表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/206

女の子の初めて

「起きましたか?」


 その言葉と共に意識が戻って来た。


「目は開いたのじゃ」


「あらあら、本当にラッカもアーモンみたいな目になってるわ」


「ん、んん、アーモンは!」


「アーモンは起きてるよー、です」


「……帰ったら……大人しくなった」


 イーズも、居るって事はカシューのところへ旅立ってしまっていないって事……


「その魔眼に変化した経緯はアーモンから聞いたわラッカ」


「シスター」


 どうやら女性陣が全員集まっている様子……いや、魔族のあの娘、ヘーゼル以外の女性陣だ。


「どうなったの?」


 カシューのところへ飛び出そうとしていたアーモンが残った理由を聞きたかった。

 普段ならアーモンから直接聞かなきゃ気が済まないのに、体が思う様に動かなかった。

 とても気怠い。


「馬王がね頼んだのよ」


 天幕を捲りながら入って来たヘーゼルが答えた。

 これで女性陣全員が揃った事になる。


「そうなのじゃ、もう本当に時間がないらしいのじゃ」


「スカルフェイスダーク?」


「今行けば、ここで沢山の犠牲者が出るってイドリーが言ってね」


「あらあら、どの道ここへ皇帝もカシューも現れるって伝えたのよ」


 みんなの話を繋ぎ合わせると、スカルフェイスダークの封印が解けるのも間近。

 皇帝達はザクセンを求めて結局は馬王の間へやって来る。

 そう言う話だった。


「それでアーモンは納得してる?」


「……最初から……静かだった」


「何か考えてるよー、です」





 コマちゃんと、シーちゃんに無理矢理、魔湖へと潜らされた私とアーモンが戻ったのは次の日の朝だったそうで、何度も何度もヘレフォーさんは戦闘将の石笛で中へ探しに入ったそうだ。


「石笛で入らないと石笛じゃ見つけられないよー、です」


「……お馬さん……ヘロヘロ」


「あらあら、ヘロフォーね」


 その朝から日暮れまで私は眠っていた。

 アーモンは、すぐに意識を取り戻したのに……


「魔眼から魔環への成長なんて私達でも聞いた事がない現象だから、きっと消耗したのよラッカ、休んでなさい」


 フラマウは、やっぱりシスターだ。

 命令口調だけど心配してくれているのが伝わって来る。

 言われた通り、少し休もう。

 そして回復したら……


「見なきゃいけない事がある」






「おはよう!」


「あらあら、ラッカもう元通りね」


「うん、メルカ心配かけてゴメン」


「あらあら、いいのよ。では行ってらっしゃい」


 流石、お見通しだ。

 まずはアーモンのところへ行くよ。

 でもね、メルカ言わないけど私、もう1つ

 行くところがあるの……





「アーモン起きてる?」


「ああ、もう大丈夫なのか? ラッカ」


「うん、心配かけてゴメンね」


「……」


 みんなの言った通りアーモンが静かだ。

 この静かさは前にもあった。

 カシューの事を心配してた、あの時と同じ。

 何かしなきゃって気持ちはあるけど動けない時の妙な静かさ。

 突然、大人になったような横顔にドキリとする。

 人型馬王が言っていた、もう一人のアーモンのせいなのかな?


「カシューも来るかな?」


「どうかな? 来たら来たで辛い思いをさせるかも知れない」


「そうよね、でも今も辛いんじゃないか? って思ってるのよね」


「そう……いや、そう気付けなかった自分が情けないんだわ、これ」


 なんて顔だと思った。

 怒ったり泣いたり自信満々だったり激しい、この人の、こんな複雑なへの字眉毛顔は初めて見た。

 自信なさげで悲しげ、その瞳の奥に、いつもある澄んだ泉のような清らかさを隠すような不安げな顔だ。


「んくっ!」


 女の子から抱き締めるなんて、神様ダメですか?

 でもねコレしか思いつかなかったんです。

 お許し下さい。


「ちょっと、ラッカ?」


「いいから……黙ってて」


「……」


「……」


「やろうアーモン」


「へ?」


「全部やろう、スカルフェイスも皇帝もカシューの事も全部!」


「お、おう」


 離れた時のアーモンの目は、もう大丈夫な気がした。

 自分が抱きしめたら大丈夫なんて……私もしかして自意識過剰かな?

 なーんて、でも良いんだ!

 女の子の初めての勇気だよ、元気になるのが男の子ってもんでしょ?


「ね? アーモン」


「お? おう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ