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戦闘将の過ち

「ティンガーや、来るか?」


「うん、トト様」


「戦闘将様、いくらご子息と言えど見廻りに連れて行かれるのは問題かと」


「堅い事を言うな、いざとなれば馬王殿を閃馬として呼べば良い事よ」


「ですが……」


 ポイティンガーの父、つまりヘレフォーの前の戦闘将には中々子供が出来ず年老いてからやっと授かったのがポイティンガーであった。

 その為に早くから戦闘将としての役割を見せようと何かにつけて連れ歩いていた。

 その事件も同じ様にポイティンガーを連れカータ周辺の見廻りへ出ている時に起きたのだった。


「馬王殿と言えば長らく閃馬に顕現されておらんかったの」


「はっ、前年の冬に魔霜柱が出現した時以来動かれておりません」


「それは、いかん適度に荒振らせておかんと後々面倒だからの」


 閃馬は戦闘将が戦闘の際にのみ騎乗が許された馬王にとっても特別な形態、いわば馬王の戦闘形態である。

 そして馬王の下には、この時、既に例のバケモノが封印されていた。


「よしよしティンガーや、この石笛を吹いてみよ」


「戦闘将様、それは成りません! その石笛を吹く権利は戦闘将にのみ与えられたものです」


「堅い事を言うな。よしよしティンガー」


「うん」


 ヒュロォオォォ


 そこで戦闘将、ポイティンガーの父は目を見開いた。

 碧と青の入り混じった馬が閃光の如く現れ、そして睨みつけ叫んだのだ。


「馬鹿が! 誰に吹かせた」


 ヴァシュッ、シュルッ、ルルルルッ!


 理解した……

 ポイティンガーの父は自分のしでかした大きな過ちと恐ろしい事態を。


「この子を頼む」


 部下にポイティンガーを預けた戦闘将は閃馬に跨り一直線に黒色魔力の吹き出す地点へと飛んだ。

 文字通り閃光の如くであった。

 ……が、時既に遅しであった。


 馬王の間から近いヨモギ集落では何人もの仲間が倒れていた。

 死にもの狂いで戦闘将と閃馬は戦い何とか、もう一度そのバケモノを封印する事が出来たのだが……


「ハハ様は?」


「ジジ様は?」


 ヨモギの民を守る為にバケモノと対峙したポイ家の者は戦闘将とポイティンガーを残し皆全滅してしまった。

 なぜなら誇り高きポイ家の者が全員でバケモノを押さえ……


「我らごとやれ! ヨモギを、カータの民を守るには、それしかない」


「す、すまぬ」


 戦闘将は自分の一族もろとも『天眼』でバケモノを攻撃した……




「なぜ閃馬が完全形態で顕現してしまったのでしょう?」


「ティンガーに、そこまでの力が備わっておる事を見抜けなかった儂の責任だ」


 戦闘将は悔いた。

 自分が吹く石笛で顕現する碧き閃馬しか知らず半身が封印の間つまり馬王の間に留まるのが、当たり前と思っていた。

 それがポイティンガーに吹かせた事で馬王は碧と青を兼ね備えた完全形態の閃馬となって顕現してしまい封印を維持出来なくなってしまったからだ。


「すまんティンガー儂はお前から多くを奪ってしまった」


「トト様……」


 幼い少年ティンガーは、この日から父を助ける為に努力した。

 そして立派に成長し年老いた戦闘将が退く日に姿を晦ました。





「くくくっ、息子に逃げられたか? どの道ここを動くわけにもいかん。将を置かぬ手もあるがどうする?」


「天眼も受け取らぬと吐き捨て出て行きました。もはやポイ家もこれまで……かつての様に民の中から適任者を選びましょう」


 そうして選ばれたのがヘレフォーである。

 戦闘将の石笛までポイティンガーが持ち逃げしてしまった事に気が付いたのは、それからしばらく後の事であった。






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