再誕場所
どこかで見たような……
「コン!」
「やはりコンでしたか、ふぅ、まずは治療を」
「……癒やし抱きたまえヒーリング」
イドリーが言うより先にメルカは詠唱を始めていた。
だが、必要なのはヒールよりも……
「ダメージよりも魔力切れだわ、その人」
魔力視の能力も残しつつ進化したラッカの魔環によりコンと呼ばれる小人族コロポックの憔悴仕切った様子は魔力切れだと判明した。
「まさか魔眼と種族スキルに風魔法まで使い続けて来たの!」
「そうなんす、一大事で……」
そう言うと気を失ってしまった。
「あの時の?」
「そうなんだ大砂嵐の中、魔眼修道院から代わりに出て行った、わたくしの仲間だ」
「コンは透眼の使い手で追手を振り切る名手なの」
イドリーとフラマウの仲間、つまりは『テーベの鳥籠』の一員なのだろう。
「さっき言ってた種族スキルって気配だよね?」
先日、酷い言い方をしてしまってから話し辛かったイドリー達と普通に話せたのは突然やって来た、このコロポックのお陰だ。
「気配と透眼で人目を避け風魔法で速度を出すのよ」
「あまり大っぴらに口外するべき能力ではないのですが……」
そんな話しをしている間にメルカが魔素茸茶を煎じてコンと呼ばれるコロポックへ飲ませてやっていた。
無茶な乗り方をされた馬を見て騎馬民族である草原の民達は少々? いや明らかに怒っている様子だ。
「何でもえーが、こんな馬の乗り方するヤツぁ、用が済んだらカータから出てってもらわぁね」
「すみません! わたくしの責任です」
イドリーが深々と頭を下げて謝ったところでコンは目を覚ました。
「イドリーの旦那、鎖が、皇帝がザクセンの誕生場所を突き止めて動き出したんす」
「どういう事だ? それなら此処ザクセンの苗床だと調査結果が出たはず」
「それが間違いだったんす」
「くくく、ザクセンは確かに別の場所で一旦は産まれよう」
話しに割って入ったのは馬王であった。
「どういう事か説明しなさいよ馬王!」
久々に鋭い視線のヘーゼルが馬王へと詰め寄る。
「ザクセンが、此処で産まれ直すのは失敗した時だからだ」
次に産まれる場所はザクセンでは対処出来ない魔物の住処なのだと馬王は話した。
産まれ落ちた瞬間に潰されて絶命するだろうと……
「だったら問題ないわね」
「ち、違うんす! その魔物はもう死んで居ないらしいんす」
「なっ!」
「くくく、その場所すら忘れ去られた場なるぞ、ましてやアレは倒しても復活を繰り返す類のモノ……いや待て……」
コンの慌て振りに嘲笑うかの様な馬王であったが思い当たる節があった様で顔色が激変した。
「アーモンよ、お前の、その武器は何処で手に入れた?」
まるで閃馬になったかの様な恐ろしい形相の馬王がした質問に俺達は凍りついた。
「まさか砂に埋もれた旧都がザクセンの!」
「そうだ前回ザクセンは巨大なサンドワームの寝床で種となった! まさかアレを倒したのか!」
「そんな」
「行く! イーズ」
事態は急変した。
スカルフェイスダークは後廻しだ今すぐ魔眼修道院の地下へ向かわなければ何が起こるか分からない。
今度こそカシューを連れ返す!
「行くわよ」
足で首神べハイムを蹴り上げ器用に掴むとヘーゼルも蝙蝠状の翼を一気に広げた。
「待つのじゃ、ダーリンよ」
「何でだよイーズ」
「もう時間がないのじゃ、明日なのか1月先なのかは分からんが、その馬っころは、もう今すぐ消えてもうても不思議ではないのじゃ」
「そんな……」
「すまぬアーモンよ」
先程まで怒りの形相であった馬王は、まるで年老いた痩せ馬のような表情に変貌していた。
もう既に空中へ浮いていたヘーゼルは、どうすべきか迷っている様だった。
そして意外な人物の発言で事態は別の方向へと向かって行く。
「なあなあ、だったらよ二手に別れりゃいんじゃね? ヘーゼルたんとか別に討伐メンバーじゃないしな」




