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初めての色

「アーモン大変だぜ」


「どうした?」


 朝からピスタとクコが血相を変えて部屋へ飛び込んで来た。


「……旗……初めての色」


「今日はペカンが千里眼でラパを見る日だったか……その色の意味は?」


「ラパへ戻れだぜ」


「え?」


 バビロニへ来いは想定していたがラパへ来いって展開は考えていなかった。

 しかもカシューの問題が解決した今、イドリー達との連絡手段であるラパの旗が新たに揚げられるとは思いもよらなかった。


「でも明日にはマテオとカータだったかしら草原の民エリアに出発だよね?」


 話に入って来たラッカの言う通りだ。

 急にラパへ戻れと言われても正直困る。


「またイーズに、ひとっ飛びしてもらおうか?」


「それがね、もうイーズは先に出発しちゃったのよ」


「何でだよ!」


「行く事に決まったら草原の民エリアの有名な食べ物が食べたくて我慢出来なくなったんだって」


「……前回……食べれなかったらしい」


 どうしたもんか思案していると黙っていたメルカが真面目な顔で口を開いた。


「これはテーベとしての指示なので私が一人で行って確認して来ます。ただ何点か約束をして下さい」


 再会するまでは草原の民エリアから他所へは行かない事。

 移動するならハルティスへもどる事。

 何かあったら大人を頼る事。


「わかった……」


 ここで初めて聞く事になったのはメルカはデスリエ王女やヘカタ代表を含めハリラタの重鎮達へ俺達の事を頼んであるとの事だった。

 メルカにもしもの事があった場合やメルカが離れなければならなくなった場合などに備えていたそうだ。

 戦闘能力の低い自分だけでは前回のように襲撃を受けた場合に守り切れないかも知れない……

 そう感じたメルカは動き、そして受け入れられたのだと……


「ハリラタも恩を感じてる部分もあるそうなので遠慮せずに頼って下さい」


「恩?」


「タイガービー、スモーク・ブリッジ・スパイダー、呪いの古道、ホールマウンテン、蜂の巣ダンジョンと貢献は計り知れないと言って下さいました」


「わかったよ……メルカ、ここまで守ってくれてありがとう。メルカもラパまで気をつけてな」


「イドリーにも、よろしく言ってくれだぜ」


「フラマウにも、よろしく伝えてねメルカ」


「……イドリー会いたいよー……です」


 こうして離れる事が決まったメルカへ、皆が声を掛けた。

 クコの言葉は千里眼の長距離使用でダウンしてるペカンの代わりなのだろう。

 そして最後に、いつも通りのメルカが……


「あらあら、用事が済んだら、すぐに戻って来ますよ」


 いつもの口調で場を和ませた。

 魔眼修道院を離れてから初めてイドリーもメルカもいない旅が始まる。




「では、我々のカータ旅とメルカさんのラパ旅の安全と大いなる成果を祈念して乾杯!」


「何でマテオが乾杯の音頭とってんだよ」


「いいじゃないですか! 良い事が連続したんですから」


 マテオの、よく分からない理屈で乾杯を押し切られたが一旦別れる俺達は簡単な、お別れ会を開いた。


「メルカの故郷の味、美味しいぜ」


「ほんと美味しい〜」


「酸っぱくて甘いよー、です」


「あらあら本来は、もっと酸っぱくて、もっと甘いのよ」


 メルカの手作り料理は干面鳥をこんがり焼いて酸味のある植物と魔蜜で味付けしてある甘酸っぱくて美味しいものだった。

 メルカの故郷の郷土料理らしく、前の世界で言うならハニーマスタードみたいな味だった。

 何より離れてしまう俺達のために心を込めて作ってくれたのが噛み締めるたびに伝わってジンとしてしまった。





「それでラッカ達はカータへ何しに行くのさ?」


『灰色の天秤』の女剣士ミュラーは既に酔っ払いだ。


「なんでも魔王さんの下にバケモノがいて、封印が解けそうだから、解けるまでに鍛えて倒そうってイーズは言ってたわ」


「マオウか……確かに鍛えてもらうにゃ、持って来いかもなぁ」


「プトレマさんは会った事あるんですか?」


「いや、見た事はあるんだが辿り着けなかった」


「どう言う事ですか?」


「ハハハ、お前さんらは初めて行くんだったな、まぁ行きゃ分かるわな」


 この時の、よく分からないプトレマの思わせぶりな言い回しの意味を、俺はカータへ着いた後で思い知る事になるのだった。


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