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常春の土筆

 カータの民は大盛り上がりである……



 逆に俺は大盛り下がりだ、だって一対一の勝負では歩が悪過ぎる。

 俺だって色んな経験を積んで強くなった自信はあるには、ある。

 でも現状、俺の最大の武器は金環で他の人の魔眼を使える事だろう。

 それが一対一では使えない、それに蜂の巣ダンジョンの終盤には、その他人の魔眼さえ使いこなせず落胆したばっかりなのだ。


「では、アーモン対アルワルの一本勝負を執り行い申す」


「ちょっと待って下さい」


 ヘレフォーの開始合図にマテオが割って入った。

 盛り上がりに水を差す最悪のタイミングだが俺的には今日はグッジョブと言わざるを得ない。

 怒り心頭なのはアカゲザル系獣人のアルワルだ。


「何じゃあね、怖気づいたんなら謝れば許してやらぁね」


「そうじゃない、単なる殴り合いではなく『常春(とこはる)土筆(つくし)』で勝負しましょうって提案です」


 俺には何の事が分からないが見届け人であるヘレフォーや民の反応を見る限り、それはカータの人であれば皆、意味が分かる事なのだと感じられた。


「なるほど、アーモン殿は明日には馬王様へと会いに向かわれる身、怪我などあってもいかぬ、それは良い提案であるな」


「将殿、私も賛成です。益々アルワルが有利になりますが少年が死ぬ恐れは回避されましょう」


 白い豹系の獣人も賛成し対戦方法は、その『常春(とこはる)土筆(つくし)』に決定した。





「何だぁ、面白くなりそうだったのに、常春の土筆じゃ、アルワルに敵う奴なんて居る訳がねえ」


「そうだわねぇ、将殿とコスマス様でも敵わなかったなんて噂もあるのに」


 集落の者達はアルワルの勝利を既に確信したかのような言い草である。 

 それだけアルワルの得意な方法なのであろう。

 もう俺的には痛い思いをしないのなら何でも良いよって気分だった。


「……以上が常春の土筆のルールである。アーモン殿、良いですかな?」


「はい、要するに、その土筆を切った本数を争うんですね?」


「そうですよ、大きな土筆ですけどね」


 ヘレフォーとマテオの説明によると、大きな土筆を切り倒すと即座にまた生えるので、また切り倒す。

 それを繰り返してより多く切り倒した方が勝ち、そう言うルールらしかった。

 道具は、それぞれ自由との事だが……


(ウロボロスでやるしかないけど、剣だろうなぁ)


 切る事に特化したウロボロスのモードは剣しかない、相手はどんな物を使うのだろうと見ていると……


「なっ!」


 それは見た事もない巨大な鎌だった。


「このアルワル様の大鎌捌き、しっかり見せたらぁね」





 雫フキ集落の外れに、その土筆は生えていた。

 見た目は前の世界、日本で春に生える、あの土筆と同じだ。

 ただ……


「デカイ!」


「大丈夫です、アーモンさんなら切れますよ」


 その土筆は、まるで電柱でも立ってるかのように大きかった。

 俺はウロボロスに魔力と祈りを込めて剣モードへと変化させた。


「おぉ! 何だ、あの剣は?」


「なかなかの業物に見えるが?」


「それより今、変形しなかったか?」


 集落の民達が変化したウロボロスに興味津々である。

 デスリエ王女が草原の民モードになった時もそうだったが武器となると興奮するのが、ここの民なのだろう。


「ええ剣じゃが、果たして剣で美味いこと切れるか見物じゃあね」


「アーモンは初めてなんですし試し斬りを希望します」


「将殿、それくらいは良いかと思いますが」


 コスマスと呼ばれていた白い豹系の獣人の援護もあり試し斬りが一回だけ認められた。




「アーモン大丈夫よ、落ち着いて!」


「アーモンなら大丈夫だぜ」


 みんなの応援がハードルだけを上げていく……


(この太さだ、ある程度の力と速度が必要だろう)


 獣人の種族スキル、レイジを発動。

 ヒューマンの種族スキル、クイックを発動。


 腰を落とし……大きく深呼吸し……

 一気に!


 スパン!


「やった!」


「おおぉ!」


 やった事はやったが、こんな事を何本もやるなんて気が知れない。

 手は痺れ手首への負担も相当だ。


「なるほど……将殿、雪豹コスマス今ので、この者……いやアーモン君が招かれた意味を理解しましたので前言撤回いたします。失礼を致しました」


(お、風向きが変わった!)


 白い豹……雪豹系獣人コスマスが前言を撤回してくれた事で勝負が流れるかと思われた……その時!


「今更何ですか! もう勝負は始まってんだ」


「へ?」


(おいおいおい、マテオ待ておぉ!)


「当たり前だぁね、白黒つけにゃ収まらんわぁね」


 せっかく終わりそうだったのにトラブルポーターマテオここに有りである。


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