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馬王の間

「おぉ、ペカンが着いたのじゃ! 何か作ってくれなのじゃ(わらわ)は腹が減って減って」


「先に馬王さんに挨拶よー、です」


 馬王道を一番先に抜け到着したのはペカンであった。


「くくくっ、エルフの娘よ、挨拶なんぞ良い、早く何か食べさせて腹ペコ竜を黙らせてくれぬか?」


「わかりましたよー、です」


 馬王の元へ着いたとして馬王に気に入られるかどうかは別であるとマテオが心配していたがペカンに関しては問題なかったようである。

 むしろ来てくれて助かったとばかりの歓迎振りである。





「はむ、美味いのじゃ、ほれ馬王も食うてみいペカンの料理は絶品なのじゃ」


「ほう、確かに美味である。ん? もう一人誰か来たようだ」


「クコよー、です」


「……お馬さん……大馬さん」


 初見そうそう失礼極まりないクコであるが残念ながらペカンとイーズしかいない、この場では誰も訂正もツッコミもしないのである。


「くくくっ、面白い娘が来たな。ん? これは珍しい金剛骨族だな」


「……骨族……知らない呼び方」


「昔は、そう呼ばれてたのだ、今は何と呼ぶのだ?」


「……川の民……金剛は秘密」


「迫害されたと聞いたが、そのせいか?」


 馬王が寛大なのか? ただ単に興味を持ってくれたからかは分からないがクコも気に入られたようである。




「はぁ、はぁ、着いたのかな?」


「おおラッカが着いたのじゃ」


「戦闘将もいるよー、です」


「ヘレフォーよ、なぜ一緒に来た?」


「あ、いや馬王殿、これは決して案内したのではなく、すぐ側で虫が出まして倒したら、もうラッカ殿には馬王の間が見え申しておりまして……その」


 ラッカによって、もう何度目か分からない呼び出しを食らって馬王にまで叱られそうな戦闘将は少し痩せたように見える。


「……前より……痩せ馬」


「くくくっ」


 馬王に受け入れられたのか定かではないがクコの暴言により何だか、うやむやなまま場に馴染んだラッカであった。




「着いたぜ、早速だけど場所貸してくれたぜ」


「ピスタや何を抱えておるのじゃ?」


「ドワーフの娘よ、それはこの地の魔石か?」


「そうだぜ、あんたが馬王さんか? その石を加工したいんだけど良いかな?」


「くくくっ、本体から離れたなら、それは誰の物でもない、好きにするが良い。ただし本体から砕き取ろうとはせん方が良い。排除されるであろうぞ」


 馬王に会いに来る者は皆、会えた事に感動しかしこまるのか逆に無謀にも挑み一瞬で吹き飛ばされるかだが興味なさそうに石を叩き出した者など初めてだと馬王は笑っていた。


「ソイビーよ、お主の仲間は面白い娘ばかりよ」


「もっと面白いのがアーモンなのじゃ……それにしても遅いのじゃ」






「えーっと、あれ? 確か、ここには、さっきも来たぞ」


 アーモンだけが馬王の間に辿り着けずにいた。

 朝に出発し時刻は既に夕刻前であった。


「すぐ、近くまで来るのに離れて行くよー、です」


「エルフの娘よ、それは千里眼か?」


「はいよー、です」


 心配し千里眼でアーモンの行動を追っているペカンが見たのは近くまで来ては離れて行く光景であった。


「……なるべく……違う道を通っては……いる」


「金剛骨族の娘よ、それは俯眼か?」


「……そう……知ってるの……珍しい」


 こちらも心配し俯眼で上空からアーモンを見ているクコだが何とか工夫して別ルートを歩むも近くまで来ると自然に離れて行く姿に不思議な気持ちになるしかないのであった。




「日暮れ迄に着けなければ、それは2度と着けないと言う事になり申す」


「そんなぁ……」


 仕方ない事だがヘレフォーの言葉がラッカ達へ重くのしかかる。





 もう何度目が分からないが同じ場所へとアーモンは来ていた。


「はぁ、またこの石かぁ」


 それはピスタが魔石を解析したのと同じ場所である。

 そしてラッカがテントウムシに遭遇した近くである。

 ペカンが見たオオバコからも遠くない場所である。

 クコが蟻の群れに出会った場所の手前である。


(これは着けない人って事なのかな? 俺は……)


 そう思い始めたアーモンは、ある物を発見する。


「あれ? これって何だっけ? どこかで見たような……」


 突き出た魔石には、ある模様があった。

 人の目の様な模様である。


「そうだ! あれと同じ模様だ」


 そう言うとアーモンは首に掛けている物を服の下から取り出し使用した。


 ヒュロォオォォ


「なぜ、それを持っておる」


「えっ?」


 目の前には草が体中に絡み付いた馬が立っていた。

 その絡み付いた草の下から見える馬体からは、(ほとばし)るような光が見える。

 深い湖の底ような碧から陽射しを反射する湖面のような青色が波打つように揺らめいた光で美しかった。

 そして、その美しい馬は怒りの形相で怒鳴った。


「なぜ、お前が戦闘将の石笛を持っておるのかと聞いているのだ!」


「えー!」

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