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青馬と青リャマ

「イ、イーズ! どうしたの!」


「いきなり、ぶっ倒れたぜ」


「ラッカや心配せんで良い、(わらわ)はこっちに入っとるのじゃ」


 突然倒れたイーズを心配したラッカだが、そのラッカへ向けて馬王の口がイーズの口調で話し始めた。

 どういう訳か憑眼で馬王へ、イーズが憑依していたのだ。


「アーモンの前に青い馬が現れたよー、です」


「……凄いスピードで……青い光………飛んだ」


 アーモンを千里眼で見ていたペカンにはアーモンの前に突如、現れた青い馬が見えていた。

 俯眼で上から見ていたクコには青い閃光が走りアーモンの前で止まった様子が見えていた。

 それらすべての状況を聞いたヘレフォーとマテオが目を見開いた。


「まさか馬王殿が!」


「そんな、これじゃまるで!」




 アーモンは戸惑っていた。


「答えろ! その石笛をどうしてお前が持っているのだ?」


「えーっと、これは……」


(この青馬って誰?)


 未だ馬王の間へ辿り着けていないアーモンにとって馬王は、まだ見ぬ相手であると同時に大きな馬であるという、ぼんやりしたイメージでしかないのだ。

 目の前にいる青いだけの普通の大きさの馬に怒鳴られる状況は意味不明でしかなかった。

 そもそも獣人でもない4足歩行の馬が言葉を話している事すら、さすがに、この世界ても普通ではなかった。


「なぜ答えぬ! 後ろめたい事でもあるのか? 渡せ!」


「なっ、何で渡さなきゃいけないんだよ! てか、お前誰だよ!」


「無礼な、渡せ!」


 とうとう青馬はアーモンへと突進した。


 ヒューマンの種族スキル、クイックを発動!

 アーモンは即座にクイックで青馬を(かわし)しつつウロボロスを剣モードへと変換し身構えた。


「ほう、その剣で奪ったのか……返してもらうぞ戦闘将の石笛を!」


 興奮した青馬が鼻息荒く身を震わせたかと思った瞬間、立髪が乱れ伸びたのだ。

 青馬の瞳からは青い稲妻のような光が迸っていた。


「うおっ」


 輝るような青の立髪は、しなる鞭のように動き、深い碧の立髪は固く突き立ててくるように動いて迫って来た。

 相反する柔と剛2つの攻撃を同時に受けたアーモンは一瞬戸惑ったものの見事に反応してみせた。


「サンドスネーク、モード神事斧」


 柔の青鞭をサンドスネークで包むように絞り込み、剛の碧突きを神事斧モードのウロボロスで叩き割ったのだ。


「ほう、見た目よりやるな……ならば!」


 再び身を震わせた青馬は立髪を2本の大きく張り出した角の様な形状に変化させ突進して来た。

 その姿は、まるで水牛のようであった。


(躱しきれない)


 そう思ったアーモンはクイックで急所を外しつつも……


 ドワーフの種族スキル、ガードを発動。

 獣人の種族スキル、レイジを発動。

 金剛の種族スキル、風車を発動。


「ったぁ!」


 左の角からの衝撃を腰あたりに受けつつ右の角をレイジで強化した力を込めて神事斧ウロボロスで叩き折ったのだ。


「ほぉう」


 躱すなり堪えるなりするか? もしくは弾き飛ぶだろうと予測していた青馬は再度、攻撃を加えられた事に驚いていた。

 ……が、即座に次の攻撃へと、移行した。


「これなら、どうだ!」


 今度は立髪が無数の鋭利なレイピアの如く変化し乱打を繰り出して来た。


「くそっ!」


 エルフの種族スキル、加護を発動。


(この土地の加護……潮汐ってなんだよ)


 既に打つ手がなくなりつつあるアーモンは、どんな加護が働くか不明なままエルフの種族スキルを発動した。


「痛っ!」


 剣モードに戻したウロボロスをクイックで増速させた腕で操り立髪レイピアを捌くも手数の多さに負け何度となくダメージを負っていた。

 そろそろ捌くのも限界かと思われた、その時!


(やばい! 首に当たる)


 咄嗟に腕で首をガードした。

 もちろんドワーフの種族スキル、ガードは込めているが鋭利なレイピアを弾き返す事が出来ないのは理解していた。

 腕が、やられる……遂に、そんな取り返しの着かないダメージを負う日がやって来た。

 瞬時に思いつつも動き始めた腕を止める事は出来なかった。


 ヴァツッゥゥ!


「えっ?」


 目を疑った……

 自分の腕が広がっていた。

 まるで盾のような形状に変形し立髪レイピアを弾いたのだ。

 そして次の瞬間には受けた攻撃であるレイピアにように、その腕が鋭利に変形したのだ。


「ええい、もう何でもいいや!」


 それが加護、潮汐の影響なのだろうと考えながらアーモンは反撃に出た。

 剣ウロボロスと共に二刀流のように攻撃を繰り出した。


「くくくっ」


 攻撃を受けながら青馬である馬王は笑っていた。

 あれだけ怒っていのが嘘の様に……

 だが、しかしアーモンにとっては良い事ではなかった。

 馬王は戦いを楽しみ始め、高揚しチカラを開放してしまったからだ。


「良いぞ小僧、もっとだ! もっとやるぞ!」


 瞳から迸る青い稲妻が碧い雷鳴へと進化し、その馬体はグンッ、グンッ、と大きさを増した。

 明らかに何段階も青馬のパワーが跳ね上がった。

 いや単純にパワーと呼ぶのは間違いだろうモノが違うというレベルの差……

 アーモンは、それが相当やばい事なのは理解した。


(やばい! これは死ぬ、無理、無理、無理)


 奇しくも虫に会った時のラッカと同じ反応になったからかは分からないのだが……


「あいや待たれよ! 某が取り持ち申すぅ」


 ラッカと同じくヘレフォーに救われたようである。





「のうラッカや、妾の本体をそろそろ寝かすなり、座らすなりしても良いのじゃぞ……」


 意識の抜けた馬王へ急遽、憑依したイーズの本体は、うつ伏せにぶっ倒れたままである。


「で? どうなったのピスタ」


「ヘレフォーさんが着いたよー、です」


「……お馬さんが……お馬さんごと……飛んだ」


「クコさ、それって、どう言う事だぜ?」


 アーモンの様子が気になって仕方ない4人の耳にイーズの声は届かない。


「の、のう妾の本体を……もういいのじゃ」


 真相は定かではないが、もしかしてバビロニーチへの旅でアーモンを独占したイーズへの報復で皆が気付かぬ振りをしているのでは?

 そう思ってしまったマテオは青い顔で……


(女子って怖い!)


 と、ただただ見て見ぬ振りをするのであった。






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