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閃馬訓練

「遅い!」


「ふがっ」


 もう何度目だろうか?

 嫌と言う程に後脚で蹴られている。


 そして、それは俺だけでなく集められた多くのカータ民も同じだ。


「ヘレフォーさん、これって多くなれば多くなるほど能力は落ちるって言ってましたよね?」


「そう申されておりました」


「能力が落ちてコレだと一体を相手にするなんてあり得ないぜ」


 閃馬モードの馬王は一旦閃馬になると、あの日の戦闘時に見せたようにグンッ、グンッとチカラを倍増させては分身に分かれて何十体もの閃馬になる事が出来た。

 何十体もの閃馬が模擬戦の相手をして何十人もの人が後脚で蹴られる光景は圧巻だ。


 1日の最初に、この蹴られてるだけの様な地獄の模擬戦。

 次にヘレフォーが蜂の巣ダンジョンで見せたホースステップと同じ技の習得訓練。

 最後に個人個人の課題に向き合う。

 一貫して閃馬に弄ばれているだけの様な錯覚を覚える、これが閃馬訓練の流れだが……


「もう1週間も経つけど成果が感じられないなぁ」


「そうそう簡単にホースステップ……つまり足裏発動は習得出来申さんゆえ訓練を繰り返すのです」


 ヘレフォーのホースステップは足裏から魔法を発動しているのと同じような仕組みらしい。

 そして、この特殊な技はカータ独自らしく他の地域では見ないそうだ。

 それゆえカータが戦闘民族として圧倒的な存在として今日まで栄えて来たのだそうだ。


「コスマス、アルワルも出来るよー、です」


「……雫フキ……みんな出来てる」


 雫フキ集落の民が他の集落を見下したような雰囲気があったが実際のところホースステップ、つまり足裏発動を実戦で使えるレベルにまで習得しているのは雫フキの民だけだった。


「ラッカは、もうすぐ出来そうなのじゃ」


「ラッカ殿は魔力の流し方が我々と似ておる様に見え申す」


「あっ、これはポイティンガーがアーモンに教えてた魔力の流し方なんです」


「なんと! ポイ家の魔力流技であり申したか?」


「ラッカさん、それって凄い事だって気付いてます?」


 確かにポイティンガーに魔力の流し方を教わった。

 だが、しかしポイティンガーは、そんな特殊な技だとは教えてくれなかった。

 当たり前の流し方が出来てない俺に当たり前の流し方を教えてくれていると思っていたが……


「じゃ、なんでアーモンが出来ねぇんだぁね」


 やめてくれアルワル、そもそも俺は魔法を発動すれば混成魔法になってしまう特殊体質なのだ、これ以上、劣等感を抱かせないでくれ。


「もしかしてアーモンが混成魔法しか発動出来ないのって、その魔力流技が原因だったりするかもだぜ」


「混成魔法しか発動しないとは、どう言う事だ?」


「ひっ!」


 閃馬モードの馬王が近付くと蹴られると思い体が勝手に反応してしまうが今回は蹴るのではなく俺の特殊体質に興味があるだけのようだった。


「くくくっ、それは元々の体質もあるがポイ家のバカ息子が悪さをしとるぞ」


 馬王に言わせればポイ家の魔力流技のせいで混成魔法しか発動出来ない事に拍車を掛けているのだそうで、それはデメリットでもあるがモノに出来れば大きなメリットになる状態なのだそう。


「じゃあ、なんでラッカは混成魔法にならない訳だよ?」


「くくくっ、そもそも混成魔法が簡単に発動出来る方が、おかしいのだぞ」


 それでもポイ家の魔力流技を使えていると言う事は属性の表と裏、プラスとマイナス、陰と陽のような2面を体が理解していると言う事になり、足裏発動の為には大切な事なのだと解った。


「ボクには厳しいぜ」


「くくくっ、ドワーフの娘よ、ピスタだったな。お前は、その魔力量に惑わされておるだけだぞ」


 魔法と言うのは微開からスタートするのが基本、普通は幼い頃に小さな魔力から魔法を使い始めるので自然に身に付く発動魔力量が初めから魔力量が多すぎたピスタには身に付かなかったのだろう。

 それが馬王の見立てだった。


「なるほどなぁ、何かボク少し解ったかもだぜ! ありがとな馬王さんよ」




 それから1週間もするとラッカが足裏発動をモノした。

 更に1週間過ぎるとピスタも足裏発動をモノにした。正確には足裏発動だけではなく魔法も発動可能になってしまった。


「でもボクは道具使って戦う方が性に合ってるぜ」


 と、言う事でピスタが外部へ向けて自分の体から直接魔力を発動するのは足裏だけと言う意味不明な魔力量お化けが誕生した。


 更に1週間するとクコもペカンも習得し『白銀のスランバー』で未習得なのは俺一人となってしまった。


「ポイ家の魔力流技を教えてもらったアーモンが出来ないのは何ででしょうね」


「偉そうに言ってるけどマテオも出来なかったからポーターになったんだろうが!」


「僕だってポイ家の跡取りから直接教えて貰えればマスターしてましたよ」


「それはマテオ殿、申し訳ござらん」


「あっ、いえいえ、戦闘将殿の教え方が悪い訳じゃなくて……もう! アーモンのせいですよ」


「何でだよ!」


「これこれ止めんか、困ったものじゃ」


 イーズに(なだ)められるとか最低の展開である。


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