テーベの棺
「あらあら、4人で動ける日が来るなんて思わなかったわ」
「遊びじゃなんだぞメルカ」
「そう言うところよ、エラトス」
「まあまあフラマウ、アーモンが話も聞かなかったのはエラトスのせいでじゃなく、むしろ、わたくし達の組織のせいだから」
2人で動いていた間に、パワーバランスが出来上がってしまったフラマウとエラトスの事が可笑しくて仕方のないイドリーとメルカがクスクス笑うお陰でシリアスな旅立ちも良い雰囲気になりつつあった。
「だけどな、アーモンが鳥籠の事を勘違いしたままなのは問題だぞ」
「まさか皇帝から直接、そんな話を聞いてしまうなんて予想外にも程があります」
「でも棺の話を聞かされれば勘ぐってしまうのも仕方ないかも知れないわ」
アーモンが皇帝、つまりシュメーから聞かされたのは『テーベの鳥籠』が、かつては『テーベの棺』と呼ばれる組織だったと言う話である。
テーベには、それぞれ役割があるのだが、その役割とは、
『テーベの小箱』がサークル手前の子の用意。
『テーベの鎖』が皇帝および皇族の警護。
『テーベの鳥籠』がテーベ組織員の育成と配置。
となっているのだが『テーベの鳥籠』は元は『テーベの棺』として……
「組織から外れたサークル手前の子の始末なんて本当なのか、わたくしも未だに信じられません」
「私達が入るより遥か昔の話だから……」
全ては皇族と国の安寧の為に行われていた仕事だと教えられ人道的な観点から取止めとなり今の鳥籠に編成し直されたとも教えられたのだ。
「あらあら、アーモンが気にしてるのは、そこじゃないわ」
「そうね、皇族のすり替えなんてね」
シュメーが話したのは『テーベの鳥籠』と『テーベの小箱』がサークル手前の子を隠し皇族と皇帝のすり替えを模索していると言う内容であった。
「そう聞けばカシューナ姫も攫っていたのかもと勘ぐるのも無理ないって?」
「いやエラトス、わたくしはアーモンも戸惑っているだけだと思うよ」
だからこそ、今は話したくなかったとの言葉になったのではないか?
イドリー、エラトス、フラマウ、メルカの4人は一旦そう結論付けた。
シュメーとアーモンの接触の後、『テーベの鎖』がアーモンに対して行動を始めると予測し神経を尖らせた『テーベの小箱』であったが事態は予想外の方向へ動き始めていた。
一旦はアーモンとの接触を避け、鎖への対処をするつもりだった4人であったが……
「よりによってザクセンの苗床にいるなんて……」
「なんちゅう速さだぁね」
アルワルが言うには、とんでもない速さで俺とピスタは戻って来たらしい。
事実、最初に潜った人達は、まだ戻って来ていない人もいる。
「私も、さっき戻ったばかりなの」
ラッカは苦労したみたいで少し疲れた表情だった。
魔法のない世界で魔女狩りの餌食になりそうだったそうだが、本当の魔女が現れ助けてくれたそうだ。
助けて貰えば魔女が狙われるらしく、それを心配し最初は拒んでいたが時間が経てば経つほど周りで多くの人が死んで行く状況に焦り助けを受け入れたところで戻れたらしい。
「みんなスカルフェイスが現れる訳じゃないのか……」
「ボクは1回目もスカルフェイスが現れたぜ」
「……スカルフェイス……いなかった」
「私も、いなかったよー、です」
クコとペカンが戻ったのは俺とピスタが潜った直後だったそうで二人共さして消耗した様子はなかった。
「で? 気は済んだの」
少し離れた場所に足を組んで座っているヘーゼルが相変わらずの冷めた感じで聞いて来た。
「もう一度行く」
「なんと、今一度、潜り申すと?」
「今度は、わたしが一緒に行くわ」
ヘーゼル、ピスタと連続して一緒に潜った事で、ラッカが言い出すのは予想がついたが……
「それは認められ申さん。ラッカ殿は少し休まれよ」
「えっ、そんな……」
確かに消耗しているラッカは休んだ方が良いように見えた。
「私がヒールするよー、です」
ペカンが体力回復系のヒールを施す間、ラッカは少し休む事に同意した。代わりにクコが行くと言い出した。
「……やーだ……わたす行ーく」
どうして急にココンの口真似をしたのかは謎だがクコなので仕方ない。
ただ繰り返し潜るのは最後の一人が戻るまで、加えて俺の体力と魔力に問題がない場合に限るとヘレフォーに念押しされた。
「では、参り申す」
ヒョロ〜ヒョ〜




