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点眼

 バカみたいな量の土筆が積み上がって山になっていた。

 アルワルの切り倒した山も俺が切り倒した山も背丈を倍近く超すほどの高さになっている

 だがアルワルの山の方が高いのは明らかだった。


「はぁ、はぁ、負けちゃったなぁ」


「でもアーモンも凄かったよ」


 ラッカが慰めてくれたところでアルワルが真っ赤な顔を更に赤くして、こっちへやって来た。

 まだ何か文句でもあるのだろうか?

 いや、そもそも雫フキに相応しいかどうかで揉めたんだ出て行けとでも言いに来たのだろう。


「すまんかったぁね、このアルワルが土筆を切り倒す本数の速度で超されたんは初めてだぁね」


 累計本数は勝ったかも知れんが、そんな事はもう、どうでも良いと、バカにした事を詫びると言って来たのであった。


「やはり勝負は良い、競い合えば分かり合え申す」


 ヘレフォーは満足げだ。


(何か納得いかないけど……ま、いっかぁ)




 一旦認めたなら大歓迎なのが雫フキ集落の決まりなのだろうか?

 もう飲めや歌えやである。

 デスリエ王女の草原の民モード無口っぷりはなんだったのだろう?

 まあ、でも武器絡みの時に饒舌になったあたりは同じだけども……


「あんたの武器見せてくれんか?」


「斧も良いけど、あたしゃ最初の剣が見たいわねぇ」


 草原の民は男も女も本当に武器が好きだ。

 認められて歓迎されたのか武器が気に入って歓迎されたのか怪しいもんである。


「うおっ、暴れる」


「うがっ!」


 ウロボロスの剣を試し振りしていた草原の民の手の中でウロボロスは砂を撒き散らし暴れ2つに分かれたかと思ったら一瞬で俺の首へ巻き付いてしまった。

 久々の首輪状態に驚くと共に少し首が締まりかけたんだけど……


「たぶん私の時の矢と同じよー、です」


「そっか、ペカン一人じゃ暴れてたもんね」


「主人以外にゃ触らせないなんて益々良い武器だねえ」


「そっかぁ、そう言えば他の人に渡したりするのってペカン以外じゃ初めてだったかも」


 この発見は今後何かで役に立ちそうな気がした。

 例えば敵にウロボロスが奪われた場合に戻って来るなんて起きれば敵に隙が出来るかも知れない。


(いや、もう俺に敵なんていなくなったんだ)


 夜が更けると共に武器の話しや見せ合いは更にエスカレートし気が付けば、いつもの様にピスタの周りに多くの人が集まっていた。

 そりゃそうだ、あのチ王の血筋な上にスカルホーンハンマーや慟哭銃の作り手だ。

 そして人付き合いも『白銀のスランバー』内イチ上手いのだから。


「あぁ、またダメだぁ」


「おっしゃ、今度は、あたいの番だよ」


 そう言ってスカルホーンハンマーや慟哭銃を試しては次々に魔力切れで倒れていく草原の民であった。


(いや、一人ダメなら同じだろ!)


 この雫フキ集落の人達はカータの中でも腕の立つ者だとの事だったが、もしかしたら強いだけでバカなのかも知れない。


「なんじゃあね、儂も試したらぁね」


 とうとうアルワルまで、ぶっ倒れてしまった。


「何をやっているんだ、まったく! 強さの問題ではない魔力量の問題だ……」


 さすが雪豹のコスマスは頭が良さそうなだけあって……えっ、あれ?


「ふん!」


 同じく、ぶっ倒れてしまった。


「なんで分かってて、やるんですか!」


「ハハハ、最高だぜ、ここの民! なあアーモン」


 ピスタに言わせると俺と同類なんだと……

 いつか慟哭銃をダメだと分かりながらも発射した俺と……まぁ、それを言われると何も言い返せない。




 ピスタの慟哭武器で魔力切れ祭り状態な人々から離れ戦闘将のヘレフォーと話し始めた。


「ヘレフォーさん、アルワルさんの魔眼って何眼なんですか? 土筆の弱点みたいなの見えたんですが」


「アーモン殿は他の人の魔眼を使えるのでしたな、どうりで後半失敗しなくなったんですな」


 アルワルの魔眼は点眼と言う名で物や人の弱点や支点、力点が見える珍しい種類らしかった。


「集落の人達は猿眼って呼んでましたよ」


 マテオである。

 またトラブルになりそうな話しを平気で振って来る……


「失礼な言い方すんなよマテオ」


「某の馬眼と掛けて呼ばれ始めたのだが本人も気に入っておると申しておったので問題ありませぬぞ」


「ではコスマスさんは豹眼なんですか?」


「いやコスマスは魔眼持ちでは、こざらん」


 しかしコスマスは魔眼などなくても冷静な頭脳と熱い戦闘力を併せ持ったカータでも指折りの戦士であるとの事だった。


「それよりマテオ殿は何故ポーターをしておられるのか?」


「それは戦闘に向いてないと気付いたので……」


「しかし蜂の巣ダンジョンでの指揮を見るにポイの指導を受けたと思われ申したが?」


「はぁ……ヨモギでは皆が受けますので……それに蜂の巣ダンジョンではヴァルトゼさんとの打ち合わせ通りに指揮していただけですので……」


「ポイ?」


 ポイとはヨモギ集落に伝わる兵法のようなものらしく、かつては戦闘将を排出するのはヨモギばかりだったとの事だった。


「かつてはってのは?」


「ヨモギから出る戦闘将は同じ一族だったんですけど今は、もう、その一族は居ないんです」


「まあ、カータにも色々と、あり申してな……」


 この話しになってからヘレフォーもマテオも悲しげな顔をするので、それ以上は聞けずに、この日はお開きとなった。






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