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初代皇帝の真実

「サークルってのはさ、あいつだろ? 金色男、おもしれー奴だったなぁ、(しま)いにゃ皇帝とかなっちまいやがんの」


 首神べハイムの言葉に凍りついたのはイドリー達であった。


「初代皇帝を知っていると?」


「こやつは不死の首神、長い事生きておるのじゃ」


 とっくの昔に亡くなっている初代皇帝バビロ一世をべハイムは知っていた。

 いや知っているレベルではなかった。


「知ってるも何も連れだったしな、どこ行っても人が集まって来る、おもしれー奴でな、十年くらい一緒に世界中を旅してなバカな事ばっかりしてたもんだ、ガハハ」


「全種混血の初代皇帝か……さぞかし強かったんだろうな」


 ここで全種混血手前の子のはずのアーモンが呟いた言葉に返って来たのは衝撃の事実だった。


「あいつ全種混血なんかじゃねえぞ、なあ馬王」


「なっ!」


 バビロニーチ国民が当然の知識として身につけているバビロニーチ皇国の成り立ちに関わる重要機密が、たった今暴かれたのである。


「はぁ」


 溜息を漏らしたのはイドリー、メルカ、フラマウであった。


「我々が長年掛けて調査し、やっとの事で辿り着いた推論が、こうもアッサリ言葉にされるとは……わたくし頭が痛くなって来ました」


「あらあら、バレちゃったわね」


「どう言う事なんだぜ?」


 独立的な立場ながら一応はバビロニーチ皇国であるラパ出身のピスタも気になったのであろう。

 答えたのは意外にも首神べハイムではなく馬王であった。


「くくくっ、この話をバビロニーチ国民にする日が来ようとはな……」


 バビロ一世は全種混血だから全身金色なのではなくザクセンに寿命を別けて全身金色にして貰ったのだと告げられた。


「じゃあ、金色なだけ?」


「くくくっ、そうだ」


「全種族スキルは使えたんですよね?」


「おいおいおい、姉ちゃん聞いてたか? 使える訳ねぇしー」


「そんな……」


 この世界で唯一誕生した全種混血サークルは嘘だった。


「じゃ、何の為に全身金色よー?、です」


「目立ちたかったらしいぞ、何なら全身金色でも足りなくてさ、羽飾りとか着けてたからな」


 ケツァルコアトルなどの珍しい羽を集める為に精鋭を揃えていたらしく……


「まさか、その精鋭がテーベの前身って事はないわよね?」


「さすがに、わたくしも今の話は初耳です」


 脂汗を流すイドリーであった。


 それにしても衝撃の事実である。

 初代バビロニーチ皇帝は、ただの目立ちたがり屋だった。


「ちょっと、待って下さい。だったら俺は、どうして種族スキルが色々使えるんですか?」


「それがインフィニティらしいわ」


 メルカに続いてフラマウが説明をする。

 そもそもサークルとは全種混血と言いながら魔族的な種族を含んでない前世代的な差別思想の元に成り立っている。

 本当に全種混血なのは魔族側の種族も含めた混血でなければ成立しない。

 そして、それがアーモンなのだと……


「マカ様、アーモンのお母さんが、その魔族側の混血だったのです」


 ここまで退屈そうに首神を指先でバスケットボールでも回すかのように弄んでいたヘーゼルがピタっと止まった。


「つまり、すでにサークル状態だった父ダミヤンと魔族側サークル状態だった母マカの間に生まれたのがアーモン、君だそうだ」


 鳥籠であるイドリーとフラマウはエラトスとメルカから聞かされたのだろう。


「そのマカって女は聞いた事があるわ、魔族の中でも1番大きな組織の姫だったはずよ」


 魔族は、いくつかの組織に分かれておりヘーゼルは、とても小さな組織に属していたらしく、アーモンの母であるマカは魔族随一の組織の一員だったのだが、突然姿を消し魔族界では大きな出来事の1つだとの話だった。




「……ん?……カシューの金眼は?」


 話を聞いていたクコの疑問は当然であろう。


「わたくしの口から言って良いものか?」


「あらあら、今更隠しても仕方ないわ」


 この事に関しての調査は小箱よりも鳥籠が積極的に行っていたらしくカシューを保護するキッカケとなったのも、そうした活動によったものらしかった。

 そして、さらなる衝撃の話が飛び出す事になるのであった。


「元奴隷って、嘘……だ……ろ」


 その調子の良さから貴族の人脈を面白いように掴んでいった全身金色男は当時荒れつつあり全面戦争間近であった周辺の小国を纒める為に担ぎ上げられた。

 絶対的存在として創られた偶像なのであった。

 そして、その偶像の寿命が尽きる前に末裔としての役割を負わされたのが当時、とある貴族に抱えられていた奴隷。

 金眼の奴隷一族であり、カシューや現皇帝シュメーの先祖である。


「金眼ゆえに末裔しとして丁度良かったのでしょう」


「そんな……」


 ここでアーモンは大きな事実に気付いた。


「シュメーがモヘンジョを葬ったのは種族スキルだったはず!」


 嘘だった……

 ではカシューは今も?

 アーモンは全身から血の気が引いていくのを感じていた。

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