、いよいよか」
それぞれが準備を済ませると戦闘将であるヘレフォーがアーモンの元へと近づき戦闘将の石笛を渡した。
「確実性を高める為、馬王様には完全体の閃馬で顕現されるようにお願いしてあり申す」
「そうなんですか……分かりました」
全員が馬王を囲むように立ち並び武器を構える。
その列から一歩前へと進み出るとアーモンは渡された石笛、かつてポイティンガーから授けられ旅を共にし後に戦闘将の石笛だと判明した瞳の様な紋様のあるソレを一気に吹いた。
ヒュロォオォォ




